5年後、生成AIは何をもたらすのか
最後に蜂須賀氏は「生成AIによって、5年後に何が起きるのか」とパネリストに問い掛けた。
松本氏と石川氏は、業務アプローチの変化についての展望を語った。松本氏によれば、LLMによる自動化が進むことで仕事の価値やフォーカスすべき箇所が変わる。松本氏自身も、開発時間の多くをプロンプトを書くことに割き、直接コードを書く時間は減ってきているという。特にエンジニアは、「LLMの活用有無で10倍にも生産性が開きうるような世界で、どう戦うべきか考えねばならない」と松本氏は見通しを語った。自分が価値をアウトプットするには、仕事のどの部分に比重を置くべきか考え直す必要があるということだ。
これを受け石川氏は、「エンジニアとデザイナー、企画など、開発に関わる職種の境目が曖昧になるのではないか」と語った。つまりエンジニアが企画やデザインを意識したり、デザイナーや企画がエンジニアリングを考える必要が増えるということだ。今後もエンジニアは必要だが、コードを書くだけでなく、価値をどう生み出すかということに、より重きを置くようになるだろう。
一方、南里氏が期待するのは、生成AIが衣食住の生産性にもたらす変化だ。先程のロボットへのLLM搭載が進むという予測を前提に、生活に欠かせないが人手不足が深刻な領域へのロボット活用が進むだろうと、南里氏は述べた。Apple Watchに代表される現在のデバイスは、メーカーやアプリごとにセンサー情報を解釈するロジックがバラバラで、無駄が多い。LLMの活用で、デバイスを複数の用途で活用できるようにロジックに柔軟性をもたせることができるため、センサーデータの活用範囲が広がる。
「アプリからの要求を元に、(今ある材料と食事する人の意図から適当な料理を提案し、材料に応じた適切な調理をシームレスに実行するなどの)様々なセンサーデータをロボット内のLLMで解釈して、自律的にアクションを行うような取り組みが増えるのではないか」と、南里氏は今後の展望を語った。