顧客課題を教材として学ぶ「DENSO cloud & agile dojo」
愛知県のものづくりを支える両社は、車で約5分の距離に本社を構える。同プロジェクトは昨年8月から9月にかけて行われ、三浦氏はその期間について「社用車に入りきらない人は、酷暑の中を歩かされた(笑)。今となっては良い思い出だ」とユーモラスに振り返る。
「DENSO cloud & agile dojo」(以下、「dojo」)は、元々クラウドサービス開発部内のオンボーディングプログラムであったが、全社的なソフトウェア人材増加の取り組みの一環として、現在は全社に公開されている。年に数回程度開催されており、現役のソフトウェアエンジニアが講師となって「生きた技術」を教える。
dojoでは、前半の1か月でウェブ開発とアジャイル開発の基礎を学び、後半の1か月で実際にスクラムで開発を行う。学んだ知識を定着させるだけでなく、アジャイル開発を実体験できることが、このプログラムの特長だ。
ただし、過去4回の開催には「リアルな困りごとを題材にせず、仮想ユーザーからのフィードバックで進めていた」「作成したプロダクトがその後使われることはなく、その場限りの開発に留まっていた」などの課題があった。この課題を乗り越えるには、「サンプルではない実際のプロダクト開発」が求められていた。
一方タケダでは、DXに向けた前進としてデジタライゼーションの必要性を認識していたものの、未着手の項目が多く課題が山積し「どこから手をつけるべきかわからない」状況に陥っていた。過去にもデジタル化に挑戦したことはあったものの、特定の人にしか恩恵がなかったり、新しい仕組みが定着せず手戻りが発生したりと、「あまりうまくいかなかった」(大滝氏)。偶然のマッチングから意気投合した両社は、互いのニーズを満たせるdojoに望みをかけたのだ。
取り組む課題は、2か月でも技術的な見通しが立てられる「生産実績の可視化」に決定。作業日報をデジタル化し、生産実績をタイムリーに可視化するための基盤作りに取り組むことにした。「現場を巻き込んで進められること、現場の課長にデジタル化を推進したい人材がいることが、選定の決め手となった」と大滝氏は語る。こうして、第5回目のdojoプロダクト開発がスタートを切った。