技術発信を組織に根付かせるためには?
各社の取り組み紹介が終わり、セッションは「技術発信を組織に根付かせるために、発信の文化をどう醸成しているか」というトークテーマに移行した。
伊藤氏は、「ログラスでは拡大期に20人ほどのエンジニアが入社したものの、必ずしも皆が発信することが当たり前ではなかった」と思い返したうえで、1ヶ月間持ち回りで発信し続ける「アドベントカレンダー」に取り組んだことが「発信自体が尊い」という認識の定着に繋がったと話す。
さらに伊藤氏は、エンジニアが書いた記事に対して毎日コメントを付けたという。ビジネスサイドにもわかるよう「この技術がプロダクトのどの部分に活かされているか」を毎日解説し続けることで、発信の重要性を周知したのだ。負担の大きいタスクを己に課した伊藤氏は「(あまりの大変さに)ちょっと後悔したが、やり始めたからには全てやってやろうと腹を括った」と笑った。
この活動を「聞いたことがある」というパウリ氏は、「噛み砕かれた説明を、Slackの1画面が埋まるぐらいのボリュームで行っていたという話を聞いて、なかなかの狂気だと思った。自分もやろうとしてみたが、自分自身がボトルネックになってしまい、進まなかった」と伊藤氏の熱意に驚嘆する。
またパウリ氏によれば、ビットキーでもアドベントカレンダーを活用したことがあり、パウリ氏の担当分以外が1~2日で埋まるほど前向きに取り組んでもらえたという。さらには情シスやQAでも独自にアドベントカレンダーを始めるなど、他組織にも取り組みが波及し、「背中を押されたように感じて、すごくエモかった。発信が当たり前になっていくと、『自分たちもやろう』という流れが自然と生まれてくるようだ」と感想を述べた。
LayerXも発信に意欲的な文化を持つ企業の一つだ。serima氏はその理由として「トップの発信へのコミットメント」を挙げた。同氏は「どんな会社でも、発信者はある程度偏りがち。平準化を図る必要がある」としたうえで、あまり発信機会が少ないエンジニアの背中を押して成功体験を作ることで「全員が発信する」文化を作れると語った。そのためには、発信しやすい雰囲気やメンタルに寄与する「ちょっとした制度」を作ってロードマップ化することもポイントになるという。
さらにserima氏は、「自分たちが登壇することはもちろん、登壇や発信の機会を獲得することも重要」だと付け加える。「当社のテックブログに寄稿してください」「一緒に勉強会をやりましょう」と積極的に声をかけながら、発信できる場を獲得していくことも不可欠なのだ。