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Developers Summit 2024 Summer レポート

「成功する企業」から見る技術ブランディングの最前線、「発信する文化」形成の秘訣とは?

【23-C-9】成功する企業のノウハウが集結!エンジニアが推進する技術ブランディング

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広報活動における「迅速な改善」の難しさ

 続いて、トークテーマは「技術ブランディングを行う中で良かった施策と反省点」へと移った。セッションの楽屋裏では、三者ともに反省点が大いにあると話していたという。

 まずserima氏は「技術ブランディングはソロプレイになりがち」なことを反省点として挙げた。1人で全てを担当すると、キャパシティが足りなくなり、自分がボトルネックになってしまう。これを防ぐため、活動の広げ方やメンバーへの頼り方などは今でも悩みながら取り組んでいるという。

 またserima氏自身の例として、カンファレンスへのブース出展において、「このカンファレンスではこういう企画が良いのでは」という仮説を立てて検証し、次のカンファレンスに活かすというサイクルを回しているが、「このサイクルが間に合っていない」ことも挙げた。

 とくにブースや展示物に関しては、「このアプローチはうまく刺さらなかったから、次はこういう情報を発信しよう」と改善を試みても、次のイベントが再来週で発注が間に合わなかったり、デザイナーとのすり合わせがうまくいかなかったりということも往々にして発生する。結果的に改善点の対応も十分にできずそのまま次の機会に臨むことが「大きな反省点」だと語った。

 その話を受けたパウリ氏は、ブースで製品を展示していた際に来場者から「出展の目的は、製品の販売ですか?」と諌められた経験を語った。その来場者からは「エンジニアが来るカンファレンスなのだから、エンジニアに向けた情報を提供してほしい」とも指摘され「プロダクト紹介が、営業トークになってはならない」と反省する。

 なんとも手痛い指摘だが、すぐには次のアクションが取れず、改善までには約1年を要したという。こうした体験を踏まえ、「技術ブランディングの反省点は、クイックに改善できないというのは本当によく分かる」と同意した。

いいブランディングは自社組織を理解して全体を巻き込む

 代わって、伊藤氏は良かった点としてテックバリュー「Update Normal」の策定を挙げた。

 組織への愛着をベースにテックトークを行ってきたログラスでは、ログラスの開発文化などを言語化することの必要性に気づいた。そこで発信と並行して策定したのが、「Update Normal」だ。この言語化により、社内でもテックバリューを大切にする文化が定着し、それに基づいたメッセージも発信できるようになった。

 このような「発信することで、自分の経験や組織の経験が再編集される」プロセスについて、伊藤氏はコーチングを行う際の「オートクライン効果」にも通ずると話す。これは、コーチが質問を投げかけ、相手にさまざまなことを話してもらう中で、話している本人が自分の考えに気づくという効果だ。「自分たちの良さについての認識を強化できれば、良い技術ブランディングにつながる」と効能を語った。

 serima氏は、戦略的なフローの設計が集客にも効果を挙げていることを収穫点として挙げた。serima氏が技術ブランディングに携わる前は「モメンタムを作って出していくだけで、戦略的な視点が欠けるところがあった」というが、現在ではイベント後の展開や、次にどういったイベントに参加してもらうかといったフローを設計できるようになり、集客の手ごたえを感じているという。

 一方、パウリ氏が試みたのは全く異なるアプローチだ。例に挙げたのは、パウリ氏自身がビットキーの「外交官」となり、キャッチーな見せ方で露出を高める活動である。

 これは、キャラクターを前面に押し出したタレント的な活動を通じて認知を獲得したうえで、実際に会ったり、その人の技術的な発信を見たりすることで「(意外と)ちゃんとした企業だ」と感じてもらい、自社のファンになってもらうという戦略だ。

 こうしたアプローチについて、パウリ氏は「純粋に技術的な発信で注目を集めたいという思いはあったが、短期的に大きく認知を獲得する必要があった」と背景を語る。また、「この活動が成功しているのは、ビットキーがパウリという人格を後押ししてくれたから」とも話し、「スケジュールやコスト面での支援も含め、個人を通じて認知を獲得するという『尖った』アプローチへの理解があればこそできたこと」だと補足した。

 パウリ氏は自身の反省点として、serima氏と同様に「最初から1人で始めると、必ずどこかで限界に達する」点を述べた。複数のイベントが並行して進んでいるときには、社外から「レスが返ってこない」と指摘を受けたこともあったと振り返る。現在はディレクションやロジスティクスを担当できる人材を採用したものの、さらに密な連携を取ることを今後の課題とした。

 技術ブランディングに正解はなく、積極的に見える3社も、それぞれが悩みながら発信に取り組んでいる。「まだまだ話は尽きない」としつつ、「お二人と話して、活動の類似性や社内状況、文化の違いを強く感じた」とパウリ氏がまとめ、セッションは終了した。

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この記事の著者

丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

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中島 佑馬(ナカシマ ユウマ)

 立命館大学卒業後、日刊工業新聞社にて経済記者として勤務。その後テクニカルライターを経て、2021年にフリーランスライターとして独立。Webメディアを中心に活動しており、広くビジネス領域での取材記事やニュース記事、SEO記事の作成などを行う。

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