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Developers CAREER Boost 2024 セッションレポート

「ソフトウェアエンジニア * MBA」で広がる新しい可能性とキャリア像

【B-4】ソフトウェアエンジニア * MBA

MBAで広がるエンジニアの可能性

 MBAについて、河原田氏は具体的なメリットをこう語る。

 最も大きな利点は、体系化されたカリキュラムだ。いざビジネスの勉強をしようとすると、どこから手をつければ良いのか迷いがちだ。しかし、MBAではあらかじめ整理されたカリキュラムが提供されているため、「迷わなくて済むのは非常に大きい」と河原田氏は評価する。実践寄りのプログラムや学問重視のコース、さらには英語で学べるコースなど、多様な選択肢が用意されていることも特徴だ。

 次に挙げられたのは、通いやすさである。特にグロービス経営大学院は、社会人が働きながらでも学びやすい仕組みが整備されている。河原田氏自身は2年間でMBAを修了したが、3年以上かけてゆっくり学ぶスタイルを選ぶ人も多いという。このように柔軟に計画を立てられる点は、社会人大学院ならではのメリットと言えるだろう。

 MBAのもう一つの大きな財産として、河原田氏は人的ネットワークを挙げる。エンジニアとしてのキャリアでは技術分野での人脈が中心になりがちだが、MBAでは異なる業界や職種の人々と繋がりを持つことができる。例えば、大企業の課長クラスや経営者など、ビジネス界で活躍する多様なバックグラウンドの人々と議論を重ねる中で、新しい視点や経験を得る機会が増えるという。

 「ビジネスサイドの人と話すときには、まず自分の仕事を説明するところから始めなければならない。『QAとは質疑応答ではなく、品質保証のことです』と繰り返し説明することで、相手に自分の役割を理解してもらうトレーニングにもなった」。河原田氏はこう述べ、異分野の人々との交流がもたらす副次的な学びについても触れた。

 さらに、クラスメートや経営者との交流を通じて、ビジネスの現場をリアルに感じる経験も得られる。議論やグループワークだけでなく、懇親会で食事を共にするなど、独学では得られない特別な体験がMBAの魅力なのだ。

MBAでビジネスを学ぶことは、エンジニアにとっても多くの意義がある
MBAでビジネスを学ぶことは、エンジニアにとっても多くの意義がある

 続いて河原田氏は、「ビジネスが分かるエンジニア」として得たスキルの具体的なメリットを紹介した。

 まずは、「ビジネス側が何を考えているのか、そのロジックが分かるようになる」ことだ。エンジニアがプロダクトを開発する目的を深く理解し、その背景にある価値や収益構造に目を向けることで、単なる作業者ではなく、ビジネス成果を意識した行動が取れるようになるのだ。河原田氏自身、MBAで学ぶ財務やマーケティングといった知識が、この視点を身につける助けになったと語る。

 次に、会議のファシリテーション能力の向上も重要な成果だ。MBAでは、グループディスカッションやケーススタディを通じて、頻繁に発言を求められる。その結果、間違いを恐れずに意見を出す姿勢が身につき、議論を進行したり複数人の意見をまとめたりするスキルが養われるという。

 エンジニアがプロダクトをリリースした後も、活用状況や顧客からの問い合わせを意識し続ける姿勢が、ビジネスへの理解を深めるきっかけになるという。河原田氏自身、この力を身に着けたことで「ステークホルダーから相談を持ちかけられる機会が増え、組織内でのハブとしての役割を果たせるようになった」と振り返る。

 リーダーシップの観点でも、MBAの学びは大きな助けになる。部下の育成や評価に苦手意識を持つエンジニアは少なくないが、「HRM(ヒューマンリソースマネジメント)」など、いわゆる「ヒト系科目」で組織運営やメンタルヘルス対応を学ぶことで、不安が軽減され、適切な対応ができるようになるという。

 またMBAでの学びは、仕事に対する意義を見出す力も強化する。河原田氏は客先常駐時代、ビジネスの背景がわからず作業への不満を抱えていた経験を例に、「ビジネスを学んだことで相手の意図を理解し、受け取り方が変わった」と振り返る。不満が消えるわけではないが、自分の行動に納得感を持てるようになり、前向きに仕事へ取り組めるようになったというのだ。

MBAはキャリアを切り開くスキルを習得できるのも魅力だ
MBAはキャリアを切り開くスキルを習得できるのも魅力だ

 ここで河原田氏は、キャリア形成における「掛け算」の重要性を繰り返し強調する。単一のスキルを積み上げる成長はもちろん大切だが、それだけではなく、異なる分野を組み合わせることで、独自の強みを築くことが可能になるという。

 例えば河原田氏の場合、品質保証やアジャイル開発を専門とする中で、MBAで学んだ「組織行動論」や「リーダーシップ」に関する知識を活用し、組織内での品質文化の構築に取り組むようになった。「品質文化ならあの人」と認識されるほどのポジションを築けたのは、この掛け算の成果だという。技術とビジネスの知識を融合させたこの取り組みが、キャリアを一段引き上げるきっかけとなったというわけだ。

 さらに、CTOやディレクター、エンジニアリングマネージャーなど、マネジメント職にとってもMBAで学ぶ知識が役立つと河原田氏は言及する。特にスタートアップでは、CTOが経営を理解していないと組織全体の足並みが揃わず、ビジネスの推進が滞ることがある。しかし、技術に精通したCTOがビジネスの視点を持つことで、CEOや他の経営陣と連携しながら組織をリードできるのは大きな強みだ。

 また河原田氏は、キャリア形成において重要な視点として「来し方行く末の理解と言語化」を挙げる。MBAの学びを通じて、自分が所属する組織のビジョンや目標、そして自分自身がその中で果たす役割を明確にし、それを言葉にできるようになることが重要だ。

 「組織が何を目指しているのか、そして自分がキャリアの中でどこを目指しているのか。それを見つめ直すきっかけを得られることが、MBAの大きな利点の一つだ。エンジニアが漠然とモヤモヤしている気持ちを整理し、本当に目指したいキャリア像を明確化するには、MBAが良い選択肢になるかもしれない」(河原田氏)。

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「足し算の成長」と「掛け算の進化」が切り開く自己実現

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この記事の著者

水無瀬 あずさ(ミナセ アズサ)

 現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、オウンドメディアコンテンツを執筆しています。得意ジャンルはIT・転職・教育。個人ゲーム開発に興味があり、最近になってUnity(C#)の勉強を始めました。おでんのコンニャクが主役のゲームを作るのが目標です。

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丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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