プロダクトエンジニアに求められる4つのコンピテンシー
「機能全体にオーナーシップを持つプロダクトエンジニアは、『テクノロジーの外』に出ることに価値がある。3領域の制約を1人で理解し、制約とアウトプットのトレードオフを1人の思考の中で進め、全体最適で開発速度を上げることが重要だ」と、プロダクトエンジニアの役割と意識について語る丹羽氏。オーナーシップは顧客の課題にも及び、「顧客課題を自分ごとととらえ、最高の体験の創出と領域を超えた、個の成長を実現するコンピテンシーも求められる」というからスコープは幅広い。
丹羽氏はこうしたコンピテンシーについて、以下の4点から成り立つとしている。
- 越境とキャッチアップ:技術を課題解決のためのツールとみなし、実践的かつ目的意識のある技術学習を進める。
- 探索的かつ迅速な仮説検証サイクル:プロダクト開発の不確実性を前提に、すべてを仮説ととらえてひたすらリレーションを回す。
- Unlearnを受け入れるコミュニケーション:仮説の間違いを認め、自らの考えに固執しすぎず先に進む。
- ドメインや事業に対する好奇心:努力する人ではなく、夢中な人である。
またフルスタックエンジニアやフルサイクルエンジニアとの違いについて、丹羽氏は「狭間で価値が落ちないように守り続ける」ことを挙げる。プロジェクトの全領域を担保するなかで、「ここは手が足りないから頼る」といった動き方や、要件定義のフェーズなどで価値が落ちないよう強くバリューを発揮する点が異なると示している。
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丹羽氏はここで、「プロダクトエンジニアは決して新しい概念ではない」と付け加える。「好調な開発チームには、関係各所との間を取り持つシニアエンジニアがいたはずだ。そういう役割を担っている人を表す的確な言葉がこれまでなかっただけで、そのプロジェクト思考は事業のグロースに直結していく」と示し、プロダクトエンジニアは評価されるべき人材であると強調した。
生成AIをはじめとした技術進歩が著しい昨今では、情報技術自体は平易なものになってきている現状がある。だからこそ、AIなどの技術を使ってどのような課題を解決していくのかが問われる時代になる。フルスタックの流れが進むなかで、「どういった価値を顧客に提供するのか」という志向にコミットするプロダクトエンジニアは、今後非常に価値が高まると考えられる職種だというのが丹羽氏の考えだ。