生成AI活用で効果を得たAWS顧客事例
生成AIの効果やメリットにはどんなものがあるか、AWS顧客事例を通じて見ていこう。今回は主に、さまざまな形式の入力を解決できる部分を採りあげてみよう。生成AIのマルチモーダルな推論能力はさまざまな形式の入力支援にも役立つ。
事例1:ファストドクター
オンライン診療サービスのファストドクターでは、患者から保険証をアップロードしてもらいデータ化していた。しかし毎月数万件ものデータを手作業で修正していたため、入力ミスや非効率さが課題となっていた。また保険証には個人情報が含まれるため、セキュアな形で処理を行う必要がある。そこでAmazon Bedrockを通じて、OCRと生成AIを組み合わせて、さまざまなフォーマットの保険証データのセキュアな読み取りと入力の自動化を実現し、作業工数は従来の3分の1まで削減できた。
事例2:パークシャ・コミュニケーション
パークシャ・コミュニケーションでは、コンタクトセンターの業務効率化ツールを提供している。もともとAI活用は早くから取り組んでいて、直近ではAmazon Bedrockを通じて、音声認識(Amazon Transcribe)、Claude 3 Opus、RAGを組み合わせることでセキュアにコンタクトセンターの通話を要約できるようになった。業務にフィットした要約で、オペレーターの通話後業務が50%以上削減できると見込まれている。
事例3:アイ・スマート・テクノロジーズ
アイ・スマート・テクノロジーズでは、IoTシステムからデータを収集することで生産現場のカイゼン活動を支援している。データを収集できているものの、データの見方が分からず期待するほどカイゼンにつながっていないことが課題となっていた。そこでAmazon BedrockのClaudeで「AI製造部長」というIoTデータから得られる知見をユーザーに分かりやすい自然言語で解説するキャラクターを作成した。現場監督者が毎朝データ分析していたところ、AI製造部長に質問できるようになり、データ分析時間が70%以上削減した。
事例4:スマートアイデア
家計簿アプリ「おカネレコ」のスマートアイデアでは、新しい価値提供を模索していた。Amazon BedrockでClaude 3.5 Sonnetなどを組み合わせることで、家計状況や支出パターンに応じて、それぞれのユーザーに合うアドバイスを提供する機能をわずか2ヶ月でリリースできた。導入後の課金売上が前月比で19%向上し、短期間で効果を出している。
2024年に発現した生成AIのリスク事例
生成AIで新しいサービスをリリースできたものの、潜在するリスクが発現した事例もある。すべて2024年に起きた出来事だ。
リスク発現事例1:チャットボットが不正確な回答
エアカナダではチャットボットに生成AIを導入したところ、顧客に割引の適用範囲について間違った回答をしてしまった。顧客は払い戻しを求めて提訴し、エアカナダが敗訴した。裁判所は「自社サービスの運用を委ねる以上、出力結果に対して当該企業が責任を負うべき」と判断した。チャットボットは事案発生後に停止した。
リスク発現事例2:音声注文システムが誤認識
マクドナルドではドライブスルーにAI音声注文システムを導入した。注文を誤認識する場面がSNSで拡散され、100店舗以上に展開していたシステムを2024年6月に撤去することになった。
リスク発現事例3:チャットボットが不適切発言
フランス配送会社Dynamic Parcel Distribution(DPD)では、カスタマーサポートにAIチャットボットを導入した。顧客がDPDの悪口を言うようにチャットボットに指示したところDPD批判を回答し、その様子がSNSで拡散され、チャットボットは一時運用停止となった。
マクドナルドもDPDもAI導入から数年が過ぎていた。久保氏は「サービス運用期間が長くなると、現実的な確率でリスクが発現することを示しているのではないかと考えています」と話す。
あらためて生成AIのリスクを列挙すると、信ぴょう性(ハルシネーション)、悪意や差別的な生成、知的財産侵害、機密保持が挙げられる。最後の機密保持について、久保氏は生成AIの学習データにパスワードやAPIトークンなどを混ぜてしまうと、生成AIは元データに近しいものを生成する場合があるという研究報告を挙げた。