リプレイスは組織の地殻変動、スムーズに進めるためには?
──3つ目のテーマは「コード刷新は組織の地殻変動 人が動き、文化が揺れる瞬間」です。リプレイスは人も組織も一緒に変わっていくタイミングだと思います。気をつけるべきポイントについて教えてください。
長沢:まずは日常的にリプレイスやリファクタリングすること。各エンジニアが最低10%の時間をリプレイスやリファクタリングに充てるようにしています。こうして常にコード刷新していく文化を醸成しています。そのうえで、データベースの移行やアーキテクチャの刷新など、大きなリプレイスについては、一定人数をかけて実行する体制にしています。
──リプレイスチームを別に作るという方法もあると思うのですが。
普川:リプレイスチームを別立てにする方がワークすると思います。ですが、完全別チームにすると、引き継ぐことが難しくなるので、半分ぐらいは現業と兼務してもらうのが良いのではないでしょうか。
篠田:小さなシステムであれば、リプレイスだけをするチームに完全に分けてもリプレイスできました。一方で超巨大なデータベースのリプレイスプロジェクトでは、一気にリプレイスするとサービスが止まってしまいます。幸いなことに課題を見つけることに長けており、かつデータベースが壊れない直し方を研究している人がいたので、その人と現業に詳しい人でチームを組み、新規開発しながらリプレイスを進めていくという方法を取りました。規模が大きくなればなるほど、新規開発のチームにリプレイスやリファクタリングが得意な人たちを組み合わせるという構成になるのではと思います。
安井:私が入社する前ですが、LIXILでは5社のシステムを1つのシステムに統合する「L-One Project」というプロジェクトがありました。そのときに既存システムを運用するチームと、新しいものを設計して構築していくチームを分けたのですが、運用チームに入った人たちはモチベーションが下がりました。分けるのは大事なのですが、モチベーションの課題は残ると思います。
生成AIでリプレイスを加速させるために
──最後のテーマは「AIブースターでリプレイスを加速せよ チャンスとチェックポイント」です。生成AIの活用にどんなところを期待しているか。また人が入らないといけないところなどについてディスカッションしたいと思います。
樽石:私自身、結構使っているのですが、生成AIの進化が激しいということ。先週の常識が今週は違うということが当たり前なので。とにかく今は来ている波に乗ってサーフィンするスタンスで、取り組んでいます。
安井:当社でもいくつかのAIサービスを導入しています。月数十万円かかりますが、エンジニアを雇用するよりは安価ですし、成果も挙がっています。生産性が5倍ぐらい上がると、全部のAIツールを導入しても十分、ペイできると思います。
普川:セキュリティの観点もあるので、使えそうだというAIツールをあらかじめ選定し、使いたい人は申請するという形式をとっています。現在、約30チームが生成AIを活用。またエバンジェリスト制度をつくり、2~3週間に一度、AI情報とツールの使い方を共有する会を設け、チームに伝えてもらっています。これは全体にAIツールの活用を波及させるため。Devinのコミット状況を見ると、ツールが導入されてから明らかにプルリクエストの数が増えているという人はまだまだ少なく、ツールを使いこなしている一部の人たちだけがすごく生産性が上がっている状況だからです。
長沢:AIツールの導入により、リプレイスのチャンスは増えていくと思います。AIツールを活用していくうえでポイントとなるのは、活用初期にきちんとセキュリティのルールを整えること。安全に使っていることを、社内はもちろん、自分たちのクライアントにも理解してもらいながら進めていくことが大事。そのためには活用の仕方についても、外部に公開していくことだと思います。
