孤軍奮闘する時こそ、「とりあえず触ってみる」が大事
具体的な導入方法については、同社でObservability製品を担当する小野瀬つばさ氏が解説した。小野瀬氏はまず、CNCF(Cloud Native Computing Foundation)が提唱するクラウドネイティブ成熟モデルについて言及。
この成熟モデルは、「1.Build(まずは触ってみる)」、「2.Operate(小さく投入し始める)」、「3.Scale(チーム間で広がる)」、「4.Improve(自動化とガバナンスを整える)」、「5.Adapt(全社展開・自律最適化)」の5段階で構成されている。しかし小野瀬氏は、「この成熟モデルは導入指針としては非常に重要だが、現実には並行して行うべき組織改革が後回しになってしまう」と指摘した。
そこで、現場に落とし込みやすく、各チームが横断的に理解しやすく、共通の視点を持てるようにするために、3つのステップ(導入の第一歩、チーム展開、全社展開・最適化)に再構成した実践的なアプローチを提示した。

第1ステップは「導入の第一歩」で、小野瀬氏は「とりあえず触ってみるということを強く推奨している」と述べる。HCP Terraformについては、ローカル環境を構築してAmazon VPCやAmazon EC2をIaCで構築する基本的な内容からスタートする。
「この段階ではterraform fmt(コードフォーマッター)やterraform validate(構文検証コマンド)を使って、まずはコードの整形であるとか、検証の習慣を身につけると、チームでの読みやすさや保守性が大きく向上する」と小野瀬氏は「やってみること」の重要性を説いた。
Observabilityについても同様に、「1台のインスタンスにDatadogのエージェントをインストールし、CPUやメモリなどの標準的なメトリクスを取得する。初めは本当にシンプルなダッシュボードでも構わない。可視化できたというような実感を得られることが大切だと思っている」とシンプルなスタートを推奨する。
一方で、この段階でのチームの状態について、小野瀬氏は現実的な課題を率直に語った。
「このステップではインフラ管理は一部の個人や少人数に依存しているケースが多く見られる。1人のエースが孤軍奮闘して、一番辛いのはこの時期」としながらも、「この時点で1人で頑張ってる状況でも諦めないでいただきたい」と述べる。
小野瀬氏は孤軍奮闘の状態を否定的に捉えるのではなく、「決して悪い状態ではなくて、誰かが一歩踏み出してるからこそ、そこからチームの展開が可能になる」と前向きに位置づけた。「このステージではとりあえず作ってみた、やってみたみたいなところの環境を使って、他のメンバーに見せたり、定例で少し共有するだけでも、次のステップの種まきになる」として、小さな共有活動の重要性を説いた。
