はじめに
皆さん、こんにちは! いよいよ連載の最後となりました。今回はサンプルプログラムをいくつか紹介します。前回までに、モーター制御や光サンサーを使ったプログラムを作りました。他にもいろいろなことができますので、機能を組み合わせて使うとさらに楽しくなると思います。
前回までの連載記事
スレッドを使ったプログラム
Javaの開発経験がある方ならば、Javaでマルチスレッドプログラミングができることをご存知だと思います。組込み機器では、例えば携帯電話でテレビを見ている最中でもメールが来たら受信するというように、マルチスレッドは製品として欠かせない機能です。以下にマルチスレッドを実現したプログラムを紹介します。
2秒間隔でジグザグに進み、床面の明るさに応じて鳴らす音を変えるプログラムです。
1: import josx.platform.rcx.*; 2: 3: /**
4: * ThreadSample.java
5: *
6: * 2秒間隔でジグザグに進み明るさにより音を鳴らす
7: *
8: */ 9: 10: public class ThreadSample { 11: public static void main(String[] args) { 12: 13: //光センサーで値を取得し音を鳴らすスレッド 14: BeepThread beepThread = new BeepThread(); ←(1) 15: beepThread.start(); ←(2) 16: 17: //モーター制御 18: while(true) { ←(3) 19: //左に進む 20: Motor.A.stop(); 21: Motor.C.forward(); 22: try { 23: Thread.sleep(2000); 24: } catch(InterruptedException e) { 25: } 26: //右に進む 27: Motor.A.forward(); 28: Motor.C.stop(); 29: try { 30: Thread.sleep(2000); 31: } catch(InterruptedException e) { 32: } 33: } 34: 35: } 36: }
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start()
でスレッドを開始します。光センサーで値を取得し音を鳴らすスレッドです。
37: 38: //光センサーで値を取得し音を鳴らすスレッド 39: class BeepThread extends Thread { 40: public void run() { 41: 42: //光センサーで,Percent値を取得するように設定する。 43: Sensor.S2.setTypeAndMode(3, 0x80); ←(4) 44: Sensor.S2.activate(); 45: 46: while(true) { ←(5) 47: //黒と判定したらビープ音 48: if(Sensor.S2.readValue() < 45) { 49: Sound.beep(); 50: //白と判定したらブザー音 51: } else { 52: Sound.buzz(); 53: } 54: try { 55: Thread.sleep(2000); ←(6) 56: } catch(InterruptedException e) { 57: } 58: } 59: 60: } 61: }
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ボタン操作のプログラム
AWTやSwingを使ったGUIでは、ユーザーがボタンを押したりマウスでドラッグしたりといったアクションに応じて処理を記述する、イベント駆動のプログラミングを行いますが、レゴロボットのボタン操作も同様です。以下はボタン操作の簡単なプログラムです。
Viewボタンを押すとディスプレイに”VIEW”と表示するプログラム
1: import josx.platform.rcx.*; 2: 3: /**
4: * ViewPrint.java
5: *
6: * Viewボタンを押すとディスプレイに"VIEW"と表示する
7: *
8: */ 9: 10: public class ViewPrint { 11: public static void main(String[] args) { 12: 13: //ボタンリスナーの処理 14: ButtonListener listener = new ButtonListener() { ←(1) 15: //ボタンを離した場合は何もしない 16: public void buttonReleased(Button button) {} ←(2) 17: 18: //ボタンを押した場合はディスプレイに"VIEW"と表示 19: public void buttonPressed(Button button) { ←(3) 20: if (button.equals(Button.VIEW)) { 21: TextLCD.print("VIEW"); 22: } 23: } 24: }; 25: 26: //Viewボタンのリスナー登録 27: Button.VIEW.addButtonListener(listener); ←(4) 28: 29: while(true) { ←(5) 30: //500ミリ秒スリープさせる 31: try { 32: Thread.sleep(500); 33: } catch(InterruptedException e) { 34: } 35: } 36: 37: } 38: }
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ButtonListener
インターフェイスで定義しているbuttonReleased()
を実装します。ここでは何もしません。ButtonListener
インターフェイスで定義しているbuttonPressed()
を実装します。20行目で押されたボタンをチェックし、Viewボタンの場合は21行目でディスプレイに「VIEW」を表示しています。文字列のディスプレイへの表示は、TextLCD
クラスのprint()
を使用します。addButtonListener()
でViewボタンのリスナーを登録します。 ビジーループとは、ループ中で何の処理も行わず、CPUの使用率を高めてしまうループのことです。このような場合はsleep()
を入れ、使用率を抑えます。
赤外線通信のプログラム
レゴロボットは、赤外線通信によりレゴロボット間で通信を行うことができます。
送信側が送ったデータを、受信側のディスプレイに表示するプログラムを示します。
1: import josx.platform.rcx.*; 2: 3: /**
4: * DataSend.java
5: *
6: * 1文字送信
7: *
8: */ 9: 10: public class DataSend { 11: public static void main(String[] args) { 12: 13: //送信データの配列宣言 14: byte[] packetData = new byte[2]; ←(1) 15: 16: //1byte目は(byte)0xf7を設定 17: packetData[0] = (byte)0xf7; ←(2) 18: //2byte目に送りたいデータを設定 19: packetData[1] = 1; ←(3) 20: 21: //パケット送信 22: Serial.sendPacket(packetData, 0, 2); ←(4) 23: //パケットが送られるまで待つ 24: try { ←(5) 25: Serial.waitTillSent(); 26: } catch(InterruptedException e) { 27: } 28: 29: } 30: }
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Serial
は赤外線通信のクラスです。sendPacket()
でデータを送信します。waitTillSent()
でデータが送られるまで待ちます。このメソッドは、InterruputedException
の例外がスローされる可能性があるので、try~catch文を記述します。1: import josx.platform.rcx.*; 2: 3: /**
4: * DataRecv.java
5: *
6: * 1文字受信
7: *
8: */ 9: 10: public class DataRecv { 11: public static void main(String[] args) { 12: 13: //受信データの配列宣言 14: byte[] packetData = new byte[2]; ←(6) 15: 16: while(true){ ←(7) 17: //パケットが有効かチェック 18: if(Serial.isPacketAvailable()){ ←(8) 19: //パケットの読み込み 20: Serial.readPacket(packetData); ←(9) 21: 22: //受信データの表示 23: LCD.showNumber(packetData[1]); ←(10) 24: //500ミリ秒スリープ 25: try { ←(11) 26: Thread.sleep(500); 27: } catch(InterruptedException e) { 28: } 29: break; ←(12) 30: } 31: } 32: 33: } 34: }
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isPacketAvailable()
でパケットをチェックします。readPacket()
でパケットを読み込みます。LCD
クラスのshowNumber()
を使用します。今回はループによりパケットの受信を待ちましたが、ボタン処理のようにリスナーを登録する方法もあります。
最後に
Javaを使った組込みソフト開発体験は、いかがだったでしょうか。最後に、組込みソフト開発の特性についてまとめておきます。
- ハードの性能が低くメモリが少ない。高度なリアルタイム性や堅牢性が求められる。
- 組込み機器に搭載されているハードウェアやOSがさまざま
- ソフトウェアの更新/変更が困難
現在、組込みエンジニアは約10万人不足していると言われています。そして需要の増加や納期の短縮化に伴い、オブジェクト指向を取り入れる現場も増え始めています。本稿を読んで「組込みソフト開発って面白そう!」と感じた方は、ぜひ奮ってチャレンジしてみてください。