昨日開催されたGoogle Develper Day 2008において、Googleのプロダクトマネージャ Pete Koomen氏が「Google App Engine」の現況および今後の展開について語った。
昨日開催されたGoogle Developer Day 2008において、Googleのプロダクトマネージャ Pete Koomen氏が「Google App Engine」の現況および今後の展開について語った。
Google App Engine(以下、GAE)とは、Googleの強力なクラウドコンピューティング環境を使って、リッチなWebアプリケーションを開発できる開発・ホスティング環境のこと。なお、同社ではインターネットサービスをいつでもどこでも使いやすく提供することを「クラウド」と呼んでいる。
Koomen氏は、Webアプリケーション開発が直面している問題の一つに、サーバ設定やユーザが増えた場合のスケールアップ等、コーディング以外の手間があるとし、これらは直接アプリケーションの見映えや機能をよくするわけではないが、非常に時間・コストのかかる部分だと指摘。これを解決するのがGAEだ、と述べた。
GAEの基本コンセプトは、Webアプリケーションの作成やスケーラビリティの確保を簡単にすること。500MBのストレージ、2GB/日のデータ転送量(500万PV/月 相当とのこと)まで無料で利用することができ、それ以上のアクセスが見込まれる場合には、先日発表された従量課金制を使うこともできるので、Web開発者の一番と障壁となる初期投資をなくしつつ、ユーザに使われるようになってきたらスケールアップすることができる。なお、無償サービスについては、今後も継続していく予定だとも述べた。
セッションでは、説明を交えながら15分程度で簡単なゲストブックをGAEで作成するデモも行われ、反復的に改良を加えながら、コンパイルすることなく非常に高速な開発ができることが示された。なお、興味がある人は「GAEのチュートリアル」で同様の手順を行えるので、こちらを参照してみるとよいだろう。
GAEは大きく次のような要素で構成されている。
- トラフィックの増加に対して動的にリソースを割り当てる「拡張性のあるアーキテクチャ」
- BigTableによる「分散型データストア」
- 開発言語として「Python」をサポート
- フリーの「SDK」
- Webベースの「管理者コンソール」
現在はプレビュー版のため、皆さんのフィードバックを積極的に頂きたいと述べた。現在も随時機能が追加されており、先日もキャッシュを行う「Memcache API」や、画像処理を行う「Images API」が追加されている。
今後は、Python以外の言語サポート、大容量データのアップロード/ダウンロードのサポート、オフラインプロセッシング(リクエストベースではなく、バッチ処理やスケジューリングタスクなどを動かせるようになる)への対応を進めているという。
質疑応答では、「現在、データベースAPIに含まれていない全文検索については、具体的な対応予定は立っていない」「DoSアタックに対しては、最良の対策ツールを提供したいと考えている」「セキュリティ対策は、詳細は紹介できないが真剣にとらえている。GAEにおけるデータは、Googleが(特別な理由がない限り)勝手にインデックスをつけたり、サーチしたりすることはない。SSLは今のところサポートしていないが、一部fetch APIなどではSSL接続を行っている」などが話された。
なお、先月末より一般公開が開始され、早速試してみたいGAEだが、残念ながら今のところ日本では、携帯電話のSMSによる認証関係のバグで試すことができないようだ(6月11日現在)。これについてGoogleは、おそらく今週から日本でも使えるようになるはずだ、と述べている。
【関連リンク】
・【Google Developer Day 2008】次世代Webのキーワードは「3つのC」
・Google App Engine
・15万人が待っていた、「Google App Engine」一般公開:CodeZine
この記事は参考になりましたか?
- この記事の著者
-
斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)
株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です