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「IBM TechXchange 2026」レポート

エージェントを「作る」から「スケールさせる」へ。IBM TechXchange 2026の基調講演に見る、増えたエージェントを動かし続ける条件

「IBM TechXchange 2026」レポート

斉木 崇(編集部)[著]


データ層:エージェントに渡すのは量より鮮度

 最初の層、データを担当したのは、Confluent and IBM Data Platform ゼネラルマネージャーのShaun Clowes(ショーン・クロウズ)氏だ。クロウズ氏はまず、エージェントが本番で担う仕事を、フライトの再予約、保険金の請求、在庫の調整といった、ソフトウェアがビジネスに直接参加する形として描いた。

IBM Software Confluent and IBM Data Platform ゼネラルマネージャー ショーン・クロウズ氏
IBM Software Confluent and IBM Data Platform ゼネラルマネージャー ショーン・クロウズ氏

 人が回すプロセスは、人が理解して動く速さに縛られる。エージェントは機械の速さで動くため、制約は人ではなくアーキテクチャに移る。クロウズ氏はこれを「ビジネスのクロックスピード」と呼んだ。渡すコンテキストが古かったり、断片的だったりすれば、エージェントが速く届けるのは良い結果ではなく、「より速いエラー」と、下流での手戻りになる。

 クロウズ氏はコンテキストを「ある仕事を完了するのに必要な情報」と定義し、多ければ良いわけではないと強調した。必要なのは、「今何が真実か」という状態と、「何が起きたか」という変化の2つだ。

 ところが多くの企業では、顧客データ基盤、不正検知、エンゲージメント、カスタマーサービスと、プロジェクトが立ち上がるたびに同じソースシステムへ手を伸ばし、コネクターやパイプライン、データのコピーを作り直している。エージェントが15万に増えれば、この作り直しの費用を、データの移動でもトークンでも繰り返し払うことになる。

 そこでIBMが提唱したのが「Streamhouse」だ。変化が起きたそばから、ソースの近くで再利用できるコンテキストを一度だけ準備・統制し、エージェント、アプリケーション、分析のすべてに継続的に提供するアーキテクチャを指す。特性は、常に最新であること、ミッションクリティカルであること、分散型であることの3つ。定義はIBMの独占物ではなく、ververica、Redpanda、aiven、StreamNativeといったストリーミングのベンダーの連合が、オープンに維持しているという。IBMの製品としては、Apache KafkaとApache Flinkを中核とするIBM ConfluentのData Streaming Platformがこれを支える。

Streamhouseを支えるIBM ConfluentのData Streaming Platform
Streamhouseを支えるIBM ConfluentのData Streaming Platform

 Field CTO(データ担当)のKiyu Gabriel(キユ・ガブリエル)氏によるデモは、架空のホテルチェーン「The Armonk Collection」とAIコンシェルジュ「OneKey」を題材にした(このあとのデモもすべて同じ題材でつながっている)。

 データをAPIで束ねる方式では、エージェントが増えるほど問い合わせが重なって資源を食う。レイクハウスにバッチで集める方式では、「データがゴールド(業務で使える段階)になる頃には、刻々と変わるワークフローに使うには古すぎる」。

 宿泊予約の変更が、ツアー会社側のエージェントには15分たたないと見えない。ガブリエル氏は「混乱したエージェントは、悪いエージェントです」と言い切った。デモでは、メインフレーム上で動くDb2やIBM MQのほか、MongoDB、Salesforceなど8つのデータソースをつなぎ、フライトの2時間遅延を受けて送迎の車とチェックインの時刻をずらす提案を、OneKeyが先回りして出す流れを見せた。

フライトの遅延を、宿泊・送迎・予定と合わせた1つのコンテキストとして扱う(デモの画面)
フライトの遅延を、宿泊・送迎・予定と合わせた1つのコンテキストとして扱う(デモの画面)

 ストリーミングはレイクハウスの置き換えなのか。冒頭で触れた日本IBMの野村氏は、「二者択一ではなく共存すべきだ、というのがIBMのメッセージ」だと説明する。エージェントにはリアルタイムでデータを渡しながら、既存のデータ基盤も更新できる。基盤がSnowflakeであっても、ほかの何であっても適用できるという。

 クロウズ氏は始め方として、「行き先(データをどこに集めるか)ではなく、ソースから考える」ことを勧め、持ち帰るための3つの問いを示した。

  1. 本番のエージェントが行動する対象は何か。その対象の現在の状態は、どこにあるか
  2. エージェントは、対象について「今何が真実か」と「何が変わったか」の両方を、コネクターやパイプラインやコピーを増やさずに見られるか
  3. エージェントが行動した結果の新しい状態を、次の判断の前に使えるようにできるか

 製品を入れる前に、自社のシステムで答えを出しておける問いだ。

クロウズ氏が示した3つの問い
クロウズ氏が示した3つの問い

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デプロイ層:作るのは2割、残り8割の管理

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...

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