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「IBM TechXchange 2026」レポート

エージェントを「作る」から「スケールさせる」へ。IBM TechXchange 2026の基調講演に見る、増えたエージェントを動かし続ける条件

「IBM TechXchange 2026」レポート

斉木 崇(編集部)[著]


デプロイ層:作るのは2割、残り8割の管理

 2つ目の層、デプロイを担当したのは、Automation and AI ゼネラルマネージャーのNeel Sundaresan(ニール・スンダレサン)氏だ。「データが燃料で、AIがエンジンなら、エージェントは乗り物」と位置づけたうえで、「エージェントを作るのは本当に簡単になった。だが企業の中で機能させるのは、本当に難しい」と続けた。

IBM Software Automation and AI ゼネラルマネージャー ニール・スンダレサン氏
IBM Software Automation and AI ゼネラルマネージャー ニール・スンダレサン氏

 作る側の変化を示したのが、IBM社内でのエンタープライズ向け開発支援パートナー「IBM Bob」の利用状況だ。昨年のTechXchangeで発表した時点で6000人だった社内の利用者は、1年で17万人を超えた。そのうち開発者は約5万人で、残る11万人超は、少なくとも肩書きのうえでは開発者ではないナレッジワーカーだという。社内での利用は、月500万件超のタスク、200万回超のMCPツール呼び出し、50万回超のスキル利用に達した。一度使った人が7日以内に再び使う割合も、90%を超える。スンダレサン氏は「2027年までに、誰もがソフトウェアエンジニアになる」と予言してみせた。

 生産性については、全社の数字よりも個別の事例を見てほしいという。

 「私たちは生産性の向上を、いつも45%と報告しています。数字の42(編注:SF小説で万物の答えとされる数字)みたいなもので、何をやっても45に戻ってくるのです。ただ、この数字にはもっと多くの中身があります」

 例に挙げたのは2つの社内チームだ。営業・マーケティング・顧客対応をつなぐ社内ツール「RevTech」のチームでは、開発者1人が1週間に対応する欠陥の数が2.25倍に、修正するセキュリティ脆弱性が50%増えた。エンタープライズ・パフォーマンス・マネジメントのツール「AskEPM」のチームでは、エンジニア1人が1週間に解決する品質の問題が2倍になった。

 Bobについては、10月1日に発表された「Bob 2.0」に続き、ナレッジワーカー向けにコードやファイルを見せずに使える「Bob Desktop」、社内で作ったMCPツールやスキルを共有して組織の標準にする「Bob Bazaar」、脆弱性やコンプライアンスをライフサイクル全体で扱う「Bob DevSecOps」の3つを発表した。Bobの詳細は、別の記事であらためて取り上げる。

 では、作った後はどうか。スンダレサン氏が示した氷山の図では、水面の上に見えている「作る」は全体の20%にすぎない。水面下の80%には、デプロイと観測、評価と最適化、ガバナンスと統制が沈んでいる。

エージェントを作るのは全体の20%。残り80%はデプロイと観測、評価と最適化、ガバナンスと統制
エージェントを作るのは全体の20%。残り80%はデプロイと観測、評価と最適化、ガバナンスと統制

 この80%を受け持つのが、watsonx Orchestrateのコントロールプレーンだ。今回、3つの進化を発表した。1つ目は、Microsoft Agent 365やGoogle、Amazon Bedrock AgentCoreなど、他社の基盤で作ったエージェントも、エージェントゲートウェイを通じて管理できるようにしたこと。2つ目は、評価・可観測性・最適化を担う「AgentOps」。3つ目は、セキュリティとガバナンスをコントロールプレーンに組み込んだことで、スンダレサン氏は「ガバナンスは、あとから足すものではない。最初からそこにあるべきものだ」と述べた。

 他社基盤のエージェントまで管理対象に含める理由について、野村氏は「お客さまの中でも、マルチエージェントプラットフォームになるのが前提だと思う」と説明する。

 もう一つの柱が、既存システムとの接続だ。IBMの統合製品は、1〜9月に8140億件超のトランザクションを処理している。新たに発表した「IBM Integration Intelligence Hub」は、こうした既存の統合フローを、AIエージェントが見つけ、理解し、再利用できるようにする。

 IBM Bob テクニカルプロダクトマネージャーのArvid Ottenberg(アーヴィッド・オッテンバーグ)氏のデモは、この流れを1本につないだ。Bob DesktopにOneKeyエージェントの能力を調べさせると、「顧客のロイヤルティ(会員)情報を持っていない」という欠落が見つかる。Intelligence HubのMCPサーバー経由で、会員プロフィールをメールアドレスで引く既存の統合フローを発見し、IDE側のBobでツールとして追加して、watsonx Orchestrateに再デプロイした。コントロールプレーンでは、エージェントが持つ権限の一覧と、エージェントを止める「Kill agent」ボタンが表示されていた。

watsonx Orchestrateのエージェント詳細画面。接続先と権限を一覧でき、右上の「Kill agent」で停止できる(デモの画面)
watsonx Orchestrateのエージェント詳細画面。接続先と権限を一覧でき、右上の「Kill agent」で停止できる(デモの画面)

 締めくくりに、スンダレサン氏はOneKeyに電話をかけた。遅延便に合わせた予約の更新を確かめたあと、「スイカを買ってきてくれる?」と頼むと、エージェントは「申し訳ありませんが、それはお手伝いできません。旅行の予約についてなら、ほかに何でもどうぞ」と断った。

 「ほら、このエージェントにはガバナンスが効いています。言われるままにスイカを取りには行かないのです」

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ランタイム層:人のIDからエージェントのIDへ、手順の指定から意図の表明へ

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...

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