Microsoftは、2008年10月にクラウドOS『Windows Azure』や、クラウド・サービス・プラットフォーム『Azure Service Platform』ほか次世代の関連サービスを発表した。現在は商用化の準備段階で、CTP(Community Technology Preview)版の公開や、SDKのダウンロードなどが開始されており、Microsoftは、この秋にも商用展開を開始する予定だ。
そんなAzureへの注目が高まる中、Microsoftが開発者に向けてワールドワイドで開催中のコンテストが『new CloudApp() ~ Azure Services Platform 開発コンテスト』。コンテストの概要やAzureの今後の展開、開発者へのメッセージなどについて、マイクロソフトのデベロッパー&プラットフォーム統括本部、カスタマーテクノロジー推進部の平野和順氏と大森彩子氏に聞いた。
Azureアプリケーションの開発コンテスト
「New CloudApp()~Azure Services Platform開発コンテスト」は、Azure Services Platform上にクラウドアプリケーション・サービスを構築する、全世界の開発者を対象とした開発コンテスト。使用言語は、.NETまたはPHPで、アプリケーションやサービスのジャンルは特に問われない。
全世界を対象にしたこのコンテストで、日本からエントリー可能なものは、世界からの一般投票により決定する「International Community Winner」。受賞者には賞金としてUS$ 2500(Visa Gift Card)、特典として、Microsoft本社(US)主催イベントでのプロモーションが与えられる。このほかマイクロソフト(日本)では、日本からの応募者を対象に「Japan Award」を別途設定している。 Japan Awardには、マイクロソフトが審査を行い選出する「Japan Award Grand Prize(一般の部、学生の部)」や、全世界からの一般投票により決定する「Japan Community Winner」などがある。
Microsoftでは、このコンテストをきっかけとして、開発者がクラウドのアプリケーション開発を体験することによって、クラウドの可能性を実感していただくことを目標としているという。コンテストに参加してほしい開発者について大森氏は「今後のキャリアアップを考えている開発者の方に、Azure Service Platformの開発を早期に体験していただき、クラウド時代のアプリケーション開発をリードする立場になってもらいたいと考えています。また、企業の開発者だけでなく、新しく参入される個人の方、例えばプログラミングを学習している学生の方、プログラミングを趣味としている方なども大歓迎です」とした。
コンテストの応募方法
応募は、6月1日から開始されており、締め切りは、米国東部標準時で2009年7月9日(木)12:00PM、日本時間では7月10日(金)の午前1時と間近に迫っている。平野氏は「締め切りまであまり時間がありませんが、既に持っているアプリケーションをAzure Service Platformにアップするというのもありです。Azureにおける開発は、既存のアプリケーション開発知識を応用できます。特に、.NETの開発者にとってはハードルが低いと思います。一から勉強するのではなく、デスクトップでサンプルプログラムを動かすといった開発の延長線上でできると思うのですが、何か大変なことをやらなければならないというイメージをお持ちの方も多いようです。『意外とカンタンにできる』ということも体験してほしいです」と語る。
応募方法は、「new CloudApp() 」の公式サイト(英語)から、作品であるWebアプリケーション・サービスが参照できるURLを登録する。事前にWindows Live IDの取得と、それに紐付けしたAzure IDの登録が必要だ。
現在、Azure Service Platform上に日本からアップされているアプリケーションは数百あり、お試し的なものもあれば、本格的なものもあるという。既にAzureにアップされているものもコンテストの対象になりうるので、そのまま応募しても良いし、締め切りまでに磨きをかけるのもいいだろう。
Azureアプリケーションの開発方法
新たにAzureにチャレンジしたい人は、コンテストのページにも紹介されているとおり、次の技術情報が参考になる。
- Azure Services Platform デベロッパー センター
- Microsoft クラウド コンピューティング ツール
- Windows Azure Tools for Microsoft Visual Studio (Windows Azure SDKを含む。英語)
- Live Framework Tools for Microsoft Visual Studio April 2009 CTP(Live Framework SDKを含む。英語)
- Microsoft .NET Services SDK (March 2009 CTP)
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現状のAzure Services PlatformのCTP版では、1ユーザー1CPUに1VM、VMの合計演算利用時間が2万時間まで、ストレージ容量は50Gbytes、1日あたり呼び出せる容量は20Gbytesなどの制限があるが、コンテストの審査基準は、発想のユニーク性や既存資産の活用とあるので、大掛かりなアプリケーションである必要はない。応募には十分なスペックだ。平野氏によると、先日のバージョンアップでCGIやPHPの利用が可能になり、理論上はJavaやRuby、Pythonも動作するとのこと。
Azureの可能性と今後の展開
Azureの可能性について平野氏は「自分でリソースを用意しなくてよく、小さく始めて大きく育てることができるというメリットは、他のクラウドのサービスと同じです。1年間に数週間訪れる繁忙期のために何百台もサーバを維持しなければならないSaaS型のビジネスアプリケーションなどは、Azureに展開することで、必要な時期に必要なだけ利用すればよくなります」とした。
続けて平野氏は、Azure上で稼働するJTBのサービス『Toripoto(トリポト)』を例に「JTB様の場合、オンラインでトランザクションが発生するような部分は自社サーバで用意できますが、ユーザーが旅行について興味を持つための情報収集や、ブログなどでの情報共有といった、利用者の検討段階に必要なサービスは自社のサーバには取り込みにくいです。そこをクラウドに任せるという利用法です」と現段階での活用例について話した。
さらにAzureの今後の展開について平野氏は「まず、北米のデータセンターで今年の11月にサービスインします。サービス内容や利用料は、7月の中旬くらいにアナウンスする予定です。日本国内のデータセンターについては現在準備段階で、来年2月のTechDaysで何らかの発表をしたいと思います。いずれにしても今後Azureに注力してまいります」とサービスイン前の意気込みを語った。
まずは多くに人に体験してもらい、ノウハウを蓄積したい
最後に両名からコンテスト参加者する開発者に向けたメッセージをいただいた。
大森氏「まだ発表したばかりのプラットフォームで、まずは体験してもらう段階です。『クラウドの実態はわかったが、そこで何をしたら効果的か?』といった段階まで到達していません。今回のコンテストで思わぬ利用法などを提案してくれる開発者もいると期待していますが、コンテストはこれで1回だけで終わりというわけではなく、今後もAzureを積極的に盛り上げていく予定です。初期段階からトライしていただくことで、クラウド開発の流れをつかんでいただき、今後に活かしてほしいと思っています」
平野氏「Azureはサポート範囲が広く、ストレージだけを呼び出したり、SQLを呼び出したり、ワークフローの機能など、非常に多くのファンクションを持っています。将来的には、エンタープライズ方面への利用を視野に入れていますが、今回のコンテストはその前段階で、多様な人に分かりやすいところから体験してもらい、皆でノウハウを蓄積・共有したいと思っています」
コンテストの締め切りは目前なので、エントリーはお早めに。間に合わなかったとしても、一般投票での参加で世界中の開発者からエントリーされたAzureアプリケーションに触れることで、トレンドをつかむことができるだろう。