これからのゲームの形とは
続けて、本題となる「ゲームは今後どう変わっていくか」について、原島教授の自論が展開された。
ゲームを振り返ると、情報技術の発展と同様に、パソコンゲーム(~80年代)、ファミコン(80年代後半)、スーパーファミコン(90年代前半)、3Dポリゴンゲーム(90年代後半)、オンラインゲーム(2000年代前半)、モバイルゲーム(2000年代後半;DSやPSP等を含む)と早いペースで変化を遂げてきた。情報技術は今後もますます進化し、ゲームを進歩させると予想する。
これからの情報技術のキーワードとして、「バーチャルからリアルへ」「グローバルからローカルへ」「パーソナルからコミュニティへ」を挙げ、情報技術は、ネット上の仮想空間としての「バーチャル」と、実際に人が活動する空間としての「リアル」を重ね合わせる方向に発展するとの考えを示した。ゲームでも、リアル空間での遊びをバーチャル空間がサポートするようになるという。例えば、ドラクエ9等で使われ、最近の携帯ゲーム機で流行っている「すれちがい通信」もこの一つと言えそうだ。

また、インタフェースも変わり、Wiiのように身体動作そのままのインタフェースを持つものが現れる一方で、両手10指(キーボード)から両手親指(携帯ゲーム機)、片手親指(携帯電話)と単純化も進む。
このように多様化が進み、情報技術は今後もますますゲームを進化させるが、「重要なのは情報技術そのものではない」と警告を発した。
技術はゲームをサポートするためにあり、技術は主役ではない。技術依存で技術を生かすようなゲーム作りはおかしい。その理由の一つとして、情報技術やハードの部分はムーアの法則(1年半で約2倍)で発展するが、ソフトである人間の技術がそれに追いつかないことが挙げられる。情報技術依存のゲーム開発はやがて自分の首を絞めることになる。
産業の発展途上期は技術に依存するものだが、成熟するとその上でどんな付加価値が付けられるかが重要になる。例えば、デジカメも画素数が多ければ売れた時代があったが、今は顔認識といった特長がないと売れないのと同様だ。つまり、ゲームも技術は当たり前になって、ゲームそのものの面白さ(価値)で勝負する時代がくる。
そして、原島教授は「そろそろゲーム業界は大人になる必要がある」と続けた。

ゲーム業界が大人になるには
ここでいう「大人になる」とは、しっかりとしたビジネスモデルを持ち一人前の産業となること。これには産業としての総合力を身に付けることが必要で、企画力、技術力、生産力、営業力の他、経済力(買収力)、政治力等も要求される。特に、後者2つについては、「自分のところだけで閉じていない」「世界中の英知を集める」「企業を技術者丸ごと買収する」といった姿勢に基づくアメリカの圧倒的な強さを強調した。

かといって、アメリカに追随するのが良策とも限らないと述べ、総合力や技術力ではアメリカに勝てないが、日本は諸外国からみて面白い独自のゲーム開発ができるはず、日本ならではの格好よさ(Japanese Cool)を目指すべきだとの意見を示した。
なお、「大人になる」は、社会的に尊敬される存在になることも意味し、一つの視点として、「大衆的な意味で現在ゲームに名作や古典がないこと」を挙げた。10年20年経っても名作として残るようなものがないとゲームは文化にならない。子供が数十時間かけて小説を読むこととゲームをやることに対する大人の反応を想像すると分かりやすいが、心に深く訴えかける、作者が明確で署名付き名作ゲームの必要性を主張した。
ビジネスにおける顧客層の側面では、高齢者は時間がたっぷりあり、ゲーム世代もそのうち高齢者になるという意味で、子供世代と同じく将来有望なゲーム市場のターゲットだが、問題はその間の働き世代にあるという。働き盛りの人は通常数十時間はまってしまうゲームは恐ろしくて手が出せない。以前はかなりゲームをしていたが、やらなくなってしまった人も多いだろう。しかし、息抜きを望んでいないわけではない。10分間でとりあえず完結し、それなりの達成感をもつゲームを拡充し、将来の潜在的なゲーム人口をつなぎとめておきたいと述べた。この辺りは、iPhoneで受けているゲームの傾向とも整合性がありそうだ。

メガヒットとロングテールの問題についても触れ、発展途上期は少品種大量生産、成熟期は多品種少量生産の傾向があり、今後は個人開発のゲームもネット上に溢れてくると思われるが、これまでひたすらメガヒットを目指すことが成功モデルであったゲーム業界において、ロングテールは特に難しい問題。
この状況を「失敗は成功の母、成功は失敗の父」と例え、成功している間は次への準備がおろそかになる、成功体験によって失敗が怖くなり冒険できなくなる、成功者はワンマンになり誰も自分の意見を言えなくなる、という一般的な要因の他、熱烈なファンを裏切れなくなる、ヘビーなコアユーザーの評判が気になることにより袋小路にはまる、とゲーム業界ならでは問題を浮き彫りにした。これに対し原島教授は、「コアユーザーはゲーム業界を支えてくれているので大切だけど、一緒に乗り越えなくてはいけない問題」と苦言を呈した。
今後成熟期を迎えるゲーム業界については、様々なタイプのゲームが登場して、ビジネスモデルも多様化し、ゲームはこれからもっと面白くなっていくだろうと感想を述べた。
最後に原島教授は若い世代に向けて、「今だけを見ず、未来へ向けて『夢のストック』を持ち続けて欲しい。人に笑われるような荒唐無稽な夢であっても、夢のストックさえあれば、いつかは追い風が吹き実現できる。その夢を財産として、未来の無限の可能性を自ら発見して欲しい。それができれば、次の主役は君たちである」と熱く述べ、講演を締めくくった。
開催期間は1日から3日までの3日間。2日目には富野由悠季氏による「慣れたら死ぬぞ」、3日目には堀井雄二氏らによる「国民的ゲームとは何か? ~ドラゴンクエストの場合~」といった基調講演も予定されている。
【関連リンク】
・CEDEC2009 公式ページ
・【CEDEC 2009特別企画】東大名誉教授 原島博氏特別インタビュー「主役が交代している」とは何を意味するのか!? 情報技術のスペシャリストにゲーム産業の未来を聞く(GAME Watch)
