優れたソーシャルアプリを育てる7つのポイント
では、実際にどのようなアプリを企画すれば優れたソーシャルアプリに育てることができるのか。中西氏は「7個のポイント」があると説明した。
- ユーザ獲得コストが限りなく低いことを意識して、新感覚のアプリを作る
- 「とにかく目立つ」必要がある
- ルールをとにかく簡単に
- ユーザ間バイラルを効果的に使う
- 初期ユーザ爆発を乗り越えよう
- 永遠のベータ版である
- マネタイズの仕組みが必須
OpenSocialアプリケーションは、会員登録などの面倒な作業が無くボタンを押すだけで開始できる。そのため、ユーザ獲得コストが低く、通常のWebサービスとはユーザの伸び方がまったく違うので、今まで流行らなかったサービスでも人気が出る可能性があるということを意識する。
毎日続々と新しいアプリが登場してくるOpenSocialの世界では、ユーザの興味を引くことが不可欠となる。アプリ名、内容、アイコン、説明文などに徹底的にこだわる。
時間がかかるアプリを作成して、ユーザが使い始める前に飽きてしまっては意味が無い。アプリの内容を簡単に、もしくは内容をキャッチーな言葉に置き換えてユーザに伝える。
SNSではすでに友人関係が構築済みのため、共有できるアプリはどんどん広まっていく。ユーザ数獲得に効果的なActivityフィードやMessageAPIなどを利用する(記憶スケッチでは、Activity通知(自分の描いた絵を友達に送ることができる機能)を導入した日から、ユーザ数が1日あたり約2000人増加)。
OpenSocialアプリは、リリース直後が一番ユーザ数が増える。初日にサーバダウンを起こさないように、完成度を高くリリースし、スケールアウトする作りを意識しておく。
OpenSocialアプリは作成後に改良を重ねる必要がある。ユーザ獲得コストは低いが囲い込みも難しいため、ユーザに開発者側が常にアプリを更新していると意識してもらえるようにする。
OpenSocialアプリはユーザを集めやすいが離れやすい。サービスの成熟・過疎化のサイクルが強烈に速く、のんびりしているとマネタイズできないまま終了してしまうので、ある程度課金の軸を考えておく必要がある。
ちなみに、まだ安定環境とは言えない点や、画像の転送量により高コストになってしまう可能性などから、記憶スケッチにはクラウドを使用していない。オープン時、突発的なPVが増えた場合などにスポットで契約インスタンス数を増やすなど、「使いどころをわきまえる」ことが大事だと中西氏は語った。
最後に、中西氏は成功した理由として、「最初にOpenSocialの仕組みを勉強したことが大きかった」と語った。OpenSocialアプリはWebサービスとはまったく異なる特性を持っているため、その特性を理解することが何より大事だとしている。
なお、現在はアプリケーション第2弾として、マイミクと旅行情報を共有できる「つながるたび日記」を作成中。中西氏は「技術レベルが並の自分でも、100万人のユーザが遊んでくれるアプリを作成できた。みんなで楽しいアプリを作っていこう」と呼びかけた。
OpenSocial開発の国内動向
続いてmixiの田中 洋一郎氏が、OpenSocialに関して、日本における最近のアップデートについて解説した。
現在、OpenSocial対応をしているSNSにはgooホーム、mixi、モバゲータウンなどがある。gooホームやmixiでは、OpenSocialのバージョン0.8に対応しているが、最近では、リクルートメディアテクノロジーラボによるコミュニティ運営サービス「CREYLE(クレイル)」が、クローズドベータ版ながら、最新のバージョン0.9を使用して作られていることが注目される。
また、mixi同級生に使われている「Classmate API」、モバゲータウンで使用されている「Avatar API」、CREYLEで使われるコミュニティ運営のためのAPIなど、各社が作成している日本独自のAPIも多数存在する。
近い将来には、「GREE」がオープン化に伴いOpenSocial対応を遂げ、「みんカラ(みんなのカーライフ)」でもOpenSocialに対応する予定だ。これらのことから、日本ではメガSNSだけに限らず、徐々にそして確実に、OpenSpcial対応が広がっていると言える。
OpenSocialのAPIは、数もそれほどなく覚えやすいため、アプリケーションを作ることに関しては手軽に行える。その一方で、ユーザの詐称や個人情報の漏洩などの問題や、一般的にWebで言われているセキュリティ問題も、OpenSocialアプリケーションにそのまま当てはまってしまう。田中氏は「これらの問題は、全て技術的に対策が必要となる。我々OpenSocialのコンテナメンバももちろん対策をするが、それだけでは完全には防げない。OpenSocialアプリを開発する側でも、問題を念頭において開発することが必要」だと説明した。
これからのOpenSocial開発の流れとしては、Google App EngineやHTML5、Google Wave、Androidなど、数々の技術との連携が想定される。田中氏は「OpenSocial開発はOpenSocialだけで作れるものではない。今、Web全体をSocialにしていこうという動きが始まっている。今後はよりOpenSocialが成長を遂げていくだろう」として、セッションを閉じた。