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Zend Framework入門

分散環境でのPHPによるタスク管理 - Zend_Queue -

Zend Frameworkによる実践的なPHPアプリケーション開発 32

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Zend_Queueの基本的な機能

 次にZend_Queueコンポーネントの仕組みや、基本的な機能についてざっと見ていきましょう。他のコンポーネントでも見られたデザインですが、Zend_Queueコンポーネントは処理の受付をするZend_Queueクラス本体と実際の機能を提供するアダプタに分かれて提供されています。メッセージを格納する方法ごとにアダプタがあり、そのアダプタの挙動の差をZend_Queueクラスで吸収するわけです。

Zend_Queueのアダプタ

 メッセージを格納する方法は、システムの規模や用途等の条件によって最適なものが変わってきます。Zend_Queueコンポーネントには、標準で5種類のメッセージを格納する準備がされており、それぞれがアダプタとして提供されています。なお、先程の例で見た配列を利用したもの(Zend_Queue_Adapter_Array)も、そのアダプタの一つです。

Zend_Queueのアダプタ(クラス名に共通のZend_Queue_Adapter_は省略)
名前 説明
Activemq Apache ActiveMQを利用
Db Zend_Dbを利用してデータベース上に格納
Memcache Memcache上で動くMemcacheQを利用
PlatformJobQueue Zend PlatformのJob Queueを利用
Array メッセージはPHPの配列に格納。プロセス間の通信ができない等、主にテスト用のアダプタ

 これらのうち、Activemq アダプタから PlatformJobQueueアダプタまでは、外部のプロセスにメッセージを格納します。Activemq アダプタが利用する Apache ActiveMQ と Memcache アダプタが利用する MemcacheQ はメッセージキュー等を管理するために設計されたプログラムです。一方で Db アダプタはZend_Dbコンポーネントを経由して通常のデータベースにメッセージを格納します。

 PlatformJobQueueアダプタは少し特殊で、Zend Frameworkを提供しているZend Technologies社のZend Platform上で利用することを想定しています。Zend Platform は統合的なアプリケーションサーバで、その機能の一部として、ジョブを待ち行列で管理する Job Queue を提供しています。この Job Queue は単純なメッセージキューではなく、PHPのプログラムとそのプログラムへのパラメータを管理するキューになっています。

 ArrayアダプタはPHPのローカルな配列にメッセージを格納します。配列は各プロセスごとに独立なので、プロセス間での通信には利用することができません。主にユニットテストなどを書くために使用することが想定されています。

 このように特色のあるアダプタが標準で準備されていますが、基本的な使い方は同じようになっています。

Zend_Queueのコンストラクタ

 Zend_Queueクラスのコンストラクタは通常、次の形式で呼び出します:

リスト4 Zend_Queueのコンストラクタ
$queue = new Zend_Queue(アダプタ, オプション);

 このうち、「アダプタ」は文字列でアダプタ名を与えるか、利用したいアダプタのインスタンスを与えます。

 「オプション」は、アダプタを設定するための情報等を、配列かZend_Configクラスのオブジェクトで渡します。オプションに関しては、利用するアダプタごとに必要な内容が変わります(詳細は各アダプタの説明を参照してください)。

Zend_Queueのメソッド

 Zend_Queueクラスのメソッドのうち、アダプタ経由でメッセージキューを操作するためのものを紹介します。なお、一部のアダプタでは、これらのメソッドの一部が利用できないことがあります。

Zend_Queueクラスのメソッド
名前 説明
createQueue メッセージキューを作成します
deleteQueue メッセージキューを削除します
send メッセージをキューに追加します
receive メッセージをキューから取得します
deleteMessage キューにあるメッセージを削除します
count キュー内にあるメッセージの数を返します
isExists キューが存在するかを返します

 createQueueメソッドとdeleteQueueメソッドはメッセージキューの作成や削除に関するメソッドです。メッセージキューは通常、管理したいデータの種類に応じて複数持つことができます。createQueueメソッドを使えば 2つ目以降のメッセージキューに関してはZend_Queueクラスのコンストラクタを利用しなくても簡単に作成することができます。

リスト5 キューの作成と削除
$queue2 = $queue->createQueue("codezine_queue2", 5);
...
$queue->deleteQueue($queue);

 リスト5で作成した2つ目の「$queue2」は、最初に作成した「$queue」と同じように利用することができます。また、ここではキューのディフォルトのタイムアウト時間を5秒に設定しています(タイムアウト時間は省略可能で、その場合にはアダプタごとのディフォルト値が利用されます)。

 send メソッド、receive メソッドとdeleteMessageメソッドはリスト1~3で見たように、メッセージキューと通信するためのメソッドです。send メソッドはメッセージの追加、receive メソッドはメッセージの受け取り、deleteMessage メソッドはメッセージの削除を行います。

 countメソッドはキュー内にあるメッセージの数を返すメソッドです。

リスト6 キューの内のメッセージの数
$count = $queue->count();

 isExistsメソッドは、あるメッセージキューが既に存在するかどうかを調べるためのメソッドです。

リスト7 キューが存在するかどうか
if (!$queue->isExists('codezine_queue')) {
   echo "codezie_queueは既に存在するよ!\n";
}

 次にそれぞれのアダプタについて見ていきましょう。まずはDBアダプタです。

次のページ
DBアダプタ

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この記事の著者

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

WINGSプロジェクト 風田 伸之(カゼタ ノブユキ)

WINGSプロジェクトについて> 有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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