UXデザインで考慮すべき2つの距離
現在のスマートフォン市場ではiPhoneとAndroid端末が主流になっている。タッチパネルが全面にあり、ハードキーがそぎ落とされている。スマートフォンに組み込む機能の要件とUXの関係を見てみると、例えばiPhoneでは、指を横にスライドすることで画面を切り替える。普通に機能的に考えれば、指が横軸に移動したことを検知してメニューを切り替えるように作ればいい。しかし実際は、ユーザーは指を真横ではなく斜めに動かす。横だけを見ていては、ユーザーの意図通りの結果を返すことができないため、ユーザーは不快な体験をすることになる。そのため、斜めのスワイプも横と検知できるように作る必要がある。
またメールを受信した際はメール受信の通知を画面上に出し、現れた了解ボタンを押してメールを見に行く仕組みがあればいい。ただそのときはユーザーが別の操作をしていて、すぐにメールを見たくないかもしれない。着信通知の機能としては正しくても、ユーザーの状況を考慮しなければ正しいUXとは言えない。
大きな留意点として米川氏が指摘するのは「2つの距離」だ。まず指とタッチパネルの距離があり、アプリケーションが反応するまでの距離がある。両者が離れ、フィードバックが遅いほど、ユーザーの不満が大きくなる(図1)。そのため、この2つの距離をいかに縮めるかが良いUXの指標になる。
タッチパネルからアプリケーションまでの距離を縮めるためには、ネットワーク通信が入るなどの事情からすぐに結果を返すことができなくても、ハイライトなどのフィードバックを即座に行えばいい。Twitter系のアプリでは、スライドアニメーションを使っている。アニメーションは効果的で、現在見ているコンテンツから別の世界に切り替わったことを指し示すことができる。
指とタッチの距離ということでは、ボタン配置の問題がある。タッチパネルは、全面が反応する。ユーザーは移動しながら操作することが多い。そのため、スマートフォンは、従来型のハードキータイプよりも誤操作が多くなる。そのため、すぐに訂正できる仕組みが必須だ。
これまでグリーが進めてきたスマートフォン対象のアプリケーションの中心となっているのは、HTMLなどで作成されたフィーチャーフォン用アプリの移植だ。リストをタップで進むようにしたり、ボタンを目立つようにしたりするなど、スマホらしいUIを組み込んでいる。HTMLをベースにし、実現できない機能については、ネイティブアプリケーションで補っている。
HTMLを基本にしているのは、スピード重視という背景もある。HTMLベースでサーバーから配信する仕組みにより、常に最新のクオリティが高いデータを渡せるようにすることで、サービスの品質を上げていくサイクルを維持している。