スマホ向けアプリ市場の成長の影で取り残される
Windowsアプリ開発の市場
Windowsアプリケーションを動かす仕組みとしてレジストリシステムが初めて採用されたWindows 95の発売から18年が経ち、市場では1000万(Synclogue推計)を超えるWindows向けアプリを入手できるようになりました。今や、Windowsアプリは店頭での販売のみならず、Vectorや窓の杜などのポータルサイトや、各開発者のWebサイトからダウンロードするなど、入手方法も多岐にわたっています。
Windowsは、デスクトップ向けOSのシェアでは9割以上の圧倒的なシェアを持っています(2013年3月時点、Net Applications調べ)。しかし、開発者にとってはAdobeやMicrosoft Officeなどのアプリが寡占する市場でもあり、業務システムなどの受託業務や一部のアプリを除いていまだにDonation(寄付)が収益化の主な手段となっているのが現実です。
一方で、スマートフォンの普及によって急速に成長するAndroidやiPhone向けのアプリは、Google PlayやApple App Storeで一元的に配信・管理することができ、収益化がしやすいことから中小のソフトウェア企業や開発者の注目を集めています。企業にとって収益を生むか否かは死活問題で、今や「アプリ」といえばスマートフォン向けのアプリケーションを指すようになりました。そして、開発者にとってWindows向けのアプリ開発の優先度が下がり、Windows向けのアプリは市場から取り残されていっています。
Synclogue開発の原点
問題は、Windowsの市場が大きいにもかかわらず、アプリストアのように一元的にアプリを販売できるルートが整備されていないために収益化が難しく、ビジネスチャンスが見出だせないことから、ソフトウェア企業や開発者がモチベーションを持てないことにあるのではないでしょうか。
当のMicrosoftも、Windows 8からModern UI(旧称:Metro)用のWindows Storeを提供開始しているものの、歴史あるWindows向けネイティブアプリの市場を覆すほどのマーケットを構築することはできていません。開発者がWindows向けのアプリを開発しようと思えるような環境を作るために必要な要素は何か、その一つの答えがSynclogue(シンクローグ)です。
Windowsの課題を払拭する
Synclogueは、将来的に机など身の回りのあらゆるものがスマートデバイスになり、1つのIDでログインするだけで、すべてのデバイスが同じ作業環境になるような時代がやってくると考えています。デバイスや場所の制約のない環境に対応するために不可欠なSyncの仕組みを「Synclogue」は開発しています。
現在は、複数台のWindowsパソコンやタブレット間において、アプリケーションや設定を同期するツールをエンジニア向けに提供しています。MacやiPhone、Androidとは異なり、Windowsではアプリストアなどで一元的にアプリケーションが管理されていないため、Windowsパソコンのユーザーは、新しくパソコンを購入した際にアプリの再インストールや設定のし直しに多大な労力を費やすことになっています。
データなどのファイルは、DropboxやSkydriveといったオンラインストレージで同期することが可能になりました。しかし、なぜWindowsではMacやAndroidのようにアプリをワンクリックでインストールしたり、設定を同期したりすることができないのでしょうか。それは、Windows 95以降、Windows特有のレジストリやDLLといったアプリケーションに関わる複雑な仕組みがあり、アプリの設定をOS側で管理しているためにアプリケーションの移動や設定の同期ができないという課題があったからです。
そこでこの課題にメスを入れ、AndroidやMacと同様にWindowsでもアプリを一元管理することで複数台のマシンでアプリとその設定を同期させて使うことができるようにしました。パソコンを新しく購入した際も、Synclogueをインストールして、IDとパスワードを入力するだけで元の環境を復元できるようになるのです。
技術に明るい読者の方は、セントラルサーバーによるシンクライアントやリモートコントロールと何が違うのかと思われるかもしれませんが、これらの技術はネットワークに大きく依存しているためネットワークが不安定な環境では利用することができません。日本でも一歩都市部から離れればネットワークが安定しているとは言えない環境がありますし、東南アジアに目を向けてみれば、ほとんどの場所でネットワークが「安定」からはほど遠い環境なのです。
SynclogueではDropboxがファイルをローカルにも保存するのと同じように、端末にデータを一度ダウンロードし、以降は差分のみを同期するため、仮にネットワークが切れてしまうような不安定な環境でも問題なくアプリを利用することができるのです。例えば、SaaSのアプリはネットワークが必須ですが、Synclogueで利用するアプリは「半クラウド」の状態で、デバイス側にデータがあるので、オフラインの状態でも利用することができます。