参加ベンダー各社が提供する多彩なサービス
吉田:モデレーターの吉田です。今回はよろしくお願いします。パブリッククラウドについて、例えばIaaSは、すでにさまざまな場面で活用が進んでいる感触があります。利便性や特長も理解されていて、現場だけではなく、経営者層においても、あえて説明が不要だと思えるほどに認知は進んでいます。
そこで今回は、近年ユーザーの選択肢が広がっている「PaaS」にフォーカスしてお話ができればと思います。さまざまな場所でPaaSをテーマに講演などをする際、最初に聞かれるのは「PaaSのベンダーロックインについてどう思っているか?」ということです。
まずは各ベンダーが、ユーザーが恐れる「ベンダーロックイン」について、どのように捉えているかについて、見解を伺いたいと思います。まずは自己紹介と、自社のPaaSの特長について簡単にご紹介をいただいてよろしいでしょうか。
TIS:TISの西谷です。TISで提供しているPaaS「eXcale(エクスケール)」に関する事業の企画を担当しています。2012年10月にサービスを公開し、現在もベータ版として提供を続けています。TISはSIerとして主に大規模事業者を対象としたビジネスをメインにしています。eXcaleの事業は、それとは対照的に、主に小規模事業者やスタートアップを対象としたPaaSになります。特にスタートアップでは、システム周りのインフラの整備や管理といった、自社のプロダクトやサービス以外の部分にまでリソースを割くのが難しいという現状があります。eXcale関連の事業では、その部分をサポートしていきたいと考えています。
Engine Yard:Engine Yardの今中です。「Engine Yard」は、2006年2月に米国サンフランシスコで創業したPaaS専業のベンダーです。2005年の末にRuby on Railsバージョン1.0のリリースでRailsが脚光を浴びたことから、Railsアプリケーションの実行環境をPaaSとして提供することを目的にスタートしています。現在は、Rubyだけでなく、PHP、Node.js、Javaをサポートしています。Engine Yardはスタートアップの支援を大きなミッションの一つとしてサービスを拡大してきましたが、現在では大企業のユーザーも増え、世界60か国に数千社の有償ユーザーを抱えています。また、われわれが提供するPaaSのインフラ層には、AWS、Windows Azure、Terremarkといった大手ベンダーが世界各国で展開している信頼性あるIaaSを採用しています。今後、Oracleが展開するIaaSに加え、プライベートクラウドやハイブリッドクラウドへの対応を目的として、オープンソースのOpenStackやCloudStackなどのIaaSにも対応する予定です。Engine Yardは、オープンなプラットフォームをさまざまなインフラの上に乗せて提供することで、PaaSの市場規模拡大を図る戦略をとっています。
Saleforce.com:Salesforce.comの岡本です。Salesforce.comでは「Salesforce Platform」というブランドの上で、主に「Force.com」と「Heroku」という2つのPaaSを提供しています。それぞれの特長ですが、Force.comは、生産性向上を目的としたプラットフォームで多くの企業ユーザーがこの上で動くCRMを利用しています。Herokuは2010年に買収したプラットフォームで、こちらはRuby on Railsを中心に、Java、Node.js、Scala、Clojure、Pythonなどをサポートするオープンなものになります。生産性を追求したタイプのものと、オープンなテクノロジの双方をニーズに合わせて利用できるという点でユニークな立ち位置ではないかと思います。
「アイデアをアプリケーションに変える為の最速のプラットフォーム」/Salesforce Platformには、
モバイルに対応したクラウドアプリケーションを作成するための全てが揃っています。
NTTCom:NTTコミュニケーションズで「Cloudn PaaS」関連のとりまとめを担当している草間です。Cloudn PaaSはオープンソースPaaS「Cloud Foundry」をカスタマイズして提供している「Open PaaS」のカテゴリに入るサービスです。2013年の3月末に正式にサービスインし、離陸し始めた段階ですが、Cloud Foundryの拡張性を活用して追加した他Cloudnサービスとの連携機能なども、徐々にシナジーを生んでいる状況です。Cloud Foundryは、プラットフォームそのものがオープンソースで提供されており、Java、Ruby、PHP、Node.jsなどさまざまな環境に対応します。また、Cloudn PaaSは、「Cloud Foundry Core」という、プラットフォームの互換性を保証するプログラムにも参加しており、できる限り「ベンダーロックイン」を排除していけるようにサービスを展開しています。
ニフティ:ニフティの高野と申します。ニフティクラウドのPaaSとしては、PHPやRubyなどによるアプリケーションプラットフォーム「ニフティクラウド C4SA」と、スマートフォンアプリの開発に特化した機能を提供する「ニフティクラウド mobile backend」の2つを展開しています。ニフティクラウド C4SAについては2012年の7月に正式サービス開始で1年ちょっと、ニフティクラウド mobile backendについては2013年の9月末にスタートしたばかりといった状況です。ニフティクラウド C4SAについては、堅実に成長を続けている状況で、ブラウザによる操作だけで、必要な環境とアプリケーションの配備が行える点が特色になっています。
アイデアをカタチにする、ニフティの特化型クラウドサービス
日本IBM:日本IBMの紫関です。日本IBMは、プライベートIaaS、パブリックIaaSの分野からクラウド事業を始め、昨年からPaaSの領域に踏み出しています。プライベートPaaSは、われわれが「Pure Systems」と呼んでいる、サーバとミドルウェアを統合した製品ブランドの上で展開しているものです。このPaaSは、オープンスタンダード的にはOASIS TOSCA(Topology and Orchestration Specfication for Cloud Applications)に準ずるものです。もともとはIBMの「仮想アプリケーションパターン」として開発してきましたが、昨年、TOSCAのテクニカルコミッティが発足したときに、IBMも発足メンバーに加わり、自社の技術を供与しつつ、仕様を作ってきました。これに準ずるプライベートPaaSはすでに製品化しております。
われわれは、PaaSについてはもう一つの系統を手がけており、そちらはOSSをベースとする「Cloud Foundry」です。ベンダーロックインの観点で、よく「オープンスタンダード」と「オープンソース」は混同されがちですが、両者は似て非なるものです。IBMは「オープンソース」についても重視していますが、「オープンスタンダード」であることも、同時に重要だと考えています。ソースコードがオープンであるだけではなく、その開発プロセスやガバナンスがオープンにならないと、真の意味での「オープン」にはならないということです。そういう意味では、Cloud Foundryも、オープンソースではあったものの、ガバナンス的には不透明な部分もあったと思います。今後は、そのあたりも含めたオープン化をコミュニティ活動の中で進めていきたいと考えています。
このTOSCAおよびCloud FoundryベースのパブリックPaaSですが、2013年10月以降にテクニカルプレビューとして一般公開を予定しています。TOSCAはミドルウエア以下を明示的に指定できるため既存のシステムをPaaS化するのにも適しています。一方Cloud Foundryは、下位レイヤーを隠蔽しつつアプリケーションフレームワークやサービスを瞬時に提供することでアプリケーションプログラマーの生産性を高めます。性格の異なる2つのPaaSは用途に応じて使い分けられると考えています。
ベンダーロックインについて、アプリケーションが1つのプラットフォームから、別のプラットフォームにそのまま移せないことを「ベンダーロックイン」と言っていると思うのですが、例えばJavaのプログラムを別のクラウド上に移動するだけなら、それが可能なケースは多いはずです。ただ、PaaSの場合には、ミドルウェアスタックや複数サーバーのトポロジーの扱いについても考慮すべきだと思います。それらを、まとめて移せるのが、PaaSにおける本当の意味でのポータビリティになってくるのではないかと考えています。
IIJ:IIJの土岐田と申します。IIJは、インターネットプロバイダーとして20年ほど事業を行っています。最近では「IIJ GIO(ジオ)」というブランドで、IaaSを中心としたクラウドサービスにも注力しております。PaaSについては、今のところGIOの中で「MOGOK(モゴック)」と呼ばれるRuby on Railsの環境を、オープンベータの形で試験提供しています。これについては、2013年内をめどに正式なサービスとして製品化を行い、法人向けにも展開し、ゆくゆくは対応言語の追加なども行っていくことを考えています。IIJは、これまでの事業展開において、信頼できるインフラ、豊富なネットワーク、リソースを持っています。その品質の確保や、自社でのコントロール能力、高い運用能力を持っている点が、PaaSの提供においても強みになると思っています。
マイクロソフト:マイクロソフト コーポレーションの佐藤です。弊社のクラウドプラットフォームである「Windows Azure」は、2008年秋にイベントで発表され、2010年に正式サービスを開始。提供から3年半ほどになります。スタート当初は、現在では「Windows Azureクラウドサービス」と呼ばれているPaaS機能を中心にしていましたが、継続的に機能の追加・拡張を続けています。サービスの特長ですが、1つ強調したいのは「グローバル」なサービスであるという点です。北米、ヨーロッパ、アジアで展開しており、オーストラリア、中国、日本での展開も予定しているため、特にグローバルでビジネスを展開しようとするユーザーに使っていただきやすいサービスになっています。また、機能については、スタート当初から提供している汎用的なPaaSに加えて、Webアプリケーションに特化したPaaS、スマートフォン/タブレット アプリケーション向けのバックエンド機能であるMBaaS (Mobile Backend as a Service)、メディア配信など、用途に特化した機能も提供しています。契約数はグローバルで10万を超え、約半年でサーバリソースを倍増させるといった形で急拡大を続けています。
