定型的なタスクを自動化する「Grunt」
Gruntは、JavaScriptで動作するタスクランナーです。フロントエンド開発では、さまざまに定型的な作業が発生します。例えば、TypeScriptファイルのコンパイル、JSLintなどによる品質チェック、JavaScriptファイルの圧縮/連結などです。これらの作業一つ一つは単純ですが、開発の最中に何度も繰り返さなければならないとなれば、その手間はばかになりませんし、作業ミスのもとにもなります。そこでGruntを利用することで、こうしたタスクを自動化できるわけです(注1)。他の言語を知っている人であれば、Ant(Java)、makeのようなものと考えると、理解しやすいでしょう。
本稿では、アプリで利用するJavaScriptファイル一式を圧縮し、/wwwroot/scriptsフォルダーにapp.jsとして配置するまでを、Gruntを使って自動化してみます。
注1
同じくタスクランナーとしてGulpを選択することもできます。ASP.NET 5 Web Applicationプロジェクトでは、デフォルトでGulpが有効になっています。
[1]Grunt/Gruntプラグインをインストールする
Gruntと、そのプラグインは、npm(Node Package Manager)からインストールできます。npmは、JavaScriptの実行環境であるNode.jsで動作するパッケージ管理ツールです。フロントエンド開発では、Grunt/Gulpのような開発ツールをインストールするために利用することになるでしょう。
npmを利用するには、プロジェクトルート(本稿サンプルでは/AngularSpa)を右クリックし、表示されたコンテキストメニューから[追加]-[新しい項目...]を選択します。[新しい項目の追加]ダイアログが表示されたら、「NPM 構成ファイル」を選択してください。ファイル名は「package.json」で固定です。
package.jsonの骨組みが表示されるので、以下のように編集してみましょう。
{ "version": "1.0.0", "name": "Sample", "private": true, "devDependencies": { "grunt": "~0.4.5", "grunt-contrib-uglify": "~0.9.1" } }
devDependencies配下には、現在のアプリで開発用途として利用するパッケージを「パッケージ名: バージョン番号」の形式で列挙します。バージョン番号先頭の「~」は、パッケージのマイナーバージョンアップがあった場合に、そちらをインストールすることを表します。この例であれば、以下のパッケージをインストールします。
パッケージ | 概要 |
---|---|
grunt | Grunt本体 |
grunt-contrib-uglify | JavaScript圧縮のためのGruntプラグイン |
Gruntそれ自体は、ごくシンプルなランナーなので、個別のタスク定義にはプラグインを導入するのが一般的です。
package.jsonを編集する際には、利用できるパッケージ/バージョン番号がインテリセンスで候補表示されますので、編集もごく手軽に行えます。
[2]パッケージをインストールする
列挙したパッケージは、package.jsonを保存したタイミングでプロジェクトに自動的にインストールされます。ソリューションエクスプローラーから/依存関係/NPMフォルダーを展開すると、登録済みのパッケージが表示されます。
もしもパッケージの横に「インストールされていません」と表示されている場合には、/NPMフォルダーを右クリックし、コンテキストメニューから[複数のパッケージの復元]を選択してください。
[3]Gruntの構成ファイルを準備する
Gruntでは、gruntfile.jsで実行すべきタスクを定義します。/AngularSpaフォルダーを右クリックし、表示されたコンテキストメニューから[追加]-[新しい項目...]を選択します。[新しい項目の追加]ダイアログが表示されたら、「Grunt 構成ファイル」を選択してください。ファイル名は「gruntfile.js」で固定とします。
// gruntfile.jsの外枠 module.exports = function (grunt) { // (1)Gruntの設定(初期化) grunt.initConfig({ // uglify-myTargetタスクを定義 uglify: { myTarget: { files: { 'wwwroot/scripts/app.js': // 圧縮後のファイル [ 'Scripts/**/*.js' // 圧縮対象のファイル ] } } } }); // (2)プラグインのロード grunt.loadNpmTasks('grunt-contrib-uglify'); // (3)タスクの登録 grunt.registerTask('default', [ 'uglify' ]); };
gruntfile.jsは、大きく以下のブロックから構成されます。
- (1)タスクの設定(uglify/watch)
- (2)プラグインのロード
- (3)タスクを登録
この例であれば、uglify-myTargetタスクとして、/Scriptsフォルダー配下のすべての.jsファイルを圧縮/連結し、/wwwroot/scriptsフォルダー配下のapp.jsにまとめるための作業を定義しています((1))。uglifyはgrunt-contrib-uglifyで決められたタスク名で、myTargetは開発者が自由に決められるサブタスク名です。(2)は、uglifyタスクを利用するために、grunt-contrib-uglifyプラグインをロードしています。
(3)は、defaultタスクとしてuglifyタスクを登録しています。本稿では利用しませんが、無条件に実行したいタスクは、defaultタスクとして登録しておくことで、gruntコマンドからまとめて実行できるようになるので便利です。
そのほか、gruntfile.jsの詳しい構文については、別稿『Web作成の定形作業を自動化できるJavaScriptタスク実行環境Grunt』も併せて参照してください。
/wwwrootフォルダー
ASP.NET 5で、新規にプロジェクトを作成すると、ガラリと構成が変化していることに気づくかもしれません。
トップフォルダーの/Solution Itemsはソリューション項目、/srcがプロジェクトの本体です。さらに、プロジェクトフォルダー(ここでは/AngularSpaフォルダー)配下にある/wwwrootフォルダーに注目です。名前からも想像できるように、ここにはエンドユーザーがアクセスできるHTMLファイル、JavaScriptライブラリ/スタイルシート、画像リソースだけを配置します。ASP.NET 5では、/wwwrootフォルダーによって、アプリ内部で利用するソースコードと、開示すべきリソースとを、明確に区別しているのです。コントローラー/データモデルなどのソースコードは、/wwwrootフォルダー以外に配置します。
[4]タスクを実行する
Visual Studioでは、Grunt/Gulpで定義されたタスクを管理/実行するために、専用のタスクランナーエクスプローラーが準備されています。gruntfile.jsを保存したら、登録済みのタスク(実タスクuglifyと、別名定義されたdefaultタスク)が表示されていることを確認してみましょう。
タスクを実行するには、目的のタスクを右クリックして、表示されたコンテキストメニューから[実行]を選択してください。また、特定のタイミングでタスクを実行するには、同じく目的のタスク(例えばuglify)を右クリックして、[バインディング]-[ビルド後]を選択します。これによって、ビルドが成功したタイミングでuglifyタスクが実行されることになります。そのほか、「プロジェクトを開く」「ビルド前」「クリーン」などのタイミングを選択できます。
/Scriptsフォルダー配下に適当な.jsファイルを配置して、タスクを実行することで、/wwwroot/scripts/app.jsが生成されていることを確認してみましょう。