【関連リンク】 UI Crunch Under25 | UI Crunch
この日は若手デザイナーに向けてということもあってか、南場氏のトークは大変気さくでノリがよく、語り口はロックスターのMCのようであった。文字では伝わりにくいが、その楽しさ・雰囲気を少しでも感じてもらえたらと思い、本稿ではできるだけトークをそのまま文字にしてみた。
なお、女優 兼 プログラマの池澤あやかさんが、株式会社グッドパッチの佐宗 純さんとともにイベントの進行役を務めた。
(以下、南場氏の講演)
実は、クリエイティブな人にコンプレックスを持っています
こんにちは。今日はUnder25ということで、制限年齢の2倍オーバーである私は居心地が悪いです(笑)。あと、居心地が悪いというか、とても緊張していますが、私はクリエイティブな人にとてもコンプレックスを持っています。だから、ここにいる人たちのことを、とてもうらやましく思う。
私がそんな居心地の悪いこの壇上になぜ立っているかというと、今、デザインってむちゃ大事なんです。DeNAという私が作ったこの会社の将来は、デザインにあると思っています。なぜそう思うのかを話そうとここにやってきました。
このイベントはDeNAだけのものではないのでどうしようかな、と思ったのですが、私はDeNAの創業者であり、会長であり、ベイスターズのオーナーです……昨日も負けてしまいましたが。ファンの人がいたら申し訳ない。私はDeNAに120%の力を投入しているため、なぜUI/UXデザインが大事なのかは、DeNAの文脈で話すしか方法がないので、そういう話をさせていただきます。
その前に、DeNAって何?って感じだよね。DeNAって何かというと……何をやっている会社ですか?DMMとどう違うんですか? とかですねぇ、DeNAってわかりづらいといわれるんですね。
それはなぜかというと、自分たちが挑戦する領域を限定しないから。それをすごく大事なこととしています。DeNAの主立った事業領域だけでも、ゲーム、エンタメ、自動車、ライフスタイル、ヘルスケア、コマース[1]。他にも細かいものが諸々あるんだけど、つまり、事業領域がインターネットというものから少しはみ出したりしつつ、こんだけいろんなことをやっちゃってる会社なんですね。
DeNAでは、新規事業を始めるとき、3つの質問をします。1つめは「十分にでかいか」。大成功してそれで事業規模が8000万円ですというんだと、それでは学生ベンチャーにしてもちょっとちっちゃいかな。うちの会社がやることじゃない。成功したら十分にでかい事業になるかどうか。
2つめは「勝てるか」。3つめは「もう、やりたくてやりたくてたまんないという目の輝いている奴がいるか」。この3つがすべてイエスなら、だいたい「やろうよ」となって、新規事業が始まっている。その結果が今の(いろんなことをやっている)姿です。
[1]: エンタメ分野ではライブ動画配信の「SHOWROOM」と電子マンガの「マンガボックス」、自動車分野ではカーシェアリングの「Anyca」とロボットタクシー、ヘルスケア分野では遺伝子検査の「マイコード」が紹介された。
DeNAのアイデンディティ「Delight」
ロボットタクシーとか遺伝子検査とか、インターネットからはみ出ちゃってますが、何をしようとしているかというと、我々がインターネットで培ったスキルを用いてですね、新しい産業にも入っていこう。そんなことより何より、「何でもありだよ」ということであります。
何でもありってどういうこと? 本当に何でもいいんですか? というと1つだけ(全サービスの)共通点がある。私たちがすごく固執していることがあります。それが「Delight」であります。
Delightってどういう意味かというと、辞書を引くと「喜ばせる」とか書いてありますけど、ニュアンスとしてはですね、「何となくポジティブな驚きを持った喜び」ですね。これを感じてもらうことを「Delightする」っていっています。世界中の人を我々のサービスでDelightしたいよね。その気持ちが、いろんな事業に携わっている全員に共通して一番強いものとなっています。これがない人はDeNAにいてはいけないというルールがあるくらい、DeNAはこのDelightにこだわっています。
ヘルスケア、自動車、ライフスタイル、Eコマース、エンタメ(を主な事業領域として挙げたけれども)、Delightの仕方は何でもいいよ、Delightの仕方っていうのはいろいろあるよね、ということですね。いろんな意味で驚きを持った、なんとなく驚きを持った喜びっていうのを提供する。ポジティブにうれしく喜ばす。そういうことを目指している集団だよね、というのがDeNAのアイデンティティです。
なぜデザインかの3つの理由 〜 新サービスのつくり方が変わってきた
さて、これから本題のなぜデザインか——そうですね、なぜクリエイティブなのか、という話に入ります。
えーっと、これから南場智子さん、大変ありがたい話をします。新しいサービスや事業の作り方が、すごく変わってきたと思う点が3つあるんですね。この3つをみんなと共有したいと思います。