SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

勉強会レポート

DeNA南場智子氏がサービス開発の悟りを講演「UXをまず作り込む。ビジネスモデルやマーケティングは後でいい」

UIデザイナー向けイベント「UI Crunch Under25」基調講演


  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

UX driven:ユーザー体験(UX)に合わせてビジネス戦略を考える

で、Permissionless型だったら何でもいいのか。このPermissionless型にしてもですねぇ、サービスの作り方が変わってきてるんです。

今まではですね、Permission型であろうがPermissionless型であろうが目指すこと、たとえば、「若者向けに大ヒットするようなアプリ作りたいな」は万人の願い。すべての会社がこれを目指していますね。若者にヒットするアプリを作りたい。そしたら、若者というだけではだめだよね、ターゲットセグメントをもっとはっきりさせようよ。そのために、市場調査をやろう、競合調査をやろう、ニーズの調査をやろう、差別化ポイントは何だっけ?、ペルソナを設定しよう、コンセプト設計をしようっていうことが始まる。

今までのサービスをつくるプロセス
今までのサービスをつくるプロセス

これ(を行うときに)はよく「コミュニティ型なの? ネタ探し型なの?」あるいは「オープンなの? クローズドなの?」みたいな軸のマトリクスを作って、他社のヒットしているサービスを分類してみて、そして「ここが空いてるー!」みたいな分析をしますよね。それで「ここに向かって何か投入しようよ!」となって、オープンなコミュニケーションアプリ、動画系サービス、画像配信(などを)やりましょう、という感じです。

それから、これをやったときにどうやって儲けるの? 収益モデルは? サービスを作ったはいいけど儲けが出ないんじゃ困るじゃない。収益が出ないと継続できないから。それじゃ、どこでお金を払ってもらうのか(キャッシュポイント)とか、どういう事業計画になるのか。KPIというのは(事業の成否を判断するための)数字ですね。「何パーセントのユーザーが使ってくれて、そのうち何パーセントがはまってくれて、何パーセントが払ってくれて、それらをかけ算をするとだいたいいくらで」みたいな数字がたくさんの事業計画が出てきて、それを見て「あ、いいんじゃな〜い」みたいな話になったら……次に設計ですね。もうおなじみの要件定義とか、ワイヤフレーム作りとかをやって。そしてプロトタイピングをして、できあがってリリース、というのが今までのフローだったと。

これ……ちょっとどうなの? これが今までのオーソドックスだったんだけど、ちょっと考えてみましょうと。ビジネスとしての成功って、どこに依存するんだろうということですね。

ビジネスとしての成功はどこに依存するのか
ビジネスとしての成功はどこに依存するのか

誰にターゲッティングするか。(これは)まあまあ重要ですね。これをすっごい間違うと、「IQ 200以上の人を対象としたマスコミュニケーションやりましょう……ほとんどいないぞー」みたいな世界です。だから、本当に間違うとだめなんですけど、ある程度当たってたらいいよね。成功に対する(ターゲッティングの)貢献度は10%くらいじゃないかと思います。

ビジネスの成功、サービスの成功の9割(を占める要因)はユーザーエクスペリエンス(UX)です。これがすばらしければ、9割は成功が保証されてます。これがすばらしければ、じゃあマーケティング踏もうよってできるわけですね。

私たちが一番大事にしているDelightはどこ?っていうと、前半は0%です。Delightポイントは(スライドの)一番右の「ユーザーエクスペリエンス」です。このパーセンテージを見て、何を感じるのか。これまでのフローってのは、DeNAが一番大事にしているDelightにほとんど関係ない、あるいは、株主さんが期待してくれているビジネスの成功にあまり関係のないコンセプト作りとか、市場調査・競合調査とか、ビジネスモデルとかに時間とリソースを使いすぎてたよね、ってことです。

ものすごく立派な(上図の)左側ができても、右側でこけると成功の確率はゼロなんですね。左側でかけたリソースっていうのは無駄になってきます。だから、ちょっと考え直そうよということです。どう考え直すか。右側からやろうよってことですね。ユーザーエクスペリエンス、ユーザーへの感動から定義しよう。右側の「驚き、喜び」をまず定義しようよ。そこから左側を始めていいんじゃないの、と。

DeNA 赤川隼一氏
DeNA 赤川隼一氏

赤川(隼一氏)ですね。見た感じ情けないんですけど、新卒入社で最速で我が社の執行役員にまでなりました。ものすごい難しいタスクをびゅんびゅんこなすやつなんですが、(執行役員はもう)「やめた」と。執行役員が何するかというと、あの経営会議に出るっていう。経営会議のオッサン、オバサンが判断したら間違うよっていうのがDeNAの経験なんで、「そんな経営会議に出てる場合じゃない」と。「執行役員をやめて、現場をやらせてくれ。サービス作りをやらせてくれ」。そうしてサービスを作るプロデューサーに戻った。

これ、すごくDeNAらしい考え方なんです。肩書きってエライって私たちは思ってなくて、やっぱりユーザーに対するバリューを提供するというところに一番価値があると思ってるんで、上下ってあまりない。むしろ、こないだまで管理職だった人が、今日現場に戻るっていうことは繰り返されてる感じなんで、あんまり珍しいことじゃないです。

じゃあ、プロデューサーとして何すんのと。(赤川氏は)自分がやっているどんなゲーム、どんなアプリでもワンタップで友達に超手軽に画面共有したい。リアルタイムでね。そのまんま、ワンタップで共有したい。これやりたい。これやったらうれしいよね、と。

赤川氏がプロデュースしたアプリ「Mirrativ」
赤川氏がプロデュースしたアプリ「Mirrativ」

このサービス知ってます? Mirrativ(ミラティブ)。 あらゆるスマホ画面を生配信するコミュニケーションアプリっていう名前が付いているそうです。Mirrativを起動して、その上でまた別のアプリを起動してやると、ほぼワンタップで(アプリ画面を生配信できます)。なかなかユニーク。世の中にない驚きですね、けっこうな驚きであります。いつ出たんだっけなー、1か月くらい前? 今、20か国語くらいに翻訳されて、1週間で1億インプレッションをたたき出してる。

これ、コンセプトを作ってビジネスモデルを構築して、設計して実装してっていうの(一般的な開発プロセス)じゃなくて、まず(これをやりたいっていう)ユーザーエクスペリエンスを定義したんです。それからプロトタイピングして「わおー」っていうもの(納得できるUX)ができてから、「これは誰がどう使う? 誰にマーケティングする? 強いていえば、どこが競合なの?」と、マーケティングプランとか事業計画を作った。納得できるすばらしいものができてから、(あるいは)もうできそうなくらいいいぞーってなったら初めて、分析とかターゲッティングとかマーケティングの準備とかを始めるっていうことであります。

そんなことをしてですね、やったのがMirrativであります。

一般的な開発プロセスとMirrativでの開発プロセスとの違い
一般的な開発プロセスとMirrativでの開発プロセスとの違い

えー、全くバリューのないところから始まって、ユーザーにDelightを届けられるかどうかに一番影響する、(これまでのやり方では)一番右側のところに最後に到達するのじゃなくて、それをひっくり返そうよってことですね。

これまでは戦略からUX、戦略がUXを規定していた。戦略が始めにあって、次にUXがあった。そうじゃないよね。まーず、UXをやって、それから後から戦略を考えていこうよ。言い方を変えると、「Strategy leads UI/UX」じゃなくて、「UI/UX leads Stratery」。このUXならいけるよ!(となってから)このUX/UI、このサービスだったらこうやって売ろうよ、こういうターゲットに売ろうよ、こうやって収益を上げていこうよってことをリードしていく。(会社として)本気でやっていこう。

UI/UX leads Strategy
UI/UX leads Strategy

これが2つめのポイントだね。1個目はPermissionless、2個目がUI/UX leadsですね。Strategyじゃなくて、UI/UXをまず一番最初にしっかり作り込んで、そこが他をリードするっていう、そういう風にサービスの作り方が変わってきたんですね。はい。

UI/UXを最初に作り込む方向へサービスの作り方が変わってきた
UI/UXを最初に作り込む方向へサービスの作り方が変わってきた

次のページ
セグメント最適化から個別最適化へ:効果絶大! 継続利用が10倍に

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
勉強会レポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

市古 明典(編集部)(イチゴ アキノリ)

CodeZine編集部3年目の44歳。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より現職。9月から翌年2月まではNFL観戦のため、常時寝不足。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/9008 2015/10/06 12:24

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング