アウトドアとテクノロジーの融合で、人が人らしく働く環境を構築
最近、キャンプが好きで長野県に行く機会が多いという中嶋氏。キャンプに出かける主な理由は、趣味としてキャンプを楽しむことだけでなく、アプリケーション開発をするためでもあるという。「長年、仕事に携わっていると、どういう環境・時間だとパフォーマンスが良いか分かってくる。それが私の場合は朝であり、アウトドアだということが分かった」と中嶋氏は語る。
そして、そんなアウトドアでの働き方を以前より実践しているのが、村瀬氏である。村瀬氏が代表を務めるスノーピークビジネスソリューションズ(以下、SPBS)は、今年7月に設立されたばかりの新会社だ。アウトドア用品メーカーのスノーピークと、村瀬氏が1999年に設立したITコンサルティング企業、ハーティスシステムアンドコンサルティング(以下、ハーティス)の2社により設立された。企業における最大の問題は「人財」に関することという村瀬氏。SPBSはアウトドアとテクノロジーの融合により、人が人らしく働く環境や関係性を構築し、企業の人財に関する課題の根本的な解決を目指す。
具体的には、ビジョンシェアやチームビルディング、クリエイティブマインドの醸成、およびITリテラシーの向上とワークスタイルの変革体験などを通して、社員一人ひとりの人間力を高め、働きがいのある魅力的な組織づくりを総合的に支援していくという。
SPBSのコーポレートキャッチフレーズは「自然と、仕事が、うまくいく」。教育や研修を提供するだけではなく、無理なく社員が勝手に考えて勝手に働くいい会社を作っていくことに貢献したいと、村瀬氏は意気込みを語る。
「SPBSでは、やりがいのある仕事や仲間との良好な関係づくり、発想の転換の機会を与えられるサービスを企画した。それがSPBSが提案する新しい働き方『OSO/TO』(Outdoor Small Office/Third Office)です」(村瀬氏)
入社式での訓示もキャンプ場から
そもそも、なぜ村瀬氏は先のようなコンセプトを持つSPBSを立ち上げようと思ったのか。そんな中嶋氏の問いに対し、村瀬氏は次のように明かす。
「友人に誘われて1年に1回ぐらいキャンプに行っていたが、正直、キャンプなんて面倒くさいと思っていた。しかし、キャンプですばらしい時間を過ごしていくうちに、いつかこんな環境が日常にあればいいなと思った」(村瀬氏)
そこで村瀬氏は、ハーティスのサテライトオフィスを作ったり、テレワークを推進したりしたという。また、高知県で地域の資源を活かし、新たな出会いやアイデアを育む場を展開している特定非営利活動法人「土佐山アカデミー」に参加し、場所を一画借りてアウトドア生活も体験してみた。2015年4月のことだ。実はその体験期間中、ハーティスの入社式が予定に入っていた。
「だから、入社式の訓示をオンラインで行った」と村瀬氏は笑いながら話す。ただし、それには「ITを使えば、いろんな働き方ができる。そういう提案をIT企業として実践していきたい、という考えを明示する目的もあった」(村瀬氏)。
そして、ハーティスではキャンプ用品を150万円かけて購入。費用は「福利厚生費として計上している」と村瀬氏。公園でのバーベキューはチームのモチベーションの向上にもつながっているという。また、「役員会も外でやっている。ドーム型テントで会議をすると、殺伐とするような議題でもそういう雰囲気にはならない」(村瀬氏)というメリットもあるそうだ。
それから半年後、村瀬氏はスノーピーク主催のイベント「スノーピークウェイ」で同社の山井社長と出会い、「チームビルディングのためにアウトドアを活用したい」ということを訴えた。新潟県三条市にあるスノーピーク本社へ相談に訪れた際も、村瀬氏はホテルに泊まるのではなく、燕三条のとある場所にテントを張り、そこで寝泊まりした。そんな村瀬氏の提案に、山井社長も「世の中を変える可能性がある。一緒にやろう」と賛同。SPBSはそうして設立された。