AIはシステムの一部として活用する
活用事例も次々と登場している。北海道大学大学院 工学研究院工学系研究教育センターでは、大学院後期課程の授業をe-ラーニング化し、遠隔地にいる社会人大学院生の受講支援として配信している。外国人留学生のために、コンテンツに日本語や英語の字幕を入れることもあり、これまではオンプレミスのストリーミングサーバーを用意して配信。字幕はアルバイトや職員が作成し、翻訳は外注などでまかなっていたという。
こういった状況に対して「字幕作成にAzure Media Indexer、字幕翻訳にMicrosoft Translator、また動画配信にはAzure Media Servicesを導入。動画配信システムの初期導入コストや、字幕の作成、翻訳にかかる時間とコストを大幅に削減できた」と佐藤氏は語った。人力での字幕起こしにかかる時間はコンテンツの約10倍で、90分の動画だと900分の作業。時給1000円のアルバイトとしても、計1万5000円である。同サービスの導入により、字幕起こしの費用は平均153円と100分の1に、字幕起こしにかかった時間は平均29分と30分の1に、字幕翻訳費用は50円以下と400分の1に、そしてその時間は平均20分程度と1080分の1になったといい、具体的な数字を挙げて大幅な効率化を明らかにした。
続いて佐藤氏が紹介したのは、ジョン・F・ケネディ元大統領暗殺に関する膨大な文書の整理への活用についてだ。大量の文書を読むには何十年もかかると言われているが、以下を用いた仕組みを作ることで、大量文書の内容が容易に解釈できるようになる。例えば、Text AnalyticsやEntity Linking Intelligence ServiceといったAPIを用いてテキスト分析の仕組みを構築し、人名や固有名詞などのキーフレーズを容易に抽出・分析できる。
またコージェントラボがAzure上で開発した自然言語理解エンジン「Kaidoku(カイドク)」を使えば、さまざまな文書を理解しマッピングしてくれるため、「検索にかかる時間を短縮してくれたり、気付いていなかった文書の関係性を可視化してくれたりする。例えばカスタマーサポートに応用するとクレームを一元化できるので、問い合わせサポート業務の改善につながる」。
こういった仕組みを使うと、ビジネス業務にどんな変化があるのだろうか。佐藤氏は、AIサービスを活用することで「データ入力が変わる」と話す。これまでの「事象発生→手入力→入力画面→登録」といったフローがデジタル化され、人手を介することなく負荷を削減してデータ化できるようになるといった具合だ。
続いて佐藤氏はビッグデータ分析サービス「Azure Data Lake Analytics」も紹介。「大規模な分散分析が可能になる顔の解析」「画像へのタグ付け」「顔の感情分析」「OCR」「テキストからの重要語句の抽出」「テキストの感情分析」という6つのコグニティブ機能を提供しており、ビッグデータ分析のためのSQLライクなクエリに、簡単にコグニティブ機能を組み込めるようになっている。
また、マイクロソフトがトレーニング済みのMicrosoft Cognitive Servicesだけではまかなえない場合は、カスタムAIを利用できる。これを使うとどんなことができるのかも簡単に紹介した。佐藤氏が取り上げたのは、相撲の写真からロマンチック小説風ストーリーを作る事例。「このソースを見たい人はGitHubで公開されているので参考にしてほしい」。
そのほかにも、プロのデータサイエンティストが使える高度な機能を提供する「Azure Machine Learning Workbench」を紹介。「これまでのAzure Machine Learning StudioはGUIで簡単に開発できる半面、幅広いデータサイエンスのニーズのすべてに対応することができなかった」と佐藤氏。だがデータサイエンティストの初心者にはブラウザで動くMachine Learning Studioは使いやすく「無料で使えるので興味のある人はぜひ、使ってほしい」と佐藤氏は説明する。
Azureを使ったAI開発では普段使っているIDEや任意のフレームワークも利用可能だという。佐藤氏は「柔軟なトレーニングとデプロイの選択肢が実現する」と話し、そのほかにも多数のIoT向けのAIプラットフォーム「Azure IoT Edge」などについても簡単に紹介。
「ビジネスコミュニティ『Deep Learning Lab(ディープラーニング・ラボ)』も立ち上げているので、関心のある人は参加してほしい」。最後にこう呼びかけセッションを締めた。
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