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AI時代にエンジニアが生き残るため、身につけるべき3つのスキル【デブサミ2018 夏】

【B-2】AI時代におけるエンジニアの生存戦略

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2018/08/22 14:00

 ビッグデータを活用してビジネスに生かすことは、今や当たり前になりつつあり、データ活用市場が拡大するに伴ってAIエンジニアのニーズも急増している。「2017グローバル人工知能人材白書」では、「AI企業が必要としている専門人材は70万人不足」という報告もある。では、AIエンジニアとはどのようなスキルを持ったエンジニアなのか。また、どうすればAIエンジニアに転身できるのか。人工知能&ビッグデータ領域のトップランナーが創業し、データ活用のコンサルティングを提供しているDATUM STUDIOの安部晃生氏と、総合人材サービスのリーディングカンパニー、パソナキャリアでAI関連の転職支援実績のある高坂将大氏が、AI時代におけるエンジニアの生存戦略を指南した。

ニーズが急増するAI人材

 企業のデータ活用が進むにつれ、AI人材の不足が取り沙汰されている。パソナキャリアで機械学習やAIのキャリアアドバイザーを務め、現在はマーケティング部でデータ分析およびAIプロジェクトの企画を担当している高坂氏は、「パソナキャリアでもAI・データ分析関連の求人は伸びている」と話す。

株式会社パソナ パソナキャリアカンパニー 人材紹介事業部門 マーケティングチーム 高坂将大氏
株式会社パソナ パソナキャリアカンパニー 人材紹介事業部門 マーケティングチーム 高坂将大氏

 ビッグデータの基盤を構築できるエンジニアリング系の人材や、AIのアルゴリズムを開発できるデータサイエンス系の人材、さらにはAIを使った事業戦略を考えられるビジネス系の人材など、求められる職種もさまざまだ。しかも業種業界問わず、ベンチャーから大企業までの募集が増えているという。「2020年からは採用ニーズが一段落する可能性があるので、転身するなら今がチャンス」と高坂氏は言い切る。

 また、国が進める科学技術政策「Society5.0」。「対応するためには、AI人材の育成の抜本的な加速が必要だ」と経済産業省も訴えている。このようにAI人材の育成は企業だけの問題ではない。国も後押しをしているのだ。そのためにも「人材を増やしていくことに加え、活躍できる土壌を作っていくことがこれから大切になる」と高坂氏は述べる。

 そんなニーズ急上昇のAI人材を多く抱えるのが、データ分析に特化したコンサルティングサービスを提供するDATUM STUDIOである。2014年にAIおよびデータ活用の世界のトップランナーによって設立された同社は、データ活用市場の拡大と共に近年、急成長を遂げており、設立5年目にもかかわらず、すでに100社以上のコンサルティング実績を持っている。

 安部氏は求められるAIエンジニア像を明らかにするためにまず、「AIとは何か、AIに求められること」について解説した。

DATUM STUDIO株式会社 CTO/情報システム部部長 安部晃生氏
DATUM STUDIO株式会社 CTO/情報システム部部長 安部晃生氏

 WikipediaでAIは、「人間の知的能力をコンピュータ上で実現するさまざまな技術・ソフトウェア・コンピュータシステム」と記されている。

 具体的な活用分野としては次のようなものが挙げられる。まずは未来の販売価格を予想し、中古製品の仕入れ値を決定するなどの「販売実績による予測」。次にSNSへの書き込みから、人気の出そうなタレントを予測したり、SNSで情報の書き込みから映画の動員数を予測したりするといった、「集合知に基づく予測」。そしてIoTセンサーログから機器の故障を予測することや、IoTセンサーから異常行動者を検知する「異常状態の予測」である。

 「これまで人がやっていたことをAIにやらせることが主な活用分野ということ。現在のAIは、専門家の知能の代わりになるものだといえる。ドラえもんのように自分で考え行動するAIはまだまだ未来の話」(安部氏)

 AIが専門家の知能を代替できるのは、人間と判断プロセスが似ているからだ。人間はある業務領域において経験や記憶を得てそれを学習し、規則性を見つけ判断につなげていく。AIも同様に、蓄積されたデータを機械学習にかけ、法則性を見つけモデルを作成、アウトプット(判断)を出す。人間ができることを機械に置き換えているということだ。

人間とAIの判断プロセスが似ているため、専門家の知識を代替できる
人間とAIの判断プロセスが似ているため、専門家の知識を代替できる

 特にAIが得意とするのは、量や速度が求められるもの。「例えば数テラバイトもあるSNSの口コミをすべて読み込むことは人にはできないが、AIなら容易にできる」と安部氏は説明する。

 「これまで数人で担当していたチェック作業を自動化。もちろん、最終的な確認は人が行うが、業務の置き換えは実現できている」(安部氏)

データサイエンティスト、AIエンジニアに求められる3つのスキル

 先の事例からもわかるように、すでに多くの業務の現場で、これまで専門家や専任の担当者が行っていた業務を、過去のデータを活用することでAIに置き換えている。そして、それを実現するのがデータサイエンティストやAIエンジニアの役割だ。

 データサイエンティストやAIエンジニアの仕事は本来、「データサイエンス、ビジネス、データエンジニアリングという3つのスキルをカバーすることが求められる」と安部氏は説明する。

 データサイエンスのスキルとは「情報処理、人工知能、統計学などの情報化学系の知恵を理解し、使う力」。ビジネスのスキルとは「課題背景を理解した上で、ビジネス課題を整理し、解決する力」。データエンジニアリングのスキルとは「データサイエンスを意味のある形に使えるようにし、実装・運用できるようにする力」である。

 データサイエンティスト、AIエンジニアそれぞれで、この3つのスキルの習得具合に強弱はある。AIエンジニアであれば、「データエンジニアリングをベースとして、ビジネスやデータサイエンスの課題を解決できる人材」ということだ。

 もちろん、1人でこれらすべてをカバーするのは難しいため、「組織としてこの3つをカバーできればいい」というのが安部氏の意見だ。一点注意すべきなのは、データサイエンスはデータサイエンス、エンジニアリングはエンジニアリング、ビジネスはビジネスというように、それぞれが専門に特化してしまい、お互いを理解し合わない体制ができてしまうことだ。そうなると、なかなかデータ活用が進まなくなる。「無理解の壁をなくすことが大事」と安部氏は指摘する。

 補完し合えるチーム編成ができると、どういうことが可能になるか。例えば、AIエンジニアがビジネスの知識を獲得すると、ビジネス上の課題を実装により解決できるようになる。その一方で、データ活用の根拠が弱いため、データサイエンスを得意とする人が手助けすればいい。また、データサイエンスとデータエンジニアリングのスキルがあれば、データ活用についてはデータ活用の根拠に対する理解が深く、実装もできる。しかしビジネス課題の設定・理解は弱いため、ビジネスサイドの人たちと協力することでデータ活用ができるようになる。

3つのスキルがあれば無敵・最強のチームができる
3つのスキルがあれば無敵・最強のチームができる

データサイエンティスト、AIエンジニアの生存戦略

 では、これからデータサイエンティスト、AIエンジニアとして生き残っていくためにはどうすればいいのだろうか。エンジニアリングのスキルを得意とするAIエンジニアの場合は、それを核に「ビジネスもしくはデータサイエンスいずれかの専門性を身につけること」と安部氏。そして残りの2つのスキルのいずれかの選択においては、自分および一緒に仕事を進めるパートナーが持っているスキルを把握し、それを補完するようなスキルを見極めることが重要になる。安部氏は「そうすることで市場価値を高めていくことができる」と力強く語る。

 また現在、Webアプリ開発など、AIやデータサイエンスに携わっていないエンジニアが、AIエンジニアに転身することはできるのか。高坂氏は「PHPなどでアプリ開発をしていた40歳前後のエンジニアが、AI系職種に未経験で転職した成功事例がある」と話す。自分が持っているスキルをきちんと把握し、足りないスキルについては「これから学んでいく」というチャレンジ精神が買われたとのことだ。

 安部氏も、「データ活用の場面では、エンジニアリング力は非常に重要になるので、すでにそれを身につけていることはすでに大きなポイントになる。その上で大事になるのは、他の2つのスキル領域に対して排他的にならないこと」と語る。

 現在、数多く求められているAIエンジニアやデータサイエンティストだが、今後の需要についてはどう予測しているのか。「データ活用、AI活用はバブル的な匂いを感じる人もいるが、それらの成功事例ができるとその分野においては当たり前となる。そういう世界観ができると、データサイエンティスト、AI人材はこれからも求められていく。そのためにも、今、優れた人がこの業界に入ってきてほしい。そして、どんどん良い事例を作り、AI人材、データサイエンス人材の需要を伸ばしていってほしい。今が正念場なので」と安部氏は熱く語りかけた。

 AI活用がこれからどうなっていくか、「本当のところはわからない」と両氏。だが、AIやデータサイエンスに関する知識を習得していることは損にはならないという。

 「今日1日で終わるのではなく、AIやデータサイエンスに関する情報収集をするといった次の行動がキャリアを変える一歩になるはずだ」高坂氏は最後にこう会場に呼びかけ、セッションを締めくくった。

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著者プロフィール

  • CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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