XAMPPの用意
Slimを使ったコーディング方法は次回以降、順次紹介していくので、今回はそのための準備として、Slimが動く環境を用意していきましょう。ここでは、まずPHPそのものが動作する環境を用意します。
XAMPPとは
本連載の読者は、すでになんらかのPHP開発を行っている人がほとんどだと思います。これまでのPHP開発で使ってきた動作環境をそのまま利用してもらってもかまいませんが、本連載ではXAMPPを利用することにします。
XAMPPは、ご存じの方も多いと思いますが、PHP開発に必要な「Apache+MariaDB+PHP」をまとめてワンパッケージにしたアプリケーションです。もともとは、Apache+MySQL+PHPでしたが、データベース部分が、2015年10月以降、MySQLの互換DBであるMariaDBに変わっています。
XAMPPのダウンロード
では、早速XAMPPをインストールしていきます。まずはダウンロードです。XAMPPのダウンロードページにアクセスしてください。「Windows向け」、「Linux向け」、「OS X向け」(Mac版)と、各OS向けのXAMPPがダウンロードできるようになっています。
該当OSの7.2系列(本稿執筆時点では7.2.9)のダウンロードボタンをクリックし、ダウンロードします。ただし、Mac版は注意してください。「XAMPP-VM / PHP 7.2.9」ではなく、単なる「7.2.9 / PHP 7.2.9」(バージョン番号は原稿執筆時点での番号)をダウンロードするようにしてください。「XAMPP-VM」は仮想環境を利用したXAMPPなので、学習には向きません。
[Note]Linux版のXAMPPは不要?
XAMPPにはLinux版がありますが、LinuxはOSの標準パッケージをインストールすれば、ApachもMySQLもPHPも含まれています。もし含まれていなくても、yumやapt-getなどのコマンドですぐに追加が可能です。そのため、別途XAMPPをインストールするよりは、そちらの環境を利用した方がよいでしょう。
Windows版のインストール
Windowsへのインストールは、ダウンロードしたインストーラを起動して、基本はウィザードの指示に従っていけば完了します。
途中、図3のアンチウイルスソフトに関する警告が表示されることがあります。この場合は、[Yes]をクリックして次に進んでください。
また、図4のように「C:\Program Files (x86)」へのインストールは避けるよう警告ダイアログが表示されることもあります。この場合も、[OK]をクリックして次に進んでください。
インストールが完了すると、図5のXAMPP Control Panelが起動します。XAMPP Control Panelでは、ApacheやMariaDB(MySQL)といったサーバソフトウェアの起動や終了、設定などの管理を行えます。このXAMPP Control Panelはスタートメニューの[XAMPP]の中にショートカットが格納されているので、そこからいつでも起動できます。
Mac版のインストール
ダウンロードしたファイルはdmgファイルとなっているので、ダブルクリックして展開してください。展開されると、中に「XAMPP.app」という名前のインストーラがあるので、それをダブルクリックで起動します。あとは、ウィザードに従ってインストールを完了します。
完了すると、図6のApplication Managerが起動します。このApplication ManagaerはWindows版のXAMPP Control Panelと同じ働きをします。LaunchpadのXAMPP(その他)の中にエイリアスが格納されているので、そこからいつでも起動できます。
Apacheの起動確認
インストールが終了したら、Apacheの起動確認を行っておきましょう。Windows環境では、XAMPP Control PanelからApache欄の[Start]ボタンをクリックしてください。図7のように「Apache」と表示された背景色が緑色に変化したら起動成功です。
Mac環境では、Application Managaerの[Manage Servers]タブから[Apache Web Server]を選択した状態で、[Start]ボタンをクリックしてください。図8のように「Apache Web Server」と表示された横のアイコンが緑色に変化したら起動成功です。
最後にブラウザからhttp://localhost/にアクセスしてください。図9の画面になっていれば起動しています。
XAMPPでのドキュメントルート
この節の最後に、XAMPPでのApacheのドキュメントルートを確認しておきましょう。
XAMPPのインストールフォルダは、Windowsの場合は「C:\xampp」、Macの場合は「/Application/XAMPP」です。いずれの環境でも、その中に「htdocs」というフォルダがあります。これが、ドキュメントルートとなります。そのため、今後このフォルダ内に本連載で作成するサンプルコードを記述していくことになります。
Composerの利用
PHPの実行環境が整ったところで、最後にComposerを導入しておきましょう。
Composerとは
PHPのシステム開発で、フレームワークやライブラリを使用する場合、よくある方法は、そのフレームワークやライブラリのサイトから必要ファイルをダウンロードし、マニュアルに記述された方法でファイルを配置していく、というものです。
この方法の場合、利用するライブラリが多くなっていくと管理が面倒になります。さらに、ライブラリが別のライブラリを内部で利用していると、場合によってはその別のライブラリもダウンロードして配置しないといけません。依存関係の解決と呼ばれるものです。また、ライブラリのバージョンが上がった場合、新しいバージョンをダウンロードして置き換える必要もでてきます。
こういった問題を解決するために、PHPではComposerというツールが利用されています。ComposerのTOPページには「Dependency Manager for PHP」という表記があり、PHPの依存関係管理ツールとうたっています。あるいは、一般的にはこういうツールのことをパッケージ管理ツールと言ったりもします。
Slimを導入する場合もこのComposerを利用します。実際、Slimのサイトにはダウンロードのページが存在せず、インストールの解説ページにはComposerでのインストールの方法が書かれています。
WindowsへのComposerのインストール
では、実際にComposerをインストールしていきましょう。まずは、Windows版です。WindowsへのインストールはComposerのサイトのこちらのページに書かれています。このページにも記載がありますが、Windowsでは、Composer-Setup.exeをダウンロードします(こちらリンクをクリックするとすぐにexeファイルのダウンロードが開始されます)。
ダウンロードが完了したら、ダウンロードしたインストーラファイルをダブルクリックし、ウィザードの指示に従ってインストールしていきます。このインストーラは、Composer本体をインストールした上で、そのComposerがコマンドプロンプトから利用できるようには環境変数PATHへの追記を行ってくれます。
インストールが無事終了したら、コマンドプロンプトを起動して、以下のコマンドを実行してください。
composer -V
以下のようにバージョン番号が表示されたら無事インストールが完了しています(バージョン番号は原稿執筆時点での最新です)。
Composer version 1.7.2 2018-08-16 16:57:12
macOSへのComposerのインストール
macOSへのComposerのインストールは、Linux/UNIXと同様にコマンドを実行することでインストールできます。その方法は、Composerのサイトのこちらのページに書かれています。ただ、Macでは違う方法をとります。
Macには、コマンドから利用できるさまざまなソフトウェアを一括管理してくれるパッケージ管理ツールHomebrewというのがあります。HomebrewをOSにインストールしておくだけで、あとは、Homebrewのコマンドを使ってさまざまなソフトウェアをインストール、アップデート、削除できます。実は、先にXAMPPを使って環境構築を行ったApache+MySQL(MariaDB)+PHPの環境は、Homebrewを使っても行えます。本連載ではXAMPPの方が楽なのでそちらを利用しますが、他にも、PostgreSQLやSQLiteといったデータベース、Pythonなどのプログラミング言語環境なども簡単に構築できます。また、コマンドで利用するソフトウェアのうち、wgetなどのLinuxでは当たり前に含まれているがmacOSには含まれていないものもインストールできます。
ここでのメインテーマである、ComposerもこのHomebrewでインストールできます。まずこのHomebrewをインストールします。これは、ターミナルを起動し、以下のコマンドをコピー&ペーストして実行してください。
/usr/bin/ruby -e "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/master/install)"
インストールが無事終了したら、以下のコマンドを実行してください。
brew -v
以下のようにバージョン番号が表示されたら無事インストールが完了しています(バージョン番号は原稿執筆時点での最新です)。
Homebrew 1.7.4 Homebrew/homebrew-core (git revision 29c4cf; last commit 2018-09-17)
Homebrewのインストールが終了したら、今度はこのHomebrewのコマンドを利用してComposerをインストールします。これには以下のコマンドを実行します。
brew install composer
インストールが完了したら、Windowsと同じように以下のコマンドを実行してください。
composer -V
Windows版と同じ実行結果が表示されたらインストール完了です。
まとめ
今回は、概要と環境構築のみで、Slimの具体的なことは何も紹介していません。それは次回以降少しずつ紹介していきます。
次回は、Slimを使った初めてのプログラムを作成し、表示させます。その際、ここで導入したComposerのコマンドを使って、Slimのパッケージを自動配置させます。その方法および、配置させたSlimの使い方、表示させる動作原理などを解説していきます。