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「EuroSTAR 2018」レポート

ビッグデータ、マイクロサービスにおけるテストの変化とは【EuroSTAR 2018】

「EuroSTAR 2018」レポート 第2回

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 ヨーロッパ最大規模のソフトウェアテストカンファレンス「EuroSTAR Conference 2018」がオランダのハーグで開催されました。初日は、テストや品質に対する概念レベルのチュートリアルが中心でしたが、2日目からは45分ほどのプレゼンテーションが続いていきます。

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 まず、ご紹介するのは金融系業務支援をしているMurex社のRobert Lynch氏による「Developing Dashboard Analytics for Performance Testing and Development」です。

パフォーマンステストと開発のためのダッシュボード

 本セッションのスピーカーであるRobert Lynch氏は、パフォーマンステストマネージャーを14年務めています。Splunk開発者としては4年間の経験を持っており、現在はSplunkを利用した開発、管理、および大手金融機関における大規模性能テストを担当しています。Murex社は過去に利用していた別のツールが性能テスト分析には不十分だったため、2014年にSplunkを自社に導入することを決断しました(執筆担当:岡本明)。

 言うまでもなく、金融系ソフトウェアの性能テストは、非常に複雑で困難です。Murex社では銀行、アセット・マネージャー(資産運用担当者)、一般企業、公益企業にわたる、何千もの利用者の皆様に対して、資本市場におけるさまざまな金融商品の業務支援ソリューションを提供しています。そのため、多くのユーザがアクセスしても耐えられる可用性を担保する必要があり、そのためのパフォーマンステストが求められています。

 Splunkは、あらゆる種類のログ、テキスト、数値データをリアルタイムでインデックス化し、シンプル&スピーディ&フレキシブルに「検索」「分析」「可視化」にするソフトウェアを提供する会社です。これら機能を活用することで、IT運用とビジネスの両方にメリットをもたらし、新しいレベルのインテリジェンスを創造しています。その中で、今回は性能テストの結果分析にフォーカスしたMurex社アイルランドでのSplunk活用事例を紹介してくれました。

 氏は、Murex社から出力されるさまざまなログを、Splunkによって収集・分析させ、GC(ガーベージコレクション)、TPS(トランザクション処理速度)、DBレコード数、CPUやネットワークなどをレポートとして可視化することにより、データの価値を高めようとしました。

 例えば、表でまとめるだけでは見えてこない問題の側面を、グラフ化することによって、はっきりと特定できる場合があります。下記のグラフは、長時間をかけてMurexシステムに一定の処理負荷をかけた時に出力されたログをSplunkに取り込み、TPS(縦軸)と時間の経過(横軸)でまとめたものです。このグラフからは、時間が過ぎるにつれてTPSが上昇傾向である(つまり、処理時間がかかっている)ことが分かります。

 Splunkを導入する前は、自社で開発したツールを使用していたそうですが、ログを可視化するのが遅かったり、可視化の断面や粒度を切り替えることが柔軟にできなかったりしたため、一部の専門家の限定的な利用にとどまっていました。

 しかし、Splunkを導入することにより、すばやい可視化が可能となり、専門家でなくても、簡単にビューを切り替えたり、詳細ビューや俯瞰ビューを行き来できたり、Murex社では多くのテスターや開発者が利用するようになりました。

 氏によると、Splunkを導入したことにより得られた効果は下記の4つです。

  1. 数百万のTPSを迅速に分析が可能となった(100万件が10秒で可視化)
  2. 新しいシステムのログも迅速に取り込むことが可能となった(コマンドラインで別システムと連携可能)
  3. TPSだけでなく、他のグラフ(GCやCPU)も並べて表示し、相関関係から傾向を可視化してみることが可能となった
  4. SPLUNK_IDを使用すれば、自分のログデータの断面やビューなどを他のメンバーに簡単に共有できるようになった

 SPLUNK_IDは特に重要なポイントだと氏は語ります。自分が調査したあるデータの断面(仮に11月2日時点)で可視化分析し、ビューで性能的な問題を発見し、すばやく他のテスターや開発者にも情報を共有したい場合、このビューに名前(Test Data@Timeで命名)をつけて、URLのようにアクセスできる参照キーを発行することが可能です。これにより同キーを教えるだけで同じビューを誰でもみることができるようになります。

 今回紹介されたSplunk事例は、現在Murex社アイルランド拠点でしか導入されていないシステムです。しかし今後は、海外にもグローバル分析基盤として展開し、さらに利用者を増やし、効果を創出していこうとしています。

 パフォーマンステスト分析のためにSplunkを導入している企業はまだ少ないかもしれませんが、Murex社のように今後導入する会社は増加するかもしれません。このセッションでは、Splunkを使ったパフォーマンステストの結果分析事例でしたが、たくさんのデータを活用したプロダクト改善は、さまざまな領域に応用できそうです。

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EuroSTAR 2018レポートチーム(ユーロスター2018レポートチーム)

岡本 明 アクセンチュア株式会社 テクノロジーコンサルティング本部 シニアマネージャー 千葉真弓 アクセンチュア株式会社 テクノロジーコンサルティング本部 シニアマネージャー 藤原 史和 楽天株式会社 サービス品質保証グループ マネージャー 米山 允章 株式会社メルカリ QAエンジニア 藤原...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/11226 2018/12/03 14:00

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