テスターの生産性を劇的に向上する方法TQED
どうやってテストすればよいか? どうやって良いテストを設計すればいいのか? これらを学べる機会はそう多くはありません。なぜならば、それぞれのプロジェクトは、まったく異なったコンテキストで運営されていたり、製品もそれぞれ違うコンセプトで作られていたりするからです。
さまざまな製品やプロジェクトにおいて、問題を正しくモデリングできて、シンプルで容易に理解でき、柔軟性があって、さらにアイデアを与えてくれる……。そんな夢のようなモデルがあれば、みなさん使ってみたいと思いませんか? この「Increasing the tester's creativity」というセッションでは、一つの答えとしてTQEDというテスト設計技法を紹介しています。
講演者のAdam Roman氏は、ポーランドのJagiellonian大学コンピュータ科学研究所の離散数学部門でアシスタント・プロフェッサーとして教鞭をとられており、ソフトウェア品質保証、機械学習とAI、理論計算科学を専門とされています。
TQEDモデル
TQEDモデルはとてもシンプルな構成です。
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ステップ1:テスト対象を次の4つの要素に分解して考えます。それは、時間(Time)、量(Quantity)、イベント(Event)そしてデータ(Data)です。
- 時間: 平均的な利用時間、長くかかった場合、すばやく利用した場合など
- 量:平均値、最大値、境界値など
- イベント:変数の作成、メソッドの呼び出し、ボタンの押下、ファイルの名前の変更など
- データ:入力データ、ブラウザのクッキー、ファイル名など
- ステップ2:ステップ1で出てきた要素を組み合わせて、どうやってテストするかを考えます。
TQEDモデルの実践
簡単なチケット自動販売機を考えます。この販売機は下記のようなユーザインターフェースを備えているものとします。
5セント硬貨、10セント硬貨、25セント硬貨、1ドル札、2ドル札、5ドル札を入れる口があり、通常チケット選択、安売りチケット選択、そしてキャンセルと購入ができます。TQEDモデルに従うと次のように分析できます。
ステップ1: 要素に分解
上記のように、要素に分解していきます。
- 量:購入できる最小値、最大値、そしてその境界値など
- イベント:ボタンを押す、変更する、硬貨/紙幣を入れる、チケットを印刷する、電源をオン/オフする、キャンセルするなど
- データ:マシン内のチケット数、合計金額、 有効な硬貨/紙幣、無効な硬貨/紙幣など
- 時間:平均的な購入時間、購入に長くかかった場合、すばやく購入した場合など
ステップ2: 要素を組み合わせる
次に、整理した要素を組み合わせていきます。
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データ:硬貨の種類×量=境界値
- 5セント硬貨だけでチケットを買ってみる
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量:境界値×データ=合計金額
- チケットを買える最大で考えてみる
- さらに1.+2.を組み合わせてみる:チケットを買える最大金額に対して全部5セント硬貨で購入してマシンは壊れないかなど
モデルは、要素を組み合わせて、それらをまとめるというステップをとります。これはとても汎用的でありシンプルですが、効果的なアプローチです。
TQEDは強力なフレームワークであり、テスト設計においてテスターの生産性を劇的に高めます。しかし、そもそもテスターに分析能力がなければ、いくらフレームワークが優秀でも効果は期待できません。いうまでもなく、フレームワークはただのツールであり、分析をするのは私たちです。
このフレームワークは、『Thinking-Driven Testing』という書籍でも詳しく解説されています。また、チュートリアル資料はこちらで公開されています。