解説「プランニングポーカー」

今回の解説は和田塚が担当します。
見積もりは経験を積んでも簡単な仕事ではなさそうですね。無理難題に見えるタスクにも、メンバーの多様なスキルや知識を使わない手はなさそうです。だってわれわれはチームなんですから。一人で抱え込みすぎる必要はないんです。
御涼さんを助けたくて、ネット上を徘徊していたら、研修や準備がほとんど必要なくチームで仕事のボリュームを見積もれるプラクティスを発見したんです。
今回はチームの総力で仕事の量を見立て、見積もっていくプラクティスを紹介しますね。
なぜチームで見積もるの?
以下の目的で実施しましょう。
情報収集
- チームで開発要素を議論することで情報が集まり、懸念点の見落とし防止とリスク回避ができる
チームで見立てる
- 上司や上流SEなど他の誰かや、メンバー個々の判断ではなく、チームメンバー自身で現場の情報を使い定量的に見立てる
成長・育成
- プロジェクトの背景やコツ、経験値を若手や新メンバーに共有しスキルアップする
- 場の醸成で相互理解と自分事感を高められる
パフォーマンスアップ
- 切磋琢磨するチームとなるように、練度を上げてあいまいさを減らす
- 多様性のあるメンバーとともにチーム力を底上げして成果を出す
見積もりを通して、背景やリスクを共有したり、各々が保有している特性やスキルを把握したり、過去の経験をお互いが認識したりすることで、コミュニケーションが闊達になります。「見積もった結果の数値」よりも、「見積もる活動」を通して多様なメンバーとともにチームのパフォーマンスを上げていくことが重要なのです。
プラクティス実施手順

今回はトランプ型のゲーム形式でコミュニケーションの量を増加させ、楽しみながらチームで仕事の量を見立て、見積もりを実施する「プランニングポーカー」を使いましょう。
プランニングポーカーは、アジャイルマニフェストを作った一人、Jemes Grenning氏が考えたプラクティスです。長期間の研修を事前に受けなくても、また経験が少ないメンバーでも、誰もがすぐに見積もれます。
プランニングポーカーとは
プランニングポーカーは、以下の特徴を持っています。
規模の見積もり
- プロダクトバックログの規模の見立て、見積もりを、チームのメンバーで責任をもってやる
フィボナッチ数列で相対見積もり
- 1, 2, 3, 5, 8, 13がフィボナッチ数列(最初の2項が1、それ以降の項はすべて直前の2項の和でできる数列)の数値。精緻な絶対値ではなく相対値で見積もる
トランプの比喩でゲーム感覚
- トランプのカードを使って個人の意見を表明しあい、楽しくコミュニケーションしながら実施
メンバーの多様性と異なる意見が貴重
- 異なる見解や意見の相違を確認しながら話すことで、固定概念や盲点をなくし、リスクを回避できる
メンバーの特性や価値観など露出
- 過去の体験の話からメンバーの価値観も垣間見える
事前準備
事前に、以下の準備を整えておきましょう。
- どの期間の見積もりをするか決定
- プロダクトオーナー(もしくは完成状態をイメージできる人)とチームメンバーに実施の声がけ
- スケジュールの確保(1週間分のタスクであれば60分プラスアルファ)
- 場所の確保(ワイワイ話しても大丈夫なスペース)
また、以下の部材を用意すると良いでしょう。
- トランプ(メンバーひとりが1種類の絵札(スート)を利用)
- 付箋紙の束
- サインペン
- タイマー
当日の流れ
1. オープニング(5分)
スキルやプロジェクトの経験年数の差により萎縮してしまうメンバーがいるかもしれません。周りに影響されることなく正直に発言することを促しましょう。ファシリテーションの例として、ちひろのセリフを参考にしてみてください。
また、精緻に見積もろうとすれば、いくら時間があっても足りないでしょう。相対的な規模を簡潔に見積もりましょう。

「精緻に見積もるのではなく相対的な規模感を見立て、タイムボックスを重視して、簡潔にワイワイガヤガヤと楽しく正直に見積もりましょうね」
2. 準備(5分)
準備は下記の2つとなります。

メンバーにトランプの1種類の絵札(スート)を配り、その中から各自A, 2, 3, 5, 8, Kを取り出す。使うのはこの6つの数値です。

適度な小ささで基準となるバックログアイテムを決定し、その数値を2と設定する。

「相対見積もりのために基準値を2にしますね。全員が見積もりをイメージしやすくて、小さすぎず大きすぎない規模のバックログアイテムを選んでください」
3. 実施(60分前後)
プランニングポーカーのゲームの手順は以下の通りになります。

プロダクトオーナーが対象のバックログアイテムを説明する

「プロダクトオーナーからバックログアイテムで実現したいことを話してください」

プロダクトオーナーはメンバーからの質問に答える

「皆さんは開発に着手できますか? 不明な要素や確認したいことはありませんか?」

チームメンバーは基準となる2の見積もりを鑑みて、対象のバックログアイテムの規模感を、各自カードから選ぶ

「皆さんは規模感を見積もって、カードを裏返しにしたままテーブルに出してください」

選んだカードを一斉にオープンする

「では皆さん一斉に表にしてください」
※全員のカードの数値が異なった場合は手順5に移動、完全一致の場合は手順9に移動します。

一番大きい数値、一番小さい数値を出したメンバーの見解と根拠を聞く

「カードの一番大きい数値の方は見解や理由を発言してください。次に一番小さい数値の方ね」

懸念点などをチームで話し合う

「他のメンバーはどうですか? どんな見解や懸念がありますか? またプロダクトオーナーはどうお考えですか?」

各自カードを手札に戻し、選び直して一斉にオープンする

「皆さん、テーブルに出したカードを手札に戻してください。再度選び直して出しましょう。一斉にオープンしますよ~」

手札に戻して、手順3~6を最大3回まで繰り返し、それでも決まらなかったら大多数の意見を採用する

「ダラダラと議論をしても効果が薄いので繰り返しは3回までです。タイムボックスを大事にしましょう」

バックログアイテムに見積もり値を記載する

「大多数の意見で数値は決定といたします。バックログアイテムに数値を記載してください」

手順1に戻り次のバックログアイテムに移動

「では次のバックログアイテムに移動しましょう」
4.クロージング(5分)
最後はクロージングです。初めてプランニングポーカーを実施するのであれば回数を重ねていくことで、文脈が通じ合ったりスキルが上昇することを強調しましょう。
また、見積もり値が記載されたバックログアイテムの一覧を、メンバーが見えるところに張り出しておきましょう。

「さまざまな懸念点が露出し、方向性も決まり、多くのことがクリアになりました。個々の判断ではなくチームの見立てで定量的に表現できました。このバックログの見積もり結果一覧を、目に見えるところに張り出しましょう」
