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【デブサミ2020】セッションレポート (AD)

アクティブユーザー数が、対前年比で95%増加――利用促進の秘訣は「ゲーム」にあり【デブサミ2020】

【13-E-7】クラウドサービスとゲーミフィケーション:「TwilioQuest 3」を用いた開発者オンボーディング

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 クラウドサービスにおいては、新たなユーザーの獲得だけではなく、ユーザーの定着率や製品利用率を向上させることが成功の鍵を握る。クラウドコミュニケーションプラットフォームを提供するTwilioでは、開発者向けサービスのオンボーディングを促進するため、ゲームを遊ぶように製品の利用方法を学べる「TwilioQuest」を提供している。デベロッパーエバンジェリストの池原大然氏は、最新バージョンである「TwilioQuest 3」を例に、ゲーミフィケーションを活用してサービスを浸透させる意義について解説した。

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Twilio Japan合同会社 デベロッパーエバンジェリスト 池原 大然氏
Twilio Japan合同会社 デベロッパーエバンジェリスト 池原大然氏

ゲーミフィケーションを活用し、サービスの利用を促す

 「うちのサービス(製品)のユーザーは、 ◯◯の基本的な知識を持っていることを想定している。だから一般常識として、△△は理解しているはずだ」

 こういった発言を耳にした経験のある方は少なくないだろう。もちろん、全体的なユーザーのうち一部の層は、そうした知識を有している。だが当然ながら、そうではないユーザーも存在している。サービスをより多くのユーザーへと普及させていくには、「自社サービスに関連する知識が薄い方々へ、いかにリーチするか」を考えなければならない。クラウドコミュニケーションプラットフォームを提供するTwilioも、その課題に直面したという。

 さらに、認知拡大だけではなく「どのようにして、ユーザーにサービスを利用継続してもらうか」という課題もある。Twilioの提供するサービスは、サブスクリプションモデルではない。利用量に応じて課金するpay‐as‐you‐goモデルだ。ユーザーがサービスを使い続けてくれなければ、企業として収益を上げられない。

 Twilioが提供するサービスの種類は相当に多く、各サービスのドキュメントもコストをかけて整備している。ユーザーにそれらの情報へとリーチしてもらうには、いかなる施策が有効なのだろうか。その鍵が「ゲーミフィケーション」なのだという。

 「私たちが活用してきたのは、『TwilioQuest 3』というアプリです。ダウンロードして、クライアントマシン上で動かすことができます。このアプリではゲームを通じて、Twilioが提供する各サービスの使い方を学ぶことが可能です。

 プレイヤーはマップ上を移動しながら、さまざまなチュートリアルに挑戦していきます。課題をどうやって解けばいいかは、ヘルプページに書かれています。これは、前述の各サービスのドキュメントの内容を、ゲームシナリオの一部として使っているものです」(池原氏)

「TwilioQuest 3」のプレイ画面。ドット絵で描かれた世界観のなかで、プレイヤーはTwilioが提供するサービスの仕様を学んでいく。
「TwilioQuest 3」のプレイ画面。ドット絵で描かれた世界観のなかで、プレイヤーはTwilioが提供するサービスの仕様を学んでいく。

 プレイヤーは「TwilioQuest 3」の各チュートリアルをクリアすると、経験値やアイテムが手に入る。キャラクターの成長をモチベーションとして、学習を進められるのだ。つまり、利用促進のためにゲーミフィケーションが有効活用されている。

 「TwilioQuest 3」はローカルアプリとして提供されている。一方で、前バージョンである「TwilioQuest 2」はWebアプリだという。この差異の目的は、ユーザーの開発環境の統一にある。

 Webアプリの場合、ユーザーごとに使用する開発環境が異なる。「TwilioQuest 2」の時代には、環境起因でゲームを進められないユーザーが一定数いたそうだ。そのため、コードエディタや関連ツールなどがあらかじめ用意されている共通の開発環境を提供するために、ローカルアプリへと方向転換を行ったのだ。

「TwilioQuest 3」がもたらした3つの効果

「TwilioQuest 3」のアーキテクチャ構成。大きく分けて右側がサーバーサイド、左側がクライアントサイドである。
「TwilioQuest 3」のアーキテクチャ構成。大きく分けて右側がサーバーサイド、左側がクライアントサイドである。

 上図は「TwilioQuest 3」のアーキテクチャ構成だ。右側に記載されているFirebase・GCPの環境には、サーバー側のアプリが配置されている。ゲームの最新のコンテンツ情報が格納されているのは、この環境である。

 左側に記載されているのは、ローカル環境で動かすクライアントアプリだ。このアプリは起動後にサーバーサイドとの通信を行い、チェックサムを確認して最新のデータを取得。そして、ダウンロード後のコンテンツを実行する。コンテンツはHTML・CSSベースで作成されており、内容の切り替えも容易だ。使用されている要素技術としては、以下が挙げられる。

  • Electron: Web技術を用いて、クロスプラットフォームで動作するデスクトップアプリを開発するためのフレームワーク。
  • React:UI構築のためのJavaScriptライブラリ。
  • Phaser:ブラウザ上で動作する2Dゲームを開発するためのフレームワーク。
  • Tiled:オープンソースのマップ(地図)エディタ。

 「ここからは、『TwilioQuest 3』の導入によってどのような効果がもたらされたのかを、3つの視点で解説していきます」(池原氏)

1.導入の効果:アクティブユーザー数

 前バージョンである「TwilioQuest 2」と比較すると、リリース後のアクティブユーザー数(その月の一定期間にアプリを立ち上げたユーザー数)は対前年比で95%も増加したという。「TwilioQuest 2」と「TwilioQuest 3」では、中身のチュートリアルはそれほど変わっていない。つまり、アプリの使い勝手やインターフェースの改善そのものが、新規ユーザーの獲得および利用継続率の向上に寄与している。

2.導入の効果:コンテンツの消費数

 次の観点として、コンテンツの消費数(1人のユーザーが消費するチュートリアルの数)を池原氏は挙げる。2018年を100とすると、2019年は235だ。つまり、135%も増加したという結果が出ている。驚異的な伸び率である。いかにゲーミフィケーションが、ユーザーのリテンションおよび製品理解の向上に結びついているかがわかる。

3.導入の効果:セールスパイプライン

 3つ目の観点として、「TwilioQuest 3」がサービスのセールスにもたらした恩恵について解説していく。Twilioは世界各地で行われる開発者向けイベントで、「TwilioQuest 3」を紹介している。今回の「Developers Summit 2020」もその一例である。また、「TwilioQuest 3」を主体としたイベントを自発的に開催することもある。

 「詳細な数値はセッション内では話せないものの」と前置きしたうえで「『TwilioQuest 3』がきっかけとなり、セールスパイプラインにポジティブな影響が生まれました。売り上げにつながる案件の数はかなり増えています」と池原氏は述べた。

 最後に池原氏は、「TwilioQuest 3」が現在抱えている課題や、今後の改善すべき点についても解説し、セッションを終了した。サービスを開発・運営する者にとって「いかにして、より多くのユーザーにサービスを利用してもらうか。そして、使い続けてもらうか」は普遍的な課題である。その1つの解として「ゲーム要素を取り入れる」という手法を、私たちは有効活用していくべきなのかもしれない。

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