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【デブサミ2020】セッションレポート (AD)

AI礼賛時代に異議あり! 少量データでリアルタイム学習を高精度に実現するリザーバコンピューティングとは?【デブサミ2020】

【13-F-7】少量データで軽量な機械学習の手法について 

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AIは本当に万能か?

 機械学習といえば「ビッグデータを集めて、データを整理した上で、モデルを作る」のが今の主流であり、2030年には国内のAI市場は2兆円を超えるともいわれるほどである。しかし、AI関連の実証実験を行ってみると、だいたい以下のような壁にぶつかる、と秋吉氏は指摘する。

量の問題

  • データが整備されていない
  • データが足りない
  • データはこれから
  • ビッグデータがあるつもり(でも使えない)

質の問題

  • データクレンジング…ノイズまみれ
  • データの偏り…AとBのクラスは十分だが、 Cのデータが不足している

 「各社が描く図は、だいたい同じ。IoT端末やセンサ・フュージョン、アプリのデータなど、さまざまなデータをデータプラットフォームに集約して、解析した結果から新たな価値を生み出そうというものだ。しかし、目的となるデータは本当にビッグデータの中にあるのだろうか。ユースケースがかなり絞られている懸念もある。

 加えて、特徴量から個別に設計された特化型モデル以外では、AIが実用化されている領域は、画像認識や音声認識に限られている。GAFAが得意とし、大規模なモデルを作って全人類に仕組みを適用する、ハイカロリーなことを考えているのであればいいが、普通の企業が手を出すには、いささか無理があるのではないか」と秋吉氏は疑問を呈する。

ビッグデータや既存のコンピューティングで踏み込めない領域がある
ビッグデータや既存のコンピューティングで踏み込めない領域がある

 ここで秋吉氏は、X軸に「バッチ処理」と「リアルタイム」Y軸に「ビッグデータ」と「パーソナル/少数データ」を取った4象限マトリックスを示した。「左下の『深層学習』の領域は、GAFAがやっているところ。左上の『旧来特化型システム中心』の領域は、各現場でどうにか対応されてきたところではないでしょうか。では、右上の『少数データ×リアルタイム学習』の領域に、何か大きなプロダクトはあるでしょうか? 今のAIブームの話題では登場してこなかったところです」。

 では、まだプレイヤーがほとんどいない「少数データ×リアルタイム学習」の領域では、どういったユースケースが考えられるだろうか。秋吉氏は、次のような例を挙げた。

個人に合わせる必要がある分野

  • ヘルスケア機器
  • 会議議事録システム

環境に合わせる必要がある分野

  • 環境変化やセンサ劣化が発生する製造分野での異常検知
  • 判断したいものが変わる分野
  • トレンドや環境変化を伴う予測(回帰)

 「こうしたキャリブレーションが必要になる領域を、従来型の深層学習で解決しようとすると思い悩むことになるが、リザーバコンピューティングを活用した時系列処理技術であれば、一定のノウハウは必要としながらも、ソフトウェアで簡単に実装することができる。非常に軽量なので、パーソナルヘルスケア機器やAIスピーカー、スマートフォンやRaspberry Piのようなマイコンにも組み込むことが可能だ」と述べる。

リザーバコンピューティングが優位性を発揮する分野とは

 QuantumCoreが得意とするのは、自然現象や物体伝達など複雑な時系列問題だ。例えば、振動を分析する際に、「空中を経由する波形」「表層を経由する波形」「物体を経由する波形」は干渉物によって異なるが、センサから出力されるデータはすべてまとまってしまう。しかし、QuantumCoreの技術を使えば、前処理・リザーバ・判定器の組み合わせによって、リザーバレイヤーを小さく保つことができ、高速な特徴抽出処理が可能となる。

 この技術を活用したのが、「Qoreシリーズ」だ。マイコンへ組み込むための「EdgeQore」と、WebAPI動作のクラウド「WebQore」が提供されており、動作プラットフォームを問わずに活用できる。また、個人での試用も受け付けているそうだ。

 「Qoreシリーズ」は、波形データや画像から変換した波形データで、スマートウォッチの加速度データを用いた泳法判定や、振動センサを用いた寝姿勢判定など、幅広く活用することができる。波形データ以外にも深層学習との組み合わせでモーション判定することも可能だ。

 現在、さまざまな業界で累計14社とPoCを行っている同社。異常値が少ない工業分野や、プライバシー保護の観点から入力ソースが限られるヘルスケア分野などにおいて、好成績を収めているのだという。

取り組みの成果
取り組みの成果

 また、ロボットアームの物理現象シミュレーションを深層学習とリザーバコンピューティングで比較したところ、同様の結果が得られたと秋吉氏は述べた。しかし、その処理時間には大きな差が出た。AWSマイクロインスタンスを活用したWebQoreが0.5秒で完了したのに対し、ローカルPCでLSTMでは4時間の処理時間を要したのだ。

 最後に、秋吉氏は「リザーバコンピューティングの深層学習に対する利点は、キャリブレーションし続けるユースケースにある。社会実装においては、リザーバコンピューティングそのものの周知が必要であるため、今後もさらなる啓蒙活動に取り組んでいきたい」と語り、講演を締めくくった。

お問い合わせ

 株式会社QuantumCore

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