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プロダクトマネジメントの基本を学ぼう

そもそも、プロダクトマネージャーが成功させるべき「プロダクト」とは何か?

プロダクトマネジメントの基本を学ぼう 第3回

「プロダクト」と「プロジェクト」の違いは?

 「プロダクト」と「プロジェクト」もよく間違えられるので、違いを明確にしておこう。

 日本においては、プロジェクトマネージャーという職種の認知が進んでいることもあり、プロジェクトとプロダクトが同一視されたり、混同されたりする傾向が強い。また日本ではプロジェクトマネージャーのことをPMと呼び、それと違いを明らかにするためにプロダクトマネージャーをPdMと呼ぶ人もいる。

 しかしこれはグローバルに見れば非常に特異だ。例えばシリコンバレーではプロダクトマネージャーは通常「PM」であり、プロジェクトマネージャーを「PJM」と呼んでいる。もしあなたの会社が海外に進出する、もしくは海外のエンジニアを使う場合プロダクトマネージャーのことをPdMと呼んでも理解されないであろう。われわれ執筆陣はこうした背景を踏まえプロダクトマネージャーをPMと一貫して呼ぶことにしている。

 プロジェクトの定義は、米国のProject Management Instituteという非営利団体が発行するPMBOK(Project Management Body of Knowledge)によるものが一般的である。そこには次のように記されている。

「プロジェクトとは、独自の製品、サービス、所産(※)を創造するために実施される有期性の業務である」
※所産…英語版PMBOKでのresultの訳。生み出されたものや作り出されたもののこと。

 つまりは、ある目的の下に行われる期間、すなわち開始と終了が定義された活動のことを指す。このプロジェクトの管理となる、プロジェクトマネジメントにおいては、期間内に成果をあげるために、制約条件となりうる成果物の品質とそれにかかる費用が管理対象となる。QCDで略される品質(Quality)、費用(Cost)、納期(Delivery)がプロジェクトマネジメントのゴールとなり、そのための工程管理を中心としたプロセスが用意されている。

 一方、プロダクトは終了日があらかじめ定められてはいない。プロダクトにはプロダクトライフサイクルと呼ばれる、導入期、成長期、成熟期、衰退期から構成されるプロダクトの一生とも言える期間がある。しかしながら、多くの場合、プロダクトの企画段階で、衰退期の時期などの詳細を明確に決めることはない。終わりがいつかは来ることを想定しながらも、衰退はプロダクトが必要とされなくなったことを意味するため、そのようなことがないことを目指し、プロダクトはスタートする。

 これがプロダクトとプロジェクトの違いである。プロダクトの中に期間を明確にした上での活動がいくつも含まれることが一般的であるため、プロダクトはプロジェクトを内包するものと考えうる。例えば、すでに提供を開始しているプロダクトに新機能を追加する場合、その新機能の企画から提供まではプロジェクトとして運営されていくのが一般的である。

プロジェクトとプロダクトの位置づけ
プロジェクトとプロダクトの位置づけ

 プロダクトマネジメントの観点から言えば、プロジェクトマネジメントはプロダクトマネジメントの一部である。一般にはプロジェクトのほうが認知度が高いこともあり、各種プロジェクトマネジメント手法が普及している。しかし、プロジェクトマネジメントは「どう作るか」を支えるものであり、「何を作るか」についてを教えてくれるものではない。その点には留意されたい。

プロダクトの成功とは

 プロダクトマネージャーの役割はプロダクトを成功に導くことである。ここでは、プロダクトの成功について考えてみよう。

 そんなことは自明と思われるかもしれないが、意外とそうでもない。試しに、同じプロダクトを担当しているチームメンバーに担当しているプロダクトの成功とは何か聞いてみてほしい。完全に一致した答えが返ってきたならば、そのチームはもう成功が約束されているかもしれない。

 プロダクトにはさまざまな側面があるが、目的はプロダクトのビジョンとして明確化されているはずだ。したがって、プロダクトの成功はプロダクトビジョンの実現ということになる。

 プロダクトを「市場において顧客となりうる個人や団体に価値を提供するもの」と定義した。それにそって定義されたビジョンがプロダクトチームとして共通の目標となり、それをなし得た状態がプロダクトの成功となる。

 収益事業の場合は、プロダクトが顧客に価値を与えるのと同時に、プロダクトを通じた事業の収益も目指すことになる。

 例えば、ECサイトというプロダクトの成功を考えてみよう。顧客は、自分の必要とするものを必要なときに可能な限り安価に入手することが目的となる。そのため、顧客価値を最大化するためには、多くの商品を取りそろえ、迅速に配送する物流網も整備することとなる。それと同時にコストも抑える必要がある。しかし、慈善事業でもない限り、これを極限まで追求するだけでは、事業としては成り立たないのはわかるだろう。事業として成立させ、継続させていくには、収益も最大化しなければならない。

 事業収益の最大化を目的とすることは、ときとして顧客価値の最大化とトレードオフの関係になりうる。同じくECサイトを例にとろう。顧客に高い商品を選ばせ、複数個購入させることや多くの種類の商品を購入させることが売上を伸ばす方法になりうる。ECサイトの機能として、高い商品を目立つように配置したり、複数個を購入するしか購入方法がないように見せたり、他商品を巧みな売り文句で購買意欲を刺激するなどすれば、売上は伸びるかもしれない。しかしながら、それらを顧客が望んでいないならば、顧客価値は低下することとなる。

 このように、プロダクトの成功を考えるには、そのプロダクトの目的を明確にする必要がある。上の説明では、この2つは対立する概念のように例えているが、実際にはそうではない。よほどあくどい事業を運営しているのではない限り、今日のプロダクトは顧客価値を最大化させることにより、継続的に事業収益を最大化することを目指す。例にあるように、顧客価値を無視し、事業収益のみの最大化を目指すと、やがてその顧客が離れていく。理想から言うと、プロダクトの成功とは、顧客価値と事業収益の両方の最大化を目指すこととなる。

 特に今日では、事業が売り切り型のプロダクトによる収益で成り立つのではなくなり、継続利用されることにより収益があげられるという、サービス産業のそれと同じ構造になる中、顧客価値の最大化は必須である。使われ続けることがより重要になっている。

 このプロダクトの成功をどのように定義するかは、KPI(Key Performance Indicator)やノーススター指標と呼ばれる成果測定と連動していくこととなる。

次回は

 さて、第3回となる今回はプロダクトマネージャーが扱う「プロダクト」の意味を考察し、プロダクトマネージャーは何をもってその仕事を成功させたと言えるのかを解説してきた。

 次回は、先述のプロダクトのライフサイクルについて詳細を見ていくとともに、その中でプロダクトマネージャーがどのように考えてプロダクト作りにあたっているかといった、身近な行動部分に視点を移して説明していく。

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この記事の著者

及川 卓也(オイカワ タクヤ)

 早稲田大学理工学部を卒業後、外資系コンピューターメーカーに就職。営業サポート、ソフトウエア開発、研究開発に従事し、その後、別の外資系企業にてOSの開発に携わる。その後、3社目となる外資系企業にてプロダクトマネージャーとエンジニアリングマネージャーとして勤務後、スタートアップを経て、独立。2019年...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

曽根原 春樹(ソネハラ ハルキ)

 Fortune500系外資企業に入社後、SE、カスタマーサポート、マーケティングなど様々な役職を日米で従事。その後シリコンバレーでプロダクトマネージャーに転身。B2B、B2C領域で米系大企業・スタートアップの双方でプロダクトの世界展開に携わる。現在はSmartNews社米国法人にて日本のスタートア...

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小城 久美子(コシロ クミコ)

 toC向けサービスを提供するWeb系企業に入社し、その後いくつかの企業で新規事業の立ち上げなどにエンジニア、スクラムマスターとして携わる。どう作るかより何を作るかに興味関心が移り、プロダクトオーナー/プロダクトマネージャーに転身。プロダクトマネジメントについてより深めるために、2019年よりTab...

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