はじめからカリスマPMになれるわけではない
――そうしたバランス感覚、越境力を身につけたいと思っているプロダクトマネージャーは、どんなことを意識すればいいでしょうか。
児玉:冷徹なまでに「このプロダクトは、ユーザーとして見たときに成立しているか」という視点を持てるかどうかというのは、プロダクトマネージャーの大切な資質のひとつだと思います。みんなが知恵を出し合って、時間をかけて作ってきたプロダクトに対して「頑張ってきたのは分かるけど、これじゃプロダクトとしては成立しないよね」と、ちゃぶ台をひっくり返せる胆力は大事です。
Appleのスティーブ・ジョブズや、任天堂の宮本茂さんが、プロダクト開発の佳境で「ちゃぶ台をひっくり返した」という逸話が、僕は結構好きなのですが、彼らは、その点でプロダクトマネージャーの理想型だと思います。もちろん性格的な向き不向きもあります。チームのメンバーに気を使いすぎたり、忖度しがちだったりといった人には、プロダクトマネージャーはつらい役割でしょう。
――そうしたカリスマ的な人物であれば、ちゃぶ台を返しても「あの人が言うなら仕方ない」と思ってもらえると思うのですが、そうでないとチーム全体の士気にも悪影響が出そうですよね(笑)。
児玉:結局、よいプロダクトマネージャーになるためには、理論を学んだり、話を聞いたりするだけではなく、現場でひたすら実践を重ねるしかないのではないでしょうか。
例えば、スティーブ・ジョブズは、人類の中で最も長い間、パーソナルコンピュータのことを考えてきた人でしたし、宮本茂さんも、人類の中で最も長い期間、ゲームのことを考え、作ってきた人です。当然、その中には多くの失敗もあったでしょう。それでも、その過程の中で、失敗以上に多くの成果を出してきたからこそ、カリスマ的な信頼を得たのだと思います。生まれながらの性格的な素養はあったと思いますが、彼らがはじめから「カリスマPM」だったかと言えば、そうではないはずです。
プロダクトマネージャーは、ビジネスなり、プロジェクトなりの目標に対して「無節操」であり「忖度しない」人であるべきです。そして、プロダクトマネージャーだけでなく、組織やチームも、本来そうあるべきだと思います。Googleの言う「心理的安全性」の本質も、実はそこなのですよね。「心理的安全性があるチーム」というのは、みんなの仲がよい、ぬるま湯状態のチームではなく、メンバーの誰もが「それは違う」と感じたら、それを安心して発言できる環境であるということです。互いに気を遣ったり、忖度したりして「言いたいことを言えない」組織は最悪です。
プロダクトマネージャーは、その中で、チームが向かうべきところを明確に指し示す役割を担います。付け加えるなら、常に「前向き」なオポチュニストであることも、資質としては大切だと思います。「後ろ向き」にちゃぶ台返しする人には、誰もついていきたいと思わないですからね(笑)。
――そうですね(笑)。本日は、COVID-19 Radarプロジェクトだけでなく、ご自身の経験から、プロダクトマネジメントについての広い知見を聞かせていただき、ありがとうございました。
