さまざまな企業にとっての“最適解”を見つけるために
――デザイン面で、BtoBのプロダクトだからこそ意識していることはありますか?
C向けのサービスはユーザーも多い分、入れ替わりなどのサイクルも短くなりがちだと思いますが、B向けのプロダクトかつ、私たちがサービスを提供している組織領域は、「時間軸が長い」、「空間軸が広い」という特徴があると思っています。
なぜ、私たちが提供しているモチベーションクラウドをお客さまが導入してくださるかというと、組織を変えることができると期待してくださっているから。
ですが、人間関係を築くのが難しいのと同じように、組織を変えるためにはある程度の時間を要します。組織の状態を測定して終わりではなく、測定・分析し、改善策を実行した結果、組織が変わるというところまで見据えた設計を行う必要があります。つまり、導入してから組織が変わるまで、最低でも2年程度のUXをふまえたうえでUIを考えなければいけない。ユーザー体験を長期の「時間軸」で設計するということは、常に意識しています。
また、モチベーションクラウドでは組織領域にアプローチするため、さまざまな職種の人がこのプロダクトに触れることになります。人事担当者や総務担当者のみが使うのではなく、経営陣、管理職、メンバーなど組織に所属する全員が、組織変革の担当者、サーベイの回答者など、何かしらの形で関わりを持つわけです。
そうなると、ある立場の人に使いやすいのではなく、全員にとって良い体験を作る必要がある。このステークホルダーの多さを、私は「空間軸」と捉えています。
リリース当初は、中小・ベンチャー企業さまにご利用いただくことが多かったのですが、近年は大手の企業さまも増えています。当然ながら、100人の組織と5万人の組織では、使い勝手の良いプロダクトの定義もまったく違うんですよね。そんな中で、どのように最適解を見つけるのかという点も心がけています。
――最適解をとるために、大切にしている視点はありますか?
純粋にユーザーの声を聞いていくと、オプション追加の要望が増え、どんどん画面に機能が盛り込まれていくことになります。そうすると、ひとりのユーザーの意見で何万人のお客さまの使い勝手を失ってしまうことにもなりかねません。
そのため、相反するようではありますが、ユーザーや現場のコンサルタントの声を聞くけれど、聞きすぎるのではなく、常にその裏側にある課題を抽出するよう意識しています。そういった要望が何社で挙がっているのか。どういったシーンで起きているのか。具体的にどのような内容なのかなどを丁寧に考えていかないと、誰にとっても使いづらいものになってしまいます。
つまり大切なのは、それが本当にユーザーを幸せにするのか、本当に解決するべき課題なのかを見極めることではないかと思っています。
――では、「時間軸が長い」からこそ、こだわっている部分はありますか?
長期になればなるほど、プロダクトだけでは限界があると感じています。お客さまの要望から課題を抽出しその解決策を考えたときに、コンサルタントから提供するべきなのか、カスタマーサポートが対応したほうがよいのか、プロダクトで広く解決すべきなのか――。プロダクトで100点満点を出すことのみを選択肢として考えるのではなく、どんな手段でアプローチすることがもっとも適切であるかという視点は、一瞬の購買ではないSaaSビジネスだからこそ考えるようにしています。
とはいえ、コンサルタントも開発側も、その目的はユーザーの価値を最大化することです。そのため、健全に領域を奪い合っていく方が、結果的にサービス全体としての価値を高めることができると思うので、開発側としては絶対にプロダクトで100点満点を出すつもりでいます。そこは譲りたくありません。
究極の未来は、コンサルタントがいなくてもプロダクトだけで組織は変わるというのが、開発側の野望ではあります。ただ、それによって既存のユーザーに提供するべき価値を毀損してしまっては意味がありません。足元では最適な価値提供の手段はかを考えつつ、長期的な理想としては、この野望を実現していきたいと思っています。