チームへの浸透もカギ 「ブランドがすべての旗印」と言われる理由
ブランディングはマーケティング手法のひとつです。利用前のプロモーションでただ表現やメッセージを変えるだけでは、実際に利用した時に不整合を感じ、ブランドを毀損することになりかねません。また、SNSや動画全盛期の今、顧客の違和感は簡単に世の中に広がってしまいます。
ブランディングは、誇張するものでも誤解されるものでもなく、ありのままを認識してもらうためのものです。プロモーションだけでなく、製品やサービスの実態がともなうよう、常に便益を改善したり創造していくことで、顧客の認知を変えることができるのです。

ブランドを中心に、“点”となる顧客とのすべてのタッチポイントで適切にコミュニケーションをすること。その点をつなぎ“線”となるよう、期待を超える体験を積み重ねていくこと。それが“面や立体”となることで顧客が製品やサービスに価値を感じ、共感がうまれます。その結果多くの人がファンになり、周囲に良い評判が広がっていく――。それがまさにUXデザインであり、製品やサービス開発そのものではないでしょうか。
ここでいう顧客との接点は製品だけでなく、広告、対面するセールス、カスタマーサポート、店頭、メールやチャットなど、コミュニケーションが発生するすべてです。
またこれらすべてに関わるチームに、一連の捉えかたを浸透させることも非常に大切です。その理由のひとつは、「ブランド=人のイメージの総体」の“人”はサービスや製品に携わる自分たちも指しているからです。会社には最上段に「成したいこと」があり、それを実現するために事業とチームがあります。これを、ブランド形成に必要な言語化の4要素と突き合わせてみましょう。
- 哲学や信念(Philosophy):チーム
- 世界観(Vision):成したいこと
- コンセプト(Concept):事業
- 便益と約束(Benefit and Promise):事業
このように、ブランディングはチーム開発でもあるということがおわかりいただけるのではないでしょうか。

製品・サービス開発もチーム開発もブランドが出発点であり、迷った時に立ち返る原点にもなります。だからこそブランドは、北極星や旗印と言われるのではないでしょうか。
デザイナーがデザインできるものは、見た目だけではない
3本の連載を通して、さまざまなデザインが存在することを知っていただけたと思います。本連載では触れていませんが、マーケティング、働く場や住む空間のデザイン、デザイン経営、都市デザインなど、デザインの可能性はたくさんあります。
私自身まだまだ知らないことも多く、勉強すべきことがたくさんありますが、デザイナー自身がその可能性を信じ、責務を越えてデザインする一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。必ずデザイナーの能力が活かせるフィールドがあるはずです。直接クリエイティブに関わらない方も、クリエイターと対話しながら共創してみてはいかがでしょうか。
みなさんと一緒に、ハートを揺さぶるデザインでファンが溢れ、人々の可能性を広げることができたらと思います。そしてこの連載がそのひとつのきっかけになれたら幸いです。