日本のプロダクトマネージャーがグローバルを意識する必要性
次のテーマは「プロダクトは日本からどのように戦えばよいのか」。このテーマのモデレータは及川氏が担当。
及川:今は日本で自分の会社を作り、日本企業の支援をしていますが、それまで約30年間、グローバルハイテク企業で働いていました。つまりグローバル・バイ・デフォルト、グローバルが当たり前の世界でした。ものづくりの楽しさは誰かの役に立てることで、その魅力はローカルでも得られますが、グローバルスケールで考えた方が視野は広がります。そこに「日本のプロダクトマネージャーがグローバルを意識する必要性」があると思うのですが、コロナ禍前とコロナ禍の今、そしてその後によってグローバルの捉え方も変わってくると思います。
曽根原:新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、シリコンバレーで話題になったのが「ローカル」というキーワードでした。人があまり移動できなくなったことで、「Nextdoor」という地元近隣が対象のローカルSNSがはやりました。Nextdoorは現在、3000億円の価値があると言われ、今年上場すると言われています。グローバル化と言われる一方で、パンデミックの流れの中でローカルの価値にスポットライトを当てたなと感じています。
及川:このような状況の中でグローバルは今後、どのような存在になると考えていますか。
曽根原:難しいところですが、パンデミックなしでも米国ではトランプ氏が政権を取ったことで、民主党と共和党の分断が進みました。ですが、分断されたユーザーは、YouTubeやGoogle、Twitterなど同じプラットフォームの中で情報を共有しているんです。うまく言えませんが、ローカルを意識しながらも、情報空間はグローバルを無意識に感じる。ローカルとグローバルの力関係はそんな感じだと思います。
及川:小城さんと私は同じ会社ですが、1年以上直接顔を合わせていません。小城さんにとって、今後グローバル化はどうなりそうだと思いますか。
小城:どの職種もそうですが、プロダクトマネージャーもずっと勉強し続けなければ務まりません。グローバル化が進んだことで、今はリモートで海外の大学の講座をとることができるようになりましたし、海外のプロダクト作りの生の声を聞く機会も増えました。その一方で、自分たちの知見や日本での考え方などを海外に出すことも、容易にできるようになったと思います。日本にいても、いろんな国のプロダクトマネージャーと同じ視座で考えられるようになると思います。
日本と他国のプロダクトマネージャーの違い
及川:次のトピックスは日本と他国のプロダクトマネージャーの「分業」の違いについて。小城さんは海外のカンファレンスに参加したり、講座を受講したりしていますが、そこで日本と米国の違いを感じたことはありますか。
小城:今回書籍を書く上で、体系的に違いはないと思いましたが、どこを強めるかというイメージが違うと感じました。日本のプロダクトマネージャーは、どういう風にPRDを書けばいいか、どういう風に開発とコミュニケーションすればよいかというところに課題を抱えていらっしゃる方が多いです。一方、海外ではWhy、Whatの部分、どういう戦略でやるのかといったところが議論されています。その違いは気をつけなければならないと思いました。
曽根原:小城さんがおっしゃったことは、納得できるところがあります。2020年にLinkedInで調査をしたところ、今米国にはプロダクトマネージャーが70万人いるんです。おそらく日本には数千人ぐらいしかいないと思うので、キャリア、活躍している領域、経験の深さなど人材の厚みは段違いです。だから米国では新しいプロダクトマネージャーが企業に入っても、Howの部分はドキュメントなどリソースが豊富にあるので、課題にならないんだと思います。プロダクトマネージャーとしての本領を発揮するのは、Whatの部分、問題に対する切り込みなんです。そこでお互いに腕を磨き合っている感じです。
及川:私もよく、フレームワークはただの器にすぎないと話しています。プロダクトマネジメント歴は20数年に及びますが、プロダクトマネージャーになった当初、書籍で紹介されているフレームワークなどはありませんでした。でも同じようなことをやっていたんです。フレームワークを考え出した人もそうだったはずです。リーンキャンバスやバリュープロポジションキャンバスが登場し、見つけて便利だったので、このフレームワークを使うことにしている。先人たちの知恵がつまったものを使わない手はありませんからね。
Howについてしっかり学ぶことは大事ですが、器だけではなく、Why、Whatを意識して、中身を充実させていく。そうすることで、日本ならではのプロダクトマネジメントの方法ができるのではと思います。
