ユーザーの声から生まれた機能も プロダクト開発で意識していることとは
サービス提供後も改善の手は止めなかった。FANBOXを象徴するものとしては、「ファンカード」という機能が興味深い。堀部さんはファンカードについてこう説明する。
「これはリニューアル直後に開発に取り組んだ機能です。クリエイターを支援した際に、デジタルのファンカードをもらうことができ、絵柄はクリエイターの方が自由にデザインできるようになっています。たとえばコミケなどのイベントのとき、そのファンカードを見せることで、ファンがクリエイターに支援者であることを示すことができる。支援をしている、支援をしてもらっているという実感を、それぞれが感じられるのです」
また、ユーザーの要望に合わせて追加した機能もある。当初はプレーンなテキストや画像しか投稿できなかったが、ひとつの投稿内にテキスト、画像、動画、ファイルを好きな位置に挿入できるブログ形式の投稿や、あらかじめ予約した時間に投稿できる機能にも対応した。これらの機能に通ずる目的は、「クリエイターの心理的負担を減らす」こと。ではユーザーからの要望は、どのように把握しているのだろうか。
「Twitterなどの声を反映することもありますし、クリエイターさんをオンラインの場にお呼びして行うユーザーインタビューのようなヒアリングも定期的に実施しています。まだゲーム開発者の利用が少なかったころ、ファンから支援を受けているゲーム開発者の方に、どういうふうにFANBOXを捉えて使ってくださっているのかを知るべく、連絡を取ってお話を伺ったこともありました」
FANBOXの開発についてはプロダクトマネージャーの役割を担う堀部さんをふくめ、計12人が関わっている。デザイナーが1名、エンジニアが5名、コミュニティマネージャーが2名、クリエイターのFANBOX開設サポートやイベントにおける情報発信などを行うスタッフが2名という体制である。そんなチームで開発を進める際、堀部さんが心がけていることは明快だった。
「良くも悪くも自分の感覚をあまり信用しないことです。私個人が何か改良したほうが良い点を思いついたとしても、必ずしもそれがユーザーにとって嬉しいこととは限りません。その仮説がデータで証明できるかどうかを調べたうえで、クリエイターの方にも意見を聞きたいですし、それぞれに強みをもつチームメンバーの声も知りたい。さまざまな人の声を参考にしながら、最適化していくことを意識しています」
日ごろからデータでの分析を行っているというFANBOXチーム。それが活きたのが、レコメンドやフォローの機能だ。実際にお金を支払う「支援」という行為の手前に、お金のかからない「フォロー」を用意。さらにフォローをする画面では、オススメのクリエイターをレコメンド表示する仕様になっている。
その結果、FANBOXではひとりの支援者が複数人のクリエイターを支援しているケースも多く、支援者ひとりあたりの平均支援数は増え続けている。