壁3.クリエイティブを科学すること自体の難易度が高い
一言でクリエイティブと言ってもその構成要素は多岐にわたります。
とくに近年重要視されている動画クリエイティブにおいては、その要素の数は非常に多く、動画の構成要素には、クリエイティブのキーメッセージ、コンセプトなど抽象的な部分から、キャッチコピー、ボディーコピー、CTA(Call to Action)コピー、形式、サイズ、秒数、トーン、BGMなども含まれます。
こうしたクリエイティブを運用しながら科学していくために求められるのは、要素を分解し、優先度を決め、仮説を立て、検証していくということです。しかし、これはひとつめ、ふたつめの理由からも簡単ではありません。またさらにこの科学を行うためには、クリエイティブの量産が求められ、検証のためにはそのPDCAを回していくことが不可欠ですが、クリエイターが工数を割いて多くのクリエイティブを制作することは、企業にとって非常に難易度が高いと言えるでしょう。
デジタル広告においてクリエイティブはもっとも重要な要素であり、また多くのマーケターも同様の認識でした。しかし、デジタル広告におけるターゲティング設定をはじめとしたほかの要素と比較すると、それほど検証や分析が行われてこなかったのが、クリエイティブの現状です。その裏には、こういった「3つのクリエイティブの壁」があると考えています。
広告運用者とクリエイターがより連携するためのふたつのポイント
それでは、デジタル広告の運用者とクリエイターがうまく連携していくためには、どのようなアプローチが考えられるでしょうか。この疑問に答えるヒントを、ふたつご紹介できればと思います。
ひとつめのアプローチは、運用者とクリエイターが、互いの共通言語を持つことです。これにより、より効果的なコミュニケーションを実現することができるでしょう。
とくに共通言語になり得るのが、ファクトやデータです。実際にあるクリエイティブを配信して結果はどうだったのか、目標に対してどうだったのか、ほかのクリエイティブと比較して数値がどうなっているのかなど、ファクトやデータをともに見ることで、より正確な対話や議論ができると思っています。
よくあるのが、運用者がクリエイターにクリエイティブ制作を依頼する際、ファクトをベースにしておらず、適切なコミュニケーションができていないというケース。確固たる互いの共通言語を持つことで、意味のある対話や議論が生まれる関係が理想です。
ふたつめに大切なのは、「運用」の考えかたを互いに共有することです。デジタル広告では、ひとつのクリエイティブだけで成果をあげるのではなく、仮説をもとにPDCAを回すことで初めて成果を得ることができる――。こうした考えを持つことで、運用者とクリエイターそれぞれが異なる仮説を持ったとしても、そのどちらかを選択することが正解とは限らず、どちらも試し運用する中で学びを得るという選択肢も生まれるのです。
いかがでしたでしょうか。今回は、デジタル広告におけるクリエイティブの重要性とそのハードルについてご説明しました。
次回以降では、デジタル広告をめぐる環境変化や、クリエイティブPDCAの具体的なノウハウなどについてお伝えしていきます。ぜひご期待ください。