はじめに
この連載は、第1回に紹介したDBMSの3階層構造における「アーキテクチャと実装」についての技術の紹介から始まり、中間の階層である「データ・モデルとデータ型」についてお伝えしてきています。データ・モデルとデータ型として、JSONをDBMSで扱う方法やグラフデータモデルとグラフDBMSについて取り上げてきました。
今回は空間データのベクターデータというデータ型を中心に、空間データの特徴や実装について書いていきたいと思います。
なお、本連載で例として挙げるデータベースはオラクルが提供しているものが多いですが、オラクル製品を使っていない方にも参考にしていただけるように解説します。
対象読者
この連載では以下の読者を想定しています。
- データ資産を活用する、新しいアプリケーションの構想や設計を担われる方
- データ基盤の運用を担われている方や、今後検討される方
- 新たに開発するアプリケーションの、最適なデータベースをお探しの方
- 目的別データベースから、価値ある情報を素早く引き出す検討をされている方
空間データとは
空間データとは文字通り空間に関するデータ、空間の情報をデータ化したものになります。我々が比較的頻繁に目にする空間データとしては地図データが挙げられます。これは地理上の空間データ、地理空間データの代表的なものの1つだろうと思います。
地図データには、河川、道路、鉄道、都道府県や地区町村などの行政区、土地の形状、レストラン、コンビニ、ガソリンスタンドなどの店舗の位置などの「形」を表現するデータと、個々のレストランの名称やジャンル、コンビニの店舗名などの属性データが含まれています。
国交省が公開している国土数値データの河川データを例とすると、河川の「形」と、河川の名称、水系域コード(その河川が何水系か)、河川の起点、河川の流れる向きなどがデータ化されています。
こういった空間データが他のデータと違う特徴の1つはこの「形」を表現するデータが存在する点にあります。このような「形」は多くの場合、ベクターデータと呼ばれる数字を組み合わせた形で表現されています。