たまたま出会ったプログラミングで「面倒なことを楽にする」喜びを体験
新卒で入社した会社でプラントの耐震業務を6年間経験し、VBAに触れる機会があったことでプログラミングに興味を持つようになった宮城氏。未経験ながらITエンジニアへの転職を決意し、プログラミングスクールでの学習期間を経て2022年3月にWorks Human Intelligence(WHI)に入社した。現在は、同社が提供する統合人事システム「COMPANY」勤怠システムの開発者として奮闘し、昇格したばかりだという。大切にしている価値観として、「人から頼られることによる喜び」、そして「自分が知らないことでもまずは何でもやってみること」をあげた。
宮城氏は、「HRテック業界のリーディングカンパニーになる」とともに掲げられているWHIのビジョン「我々が最も『はたらく』を楽しんでいる」に共感したといい、まさに現在「楽しい!」と感じながら働いているところだという。
もともと宮城氏は理系大学の物理学科出身で、ExcelやPowerPointが少し使える程度だった。プログラミングもC言語について聞いたことがある程度、ましてVBAなどは存在すら知らなかった。それがたまたま、新卒で入社した会社でプラントの耐震業務に携わり、建物情報をPCで解析・評価する中で、VBAを理解して説明する必要が生じた。いわば、”たまたま”で、正直言うと『ちょっと面倒くさいな』という感想だった。一方で、自動的に解析されることに感動もあり、「面倒くささ8割、感動2割という感じだった」と宮城氏は当時を振り返る。
それが「プログラミングって面白い!」という楽しさに転じたのは、社会人5年目の時。VBAの知識も増えていたが、コロナ禍の影響でオフィスで顧客向け解析レポートの印刷ができなくなり、テキストデータをPDFに変換してPC上でチェックする必要が生じていた。そこで、当初1ファイルずつ変換するしかなかったものを、まとめてデスクトップ上にPDFに変換してくれるプログラムをVBAで作成することを考えた。調べながら試行錯誤して完成させ、さらに周囲にも配布したところ、感謝とともにさまざまなリクエストが返ってきたという。
「『用紙サイズを選べるようにしてほしい』、『違う形式のテキストデータ出力ができたらいい』など、いろいろいわれて、それが”めっちゃ”嬉しかった。それで『プログラミングって楽しいかも?』と思うようになった」と宮城氏は語る。さらに、それがきっかけとなって独学でプログラミングの勉強を開始。現在の業務でプログラミングによって効率化できることを探すようになった。
その結果、日々の残業申請や毎月の精算金額申請、解析に使う入力データ整理など、課題はいろいろと見つかったものの、自分の力では手に負えない。そこでプログラミングスクールに通うことを前提にカウンセリングを受けたが、なかなか満足いく結果は得られなかった。というのも、宮城氏が求めているのは「プログラミングを業務に活かす方法」、スクールでは「プログラミングを勉強して転職しよう」という打ち出し方。話を聞くほど転職を勧められ、辟易してやめてしまったという。
自動化の末にたどり着いた「システムを作りたい」という気持ち
スクールは諦めるけれど、せっかく勉強したのだから業務には活かしたい。そんなちぐはぐな思いを抱え、勉強し続けていたところ、上司との会話の中でPythonでWebスクレイピングができることを知り、YouTubeで調べて「これなら業務に活かせそう!」と確信を得た。試しに面倒だった残業申請の自動化を図ったところ大成功。部署内の人たちに紹介したところ、みんなに使ってもらえるようになった。
この時も感謝されると同時に、「Chromeが更新されると使えなくなった」「複数日まとめて申請したい」など、さまざまな意見やリクエストが返ってきて、やはり大きな喜びを感じたという。
そして、「そもそもシステムが使いやすければ自動化する必要ないのではないか」という思いに突き当たる。そこから「コードを書くのが楽しい」という気持ちに加えて、「システムを作ってみたい」という思いが生じてきた。しかしながら、システムを作るには時間も自分のスキルも足りない、目標にする人やフィードバックをくれる人もいない。やりたいことをやれない環境に違和感を抱き、転職という決意に至った。
宮城氏は、転職活動を始める前に改めてプログラミングスクールに通い、Ruby on Railsでフリマアプリを作ったり、ToDo管理アプリを作成したり、さらにGit/GitHubを使った開発やAWSを使ったサーバー構築などを体験した。しかし、いざ転職活動となると、どんな会社がいいのか思いつかない。それでもスクールのアドバイザーから数を受けることを勧められるまま、転職活動を開始した。しかし、多種多様な会社で面接を受けるうちに、かえって自分がどんな会社がいいのかわからなくなっていった。
「改めてどんな会社がいいのか、しっかり考えなくてはと思った。せっかく転職するなら、今まで自分が経験してきて”嬉しかったこと”が、より大きくなる会社がいいと考えた。その時に、残業申請を自動化した時の思い出が一番最初に浮かんだ」と宮城氏は当時の心境を語る。
「ユーザー数が多いとか、使う頻度が多いようなサービスのほうが楽しいのではないか。自分の行動にフィードバックを与えてくれる環境なら最高ではないかと思った」
そんなことを考えていた時にWHIの選考があり、適性検査、コーディング試験を経て、エンジニア面接にたどり着いた。その時に印象的だった出来事として、宮城氏は「『自分が入社したらどんな機能の開発ができるか』と聞いた時、『まだ決定ではないが打刻のチームになるのではないか』と答えが返ってきたこと」をあげる。それまで面接をした会社では配属先が曖昧で、濁されることが多かったが、WHIは「自分が何を開発するか」の明確な回答が得られた。そしてもう1つ、多くの面接では逆質問で面接が終わるが、WHIではまだ続きがあり、コーディング試験について聞かれた上、コードについてフィードバックがあったことも印象的だったという。
面接後、宮城氏は「打刻システムはどの会社にもあり、使われる頻度が多い。しかもCOMPANYはユーザー数も多い。さらにまだ採用されていない自分にコーディング試験でフィードバックをもらえたということは、入社したら絶対にフィードバックをたくさんもらえるのではないか」と考えたという。この「使用頻度が多い打刻の開発ができる」、「フィードバックがたくさんもらえそう」という理由からWHIへの入社を決定することとなる。
甘くはないエンジニアへの転身、壁を乗り越えて「楽しむ」には?
エンジニアの転職は多々あるとはいえ、全くの未経験からエンジニアへの転身はなかなかハードルが高いと感じる人は多いだろう。実際、宮城氏も「最初はいろんなことに戸惑った」と語る。
入社後、新規開発以外で戸惑ったこととして、宮城氏は「不具合修正の環境構築」をあげる。シングルサインオン(SSO)でログインしたWeb打刻で、タイムアウトしてもタイムアウト画面が表示されず、打刻ができないという不具合が発生。しかし、SSOもSAMLも知らず、知らない単語が多すぎる。さらに開発環境にSSOの環境構築が必要だったが、手順書がちらばっており、自力で行なうにはハードルが高かった。
そこで、上司や先輩の助けを借りてなんとか環境を構築できたものの、タイムアウト画面の構築以上に、SSOの環境構築が大変だったことを実感。チームの状況を考えると、Web打刻機能は自分が担当する機能になりそうだったため、SSOの環境構築、設定の流れや詳細な設定方法などをWikiに残しておいた。すると、ほどなくしてSSOに関する問い合わせが来たため、Wikiを見るように伝えたところ、すぐに設定ができた。
そんなふうに、最初は戸惑っていた不具合修正が楽しくなった頃、次は問い合わせ対応をすることになった。当然ながら解決方法がわからない問い合わせは山のようにくる。たとえば、コンサルから「Web打刻の後に勤務実績画面に遷移できるか」という問い合わせを受け、すぐに回答できなかったために、詳しい人に聞いて対応し、さらにコンサルに詳細な手順を書いて回答した。すると、同じような問い合わせが来たので、対応策をマニュアルに掲載し、Slackでつぶやいたところ、拍手のリアクションを多数もらった。そして、問い合わせ対応の改善を目的としたコンサル視点でのレポートに優良回答として掲載された。
「拍手も嬉しかったし、回答が掲載されたのも嬉しかった。いろいろなことが少しずつできるようになり、レベルアップしていって、それが段々楽しくなって、最終的にエンジニアが楽しいと感じるようになった」と宮城氏は振り返る。
未経験からエンジニアになって、周りから評価されたのは?
宮城氏自身が楽しくなると同時に、評価も上がり、2022年10月には昇格することとなった。これについては宮城氏も明確な理由がわからず、上司やチームメンバーへのインタビューを行なったという。
まず一人目、同じチームメンバーの佐藤未歩氏は、「これまで扱ったことがない機能に関する問い合わせや不具合修正でも、ポジティブにチャレンジしていること」と回答。細かいところながら、「解決したチケットをテストケースに書いておくとか、上司がやること減らすために先回りしてやってくれてるのもプラスポイントなのではないか」と評し、「ちょっと仕事が雑になる時があり、誤字脱字に注意」との指摘もあった。
二人目、宮城氏が所属する就労システム開発部門長の足達穣氏は、「自走力がある」と評価。チームの中で能動的に動けていること、手取り足取り教えなくても自分で解決できていること、さらに大きな括りで仕事を任せられることなどをあげた。
最後は直属の上司である、其阿彌孝明氏はコーディング試験の際にフィードバックを行なった人物だという。其阿彌氏は「まず会社のビジョンである『はたらくを楽しむ』を体現していること」と語り、「一つ一つの仕事に丁寧に取り組み、問い合わせ回答にもプラスアルファでお客様の状況を理解しようとしている。だからどんな仕事も楽しんで見えるし、主体性があるように見える」と評した。そして、さらに成長するためとして「顧客課題の追求や先取り力が大事」とアドバイスした。
宮城氏は「周囲の人に『はたらくを楽しんでいる』と見えているのは嬉しい。そしてそれが重要なことだと改めて感じることができた」と語り、「そうしたフィードバックがあり、昇格できると、『周囲の人たちにもっと頼ってもらえるようになりたい』と強く感じる。どうしたらもっと頼ってもらえるかを考える時が、自分にとって一番楽しい瞬間だ」と語り、笑顔でセッションを終えた。