1on1の効果的な進め方とテクニック
ここで話題は、1on1の具体的な進め方と実践的なTipsへと移った。
ZOE氏いわく、1on1は毎週できるだけ決まった時間に開催するのが望ましいという。時間を固定することで、ルーティンとして定着させやすくなるからだ。
形式はオフライン・オンラインのどちらでも良いが、「可能ならお互いの顔を見ながら話す」のがZOE氏流。表情などの細かな反応を見ながらコミュニケーションを取ることで、より深い対話が可能になる。また1on1の時間については、「最初は30分程度から始め、内容が充実してきたら60分に延長するなど、柔軟に調整するのが良い」とアドバイスした。
1on1を効果的に進めるためには、受ける側の情報を引き出すための準備も重要になる。1on1を行う側が何の準備もせずに臨むと、会話が停滞しがちになるためだ。「特に初期段階では、事前に相手がどんな業務に取り組んでいるか、何に悩んでいるかなどの情報を収集しておき、それに基づいて話を進めることが効果的だ」とZOE氏は強調する。
こうした「基本」を徹底できるようになったら、応用的な1on1も視野に入ってくる。例えば、「1on1は目標設定や評価、進捗確認の時間ではない」のを基本としつつ、受ける側からのリクエストによっては、これらのトピックへ向き合う時間にするといったケースだ。
また「1on1は受ける側のための時間である」という基本理念についても、「慣れてきたら視野を広げ、『お互いのため』の時間にできるように努力したい」と述べる。1on1を行う側が成長すれば、質や内容が向上し、受ける側への提供価値も高まっていくからだ。
そして、1on1の基本である「相互理解」を深めるためには、傾聴に加え、ティーチングや情報共有が重要になる局面もあるとZOE氏は話す。特に、メンバーの言語化能力が低い場合や、初期段階でどう進めて良いかわからない状況では、ティーチングが有効である。
なんとも奥深い1on1の世界だが、ZOE氏は「目的によっては、他の方法で代替できることもある」と、1on1自体が目的化することに警鐘を鳴らす。
例えば、コミュニケーションが目的なら、ランチや雑談、プライベートな時間で十分に関係値が築けていれば、1on1の形を取る必要はない。業務報告や相談についても、適切なレポートラインやフィードバックの場が別に設けられていれば、1on1の必要はない。
目標設定や評価も、評価面談や定期的な振り返りで代替できる。成長支援も、Slackなどのチャットツールや直接のタイミングで相談できる環境が整っているなら、わざわざ1on1の機会を設ける必要はないというのだ。
ZOE氏は、「1on1の形を取るかどうかの判断は、受ける側に委ねられるべきだ」と話す。「受け手が求める環境を整える」という原理原則に都度立ち返ることで、「なんとなく」1on1を実施するような事態を避けられるわけだ。