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イベントレポート

目指すは生産性2倍!モノタロウが全社導入した、Devin・Cursor・Cline活用のリアル

【AI駆動開発Conference Spring 2025】「モノタロウのAI駆動開発の実践」セッションレポート

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AI駆動開発を浸透させるための仕組みと導入ツール

 AI駆動開発チームのリーダーを務める市原氏は、開発現場でのAIツールの導入について「GitHub Copilot for Businessが一般提供開始された2023年3月頃から検証を続け、4月にPoCを開始し、現場で利用できると判断したので5月には開発者全員に配布しました」と話す。

株式会社MonotaRO AI駆動開発チームリーダー 市原功太郎氏
株式会社MonotaRO AI駆動開発チームリーダー 市原功太郎氏

 現在は、自律型AIエージェント「Devin」、AIネイティブエディタ「Cursor」、VSCode拡張「Cline」も導入している。Devinは160人以上に配布。Cursorは40人程度が使用中で、Clineは200人に配布し、100人以上がアクティブに利用しているという。この他にも「Gemini」や「Claude」、OSSのAIサービス「LibreChat」、ChatGPTを活用した自社Slackbot「MonoChat」などの活用も進めている。

 AI駆動開発を社内全体に浸透させるための仕組みとして同社が用意したのが、「AI駆動開発ツール価値探索プログラム」、および社内育成プログラム「DOJO」や「トレンドラボ」との連携だ。

AI駆動開発推進の全体像
AI駆動開発推進の全体像

 とはいえ、AI駆動開発チームは、市原氏ともう1人のエンジニアを加えた2人体制で運営している。市原氏は「2人とも別の業務と兼任しているため、各チームにマンツーマンでAIツールの使い方を指導することは困難」と、その内実を語る。このような人的リソースの制約から、現場のエンジニア自身がボトムアップでAIツールの活用法を模索し、学ぶ必要性が生じる。

 そこで考案されたのが「AI駆動開発ツール価値探索プログラム」だ。このプログラムの核心について、市原氏は次のように説明する。「とにかくAIツールを実際に触って、試して、学んでもらうこと。これが最も重要なポイントです。実際に使ってみないことには、開発や業務のどのようなシーンでそのツールが活きるのか、直感的に理解しづらいと思うからです」

 さらに、AI駆動開発ツール価値探索プログラムにおいて、ボトムアップの学びを組織として蓄積していくための情報共有の旗振り役として、エバンジェリストというロールを設置した。エバンジェリストは、各開発チームから最低1人以上を選出してもらったという。

 さらに特に活躍したメンバーを顕彰する「チャンピオン」の制度も設置した。「チャンピオンに選ばれること自体が、直接的な人事評価にすぐ結びつくわけではありませんが、例えばPoCで試用しているツールへのアクセス権といった特典を提供しています。これを一つの目標にしてもらうことで、結果として間接的に個人の成長を後押しできる、そういった仕組みだと考えています」(市原氏)

AI駆動開発推進の組織構造
AI駆動開発推進の組織構造

 AI駆動開発ツール価値探索プログラムと連携する「DOJO」では帯制度やAIツール入門講座を用意することで、スキルの底上げをする。「DOJOはモノタロウでは数年前から実施している学習プログラム。最終的にはモノタロウの開発者に求められるAI関連の標準スキルを定義できるところまで、整備したいと考えています」(市原氏)

 一方の「トレンドラボ」は大型の社内勉強会のようなもの、と市原氏は話す。AIツールの最新情報や社内ツールの紹介、活用事例の発表会を実施することで、横の連携による学習の推進を行っている。「トレンドラボは3月~4月にかけて3回実施し、約180人の開発者が参加しました」と市原氏は語る。

 では実際、Devin、Cline、Cursor、GitHub Copilotを導入してみてどうだったのか。各ツールに対する社内での評価や導入後の感触について、市原氏は次のように語る。

 まずDevinについては、「万人向けではなく、マネージャーやリーダー、PMなどタスクを分析して指示を出す立場の人に適している」と市原氏は分析する。

 次にClineは、社内アンケートで最も人気の高かったツールだと言う。ただし市原氏は「使いこなせているユーザーはまだ少ないという印象だが、開発者からの評価は高い」と話す。Clineに関しては、一部で「API利用料で破産する」といった懸念も聞かれるが、同社では一部に大量使用するユーザーがいるものの、全体で見ればコストは許容範囲内に収まっているという。「今のところ心配なさそうで安心しています」と市原氏は安堵の表情で語った。

 一方、Cursorは現在約40名に配布して、検証を行っている段階だ。「現時点では、コード補完の速度や精度において、GitHub Copilotを上回っている」と市原氏はその可能性に言及しつつも、GitHub Copilotと比較してコストが高いという課題もあるため、全社的な導入は慎重に検討していく予定だ。

 2023年から導入しているGitHub Copilotは、マイクロソフトがバックボーンにいるという安心感と、コスト面での優位性に加え、着実に機能を搭載していく手堅さもある。市原氏は「標準装備としては外せないツールだ」と断言する。

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期待と課題が混在。自律型AI「Devin」活用のリアルな声

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この記事の著者

中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

 大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

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