現状を打破するための内製組織構築とAI駆動開発
こうした現状を打破すべく、巣籠氏がまず着手したのは「体制の変革」だった。同氏は、体制を変えるのに12年、システム刷新にはさらに7年を要したとされるみずほ銀行の勘定系システム刷新を引き合いに出し、これほどの大組織になると、意思決定の構造や働き方を変えるだけでも膨大な時間と労力が必要になると考えた。よりスピード感のある変革を目指す巣籠氏は、できるところから一つずつ変えていく方針を選んだ。
取り組んだのは、内製組織の構築と、AI駆動開発の推進だ。
まず内製組織については、将来的に開発運用の70~80%を内製化することを目標に、その第一歩としてコードレビュー体制の整備に着手した。「エンジニアもようやく5人になったが、リソースとしてはまだまだ少ない」と巣籠氏。そんな少人数でも技術的な意思決定に介在し、アプリケーションの品質を担保できるよう、体制作りを進めている。
それと並行して着手したのが、内製開発に必要な環境の整備だ。ここでの課題は、社内の申請プロセスは依然として複雑で、開発用ツールや生成AIサービスの導入にも時間がかかっていたことだ。少人数体制で効率よく開発を進めるには、新しいテクノロジーをいかにスムーズに取り入れられるかがカギになる。そこで巣籠氏が掲げたのが「AI駆動開発の推進」だった。
「AI駆動開発」は、開発効率を高めるだけでなく、先進的な取り組みとして社内外へのブランディング効果も期待できる。そんなメッセージを繰り返し訴えた結果、その言葉は経営層に届き、丸井グループの経営計画のキーワードのひとつとして正式に盛り込まれることとなった。その成果もあって、ツール導入申請のプロセスも一気に簡略化され、今ではClaude Codeをはじめとした生成AIツールも活用できている。
比較的セキュリティ要件の厳しくない小売系システムの開発では、すでにAI駆動開発が本格的に進む。「他のIT企業とそん色ない環境で開発できるようになってきた」と巣籠氏は胸を張る。

