「完璧じゃなくていい」マネジメントとしての成長方法
最後の質問は、ソフトウェアエンジニアからVPoEへ転じたばかりの相談者によるものだった。「何もわからず、手探りで大変だ」と率直に語り、VPoEとしての心得を問うた。
ばんくし氏はまず、「マネジメントは成果が見えづらく、自分の市場価値が上がっているのかも分かりにくい」と明言する。積み重ねた技術を持つエンジニアのほうが、市場価値という観点では評価されやすい側面もある。
エンジニア100人に対し、マネジメントのポジションは1人程度という構造を考えれば、転職のしやすさという意味ではエンジニアのほうが有利という議論があっても不思議ではない。「マネジメントは楽しい、やりがいがあるといった華やかな情報も多いが、実際にはしんどい仕事だ。他者の課題や感情を引き受け続けることにこそ、負荷がある」と現実を示す。
さらに大きな違いとして挙げたのが、フィードバックループの長さだ。しかし、マネジメントは、3か月、半年、1年といった時間軸で戦略を描き、ようやく結果が見えてくる仕事である。この遅いフィードバックに耐えることが前提条件であり、まずはその現実を受け入れることが重要だと説いた。
では、なぜそれでもマネジメントを続けるのか。ばんくし氏は、自分から始まる視野の広がりを意識すべきだと語る。まず自分は何にやりがいを感じるのかを見つける。そのうえで、関心をチーム、組織、会社、さらには社会へと広げていく。マネジメントは他者中心の仕事になりやすいが、自分の軸がなければ続かない。
一方で、「マネジメントには確かにやりがいがある」とも断言する。チームが大きなリリースをやり遂げ、メンバーが笑顔で「お疲れさま」と言い合う瞬間。その光景を見て涙が出そうになることもあるという。日々は重い責任を伴うが「この瞬間のためなら引き受けられる」と思える報酬を自覚できるかどうか。それがVPoEとして最初に見つけるべき点だと語った。
印象的だったのは、「全部を完璧にやろうとしなくていい」という言葉だ。1on1、採用、評価、戦略策定と、マネジメントにはやるべきことが山のようにある。しかし最初からすべてを背負う必要はない。
自分が面白いと思える1点を見つけ、そこから射程を広げていけばいいのだ。マネージャーへの登用は単なる昇格ではなく、役割の転換である。その負荷を理解したうえで、それでも担いたい理由を持てるかどうかが問われる。
技術、キャリア、組織、そして生き方。本セッションでは、それぞれの問いを解像度高く捉え直すための視点が提示され、セッションは幕を閉じた。
