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C++は、C言語より派生した歴史のあるオブジェクト指向言語です。このC++は、システムプログラミングにも適した高速で緻密なコーディングのための言語ですが、絶え間なく進化を続けており、モダンな言語仕様やライブラリ機能も貪欲に取り込んでいます。本連載では、このC++の最新バージョンにフォーカスし、その新機能を紹介していきます。また、最新バージョン以前の機能にも関連の深いものについて言及することで、新機能をつながりとして理解できることも意識します。第3回では、C++ 20からサポートされ、C++ 23で強化された、イテレータ(反復子)に替わる機能と柔軟性を備えたrangesライブラリと、イテレータの実装をより簡便にするコルーチンベースのジェネレータstd::generatorを紹介します。
対象読者
- C++の最新バージョンの機能を把握したい方
- C++の経験者で、C++に改めて入門したい方
- プログラミング言語の最新パラダイムに関心のある方
必要な環境
本記事のサンプルコードは、以下の環境で動作を確認しています。なお、一部のサンプルは以下の環境では動作しないか、あるいは実験的実装(Experimental)なので動作が不安定になる可能性があります。
-
macOS Sequoia / Windows 11
- Xcode Command Line Tools 16.0(Clang 16.0.0)
- w64devkit 2.4.0(GCC 15.2.0)
主要コンパイラのC++対応状況およびC++プログラムのコンパイルについての説明は、第1回を参照してください。
rangesライブラリとは[C++ 20]
C++ 23では、std::rangesライブラリが強化され、より便利な関数が使えるようになりました。ここではC++ 20の時点で実装された機能を紹介し、rangesライブラリの基本的な使い方を紹介します。
C++ 20で導入されたrangesライブラリは、Range(範囲)に基づく新しいデータ処理の仕組みです。以下の特徴を持ちます。
- パイプライン記法:「|」演算子を用いることで、データ処理を流れ作業のように記述できます。例えば「v → filter → transform」と順序立てて処理を連結する表現が可能です。
- 遅延評価:結果が必要になったタイミングで初めて処理を実行します。これによって、無駄な計算を省き、複雑なアルゴリズムも簡潔に表現できます。
Rangeとビュー
rangesライブラリの利用においては、Rangeとビュー(view)が重要な役割を果たします。
- Range:反復可能なデータの集合。コンテナや配列などが該当します。
- ビュー(Rangeビュー):Rangeを基に、フィルタリングや変換といった操作を遅延実行する仕組み。ビューは元データを直接変更せず、効率的なデータ操作を可能にします。
具体的な例も見てみましょう。以下は、ベクターをRangeとして、rangesライブラリの関数でフィルタリング・加工し、新しいビューを作成する例です。
#include <ranges> // rangesライブラリの利用に必要
#include <vector>
#include <iostream>
vector<int> v = {1, 2, 3, 4, 5};
auto result = v | views::filter([](int x) { return x % 2 == 0; }) (1)
| views::transform([](int x) { return x * 2; }); (2)
for (const auto& value : result) { (3)
cout << value << " ";
}
cout << endl; // 4 8
結果は、「1, 2, 3, 4, 5」からなるベクターが偶数値にフィルタリングされて、さらに2倍の加工を施されて、結果として「4, 8」となります。(1)で使われているfilterはRangeアダプターの関数で、入力のビューをラムダ式でフィルタリングし、filter_view型のビューを生成します。(2)で使われているtransform関数は、入力のビューをラムダ式で加工し、transform_view型のビューを生成するRangeアダプターです。これらの操作は遅延実行され、for文で要素を取り出す際に初めて評価されます((3))。
[NOTE]Rangeアダプター
Rangeアダプターとは、既存のRangeからビューを生成する関数です。ここで紹介したfilter、transform以外にも、たくさんのRangeアダプターがあります。以下は一例です。
- views::all:Rangeへの参照として振る舞う(全要素)
- views::drop:先頭から指定した個数の要素を除外する
- views::join:入れ子のRangeをフラットにする
- views::take:先頭から指定した個数の要素を取り出す
パイプライン記法
上記のリストは「|」(パイプ演算子)を使わずに、直接関数で表すこともできます。
auto result2 = views::transform(
views::filter(v,
[](int x) { return x % 2 == 0; }
),
[](int x) { return x * 2; }
);
ここでは分かりやすくするために改行とインデントを入れましたが、どちらが分かりやすいかは一目瞭然です。特に理由のない限りは、書きやすさと可読性の両面からパイプライン演算子を使う方が良いでしょう。
C++ 20の時点で、rangesライブラリにはfilterやtransformをはじめとしてたくさんの関数が実装されていましたが、C++ 23ではrangesライブラリをさらに便利にする関数が拡張されました。以降は、これらについてピックアップして紹介します。
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- この記事の著者
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WINGSプロジェクト 山内 直(WINGSプロジェクト ヤマウチ ナオ)
<WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。 2026年時点での登録メンバは約50名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書、記事多数。 RSS X: @WingsPro_info(公式)、@WingsPro_info/wings(メンバーリスト) Facebook <個人紹介>WINGSプロジェクト所属のテクニカルライター。出版社を経てフリーランスとして独立。ライター、エディター、デベロッパー、講師業に従事。屋号は「たまデジ。」。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)
静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるLaravel実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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