10日に開催された「Google Developer Day 2008 Japan」では、「Google GearsからGearsへ」と題して、Googleのソフトウェアエンジニア河内隆仁氏と市川宙氏によるセッションが行われた。オフライン利用以外のポイントにも注目が要りそうだ。
10日に開催された「Google Developer Day 2008 Japan」。午後からは「Google GearsからGearsへ」と題して、Googleのソフトウェアエンジニア河内隆仁氏と市川宙氏によるセッションが行われた。
「Gears」の概要
Gearsはブラウザの機能拡張などクライアント強化を行う技術。「Webアプリケーションをデスクトップに近づけるためのインクリメンタルなアプローチ」と河内氏はそのポジションを位置づける。
Webアプリケーションは年々進化してきているとは言え、デスクトップと比較すると多くの課題を抱えている。例えば、ローカルデータへのアクセスができない点や、ネットワーク環境でなければサービス自体を利用できない点などはWebアプリケーションならではの問題。アクセス速度もデスクトップと比較すると見劣りしてしまう。
Gearsは、WebアプリケーションのHTMLやJavascriptなどをローカルに保存する「LocalServer」、構造化データをクエリ検索が可能な形でローカルに保存する「Database」、Javascriptの擬似スレッドを実現する「WorkerPool」の3つを構成要素として、クライアントリソースの有効活用による課題解決を試みる。
現時点ではブラウザのプラグインという形で提供。昨年のGoogle Developer Dayで公開されたWebアプリケーションのオフライン利用機能はご存知の方も多いのではないだろうか。
オフラインだけが「Gears」ではない
さて、今回のセッションで河内氏が強調したのが「オフライン利用はGearsの一部分に過ぎない」という点だ。「Gearsの目標はマシンの能力を最大限に引き出して、デスクトップアプリケーション並みのWebアプリケーションを実現すること。今後はオフライン利用以外の新技術も公開していきたい」と河内氏は展望を語った。
今回のセッションでは下記の5つの新APIと、GreaseMonkeyとのコラボレート技術「GearsMonkey」のデモが行われた。
API名 | 概要 |
Desktop API | デスクトップにショートカットを生成 |
Notification API | デスクトップにブラウザから独立したポップアップを表示 |
Filesystem API | ファイルアップロード時の一括選択機能を提供 |
Resumable Upload API | ファイルアップロード進捗状況の把握や、 作業の一時中断などの機能を提供 |
Geolocation | IPアドレスやGPSから位置情報を取得 |
GearsMonkey
GearsMonkeyは、FirefoxのGreaseMonkeyとのコラボレート技術。GreaseMonkeyを連携させることにより、Gears非対応のサイトにおいても、対応サイトであるかのようにその機能を利用できるようになる。
セッションでは、はてなブックマークの検索窓でインクリメンタル機能を行う場合を例にとってデモンストレーションを実施。「検索機能自体はGreaseMonkey単体で実現可能だが、Gearsを連携させるとローカルディスクへのデータキャッシュが行われる。結果として、処理速度の向上やサーバの負荷軽減などの効果を得られるようになる」と市川氏はその有効性について説明した。
「Google Gears」から「Gears」へ
ところで、今回のセッションタイトルからも分かるように、公開1周年を期に「Google Gears」は「Gear」へと改称。河内氏は、「ブラウザの拡張はGoogle1社のみに限定されるものではない。オープンなスタンダードを構築したいという考えからブランディングのやり直しを決意した」と当初からのオープンソース活動の姿勢をさらに鮮明にした。
【関連リンク】
・【Google Developer Day 2008】次世代Webのキーワードは「3つのC」
・【Google Developer Day 2008】 Google App Engineをおさらいしよう
・Gears API
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