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ライフスタイル/コーディングスタイル、四者四様の“流儀”からなにを学ぶか?
ITpro Challenge!レポート(前編)


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奥地秀則さん ―― 楽観的な現実主義者にして保守的な冒険者

仏ネクセディ社CTO 奥地秀則さん
仏ネクセディ社CTO 奥地秀則さん

 奥地秀則さんは、フランスでオープンソースERPアプリケーション「ERP5」を開発販売するネクセディ社(Nexedi SA)のCTOであり、今年2008年に設立された日本法人の代表取締役社長を務める。またGNUプロジェクトでも活躍し、オープンソースのブートローダー「GRUB」の開発を率いている。表もウラも共に国際派プログラマーと言えるだろう。

 ただの開発者ではなく、経営者でありプロジェクトリーダーとしての目を持っているからか、エンジニアがどうしたら周囲から「貴重な人材」として扱ってもらえるかという視点から話をした。そのためには、辞められると「代わりを見つけられない」と経営層に思われることが重要で、次の4つの路線があるという。

  1. 専門家路線
    ある1つの分野に深く深く精通した天才
  2. 複合路線
    数種類の分野で卓越し、その組み合わせによって他にはない見識を生み出す
  3. オールラウンダー路線
    いろいろなことに手を出し、視野を広く持ち、数多くの分野に精通している
  4. 汚れ仕事路線
    誰もやりたくないことをやる(自分がやりたいことはできない)

「できないから」という言い訳をしない

 奥地さん自身は、天才になるのは無理なので、オールラウンダー路線を目指すという。そうすると、新しい分野にもどんどん手を出していかなければならない。しかし、世の中には「できないから」と言って、新しいことにチャレンジしようとしない人がよくいる。奥地さんは、それを「都合のいい言い訳」だと断じる。

 例えば、あるオープンソースのプロジェクトに「こんな機能が欲しい」と希望は出すが、実装については「私はCが書けないからコントリビュートはできません」という人が、けっこうな割合でいる。しかし、本当は「できないから、やらない」のではなく「やらないから、できない」のだ。人間というのは、やってみるから、やれるようになって、それからもっとできるようになっていく。自分のなかで「これはできない」と決めてしまった時点で、本当はできたことでも無理になってしまうという。

 奥地さん自身の経験では、GRUBの開発をはじめたときも、本来はGNU HurdやGNU MachのようなOS開発に興味があったのだが、ブートローダーの開発者が誰もいなかったからという理由で手がけるようになった。だから最初はブートローダーのことをぜんぜん知らなかったのだ。でも、やってるうちになんとなく分かってくる。

 ネクセディ社に入社したのも、ERPアプリケーションを手がけている会社なので経営にかかわる知識が必要なのだが、もともと経営がわかっていたわけではなく、むしろ経営を勉強したいから入社したという。入ってしまえば、やらなければいけない。だから勉強せざるをえない。その結果として、分かってくる。

 これはなかなか厳しい言葉で、記者自身を振り返っても冷や汗が出てくる。しかし奥地さんの真意は、例えば欽ちゃん走りで100メートルを10秒以内で走れ、といった天才しかできないようなことに挑戦しろというのではない。「やってみればできるよ」くらいの気持ちで臨めば、新しいことに踏み出すことができる。新しいことを臆さず始めてみることが大切で、奥地さんはそれを、あまりロマンに走り過ぎない「楽観的な現実主義」という言葉で表現する。

 といっても知らない世界は不安だし、新しいことに挑戦するのはやはり怖い。そこで失敗したときのことも考えておく。背水の陣を敷いて臨むのではなく、うまくいかなくても死んだりはしないし、持ってる技術で別の就職口を見つけることができれば食いっぱぐれるわけでもない、というくらいの保険はかけておく。これを「保守的な冒険」だという。

 この「楽観的な現実主義」と「保守的な冒険」によって、奥地さんはGNU CRUPやNexedi ERP5といった世界的なオープンソースプロジェクトに参加している。そこではもっとすごいプログラマと一緒に仕事ができるし、オープンなソースコードを見ながら、面白いプログラムを具体的に語りあうことができる。大いに(保守的に)冒険してみる価値はありそうだ。

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