はじめに
本連載では、PHP上で動作するアプリケーションフレームワークであるZend Frameworkについて紹介していきます。今回はZend Applicationに焦点を当てて説明したいと思います。
前回も触れたように、Zend_Applicationは設定やリソースの管理を行うモジュールです。
対象読者
PHPの基本構文は一通り理解しているが、フレームワークを利用したことはないという方を対象としています。
必要な環境
Zend FrameworkはPHP 5.2.4以降とWebサーバがインストールされている環境で利用可能です。本稿ではWebサーバとしてApache 2.2を、OSにWindows XPを採用し、アプリケーションを作成していきます。
以下に、今回アプリケーション作成/動作確認に用いた環境を示します(インストールにあたっては最新安定版の使用を推奨します)。各項目の詳細なインストール手順は、「サーバサイド技術の学び舎 - WINGS」より「サーバサイド環境構築設定手順」を参照ください。
- Windows XP SP2
- PHP 5.2.11
- Apache 2.2.13
LinuxやFreeBSDなどUNIX系OSをお使いの方もコマンドはほぼ一緒ですので、パスなどは適宜読み替えてください。
Zend_Applicationの動作
前回も触れたとおり、Zend_Applicationクラスはアプリケーションの本体として、設定の読み込みやリソース(アプリケーションで使うオプジェクト)の生成を行います。また、このうちのリソースの生成のことをブートストラップと呼びます。この処理の流れを、単純なサンプルを通じて見ていきましょう。
Zend_Applicationの利用するファイル
Zend_Applicationを利用したアプリケーションを作成するには、通常はコマンドラインツールを使って環境を構築します。ファイル構成の確認をしましょう(リスト1)。特に重要なファイルについては*印をつけてあります。
C:. └codezine ├─public │ .htaccess* Apacheのための設定 │ index.php* フロントコントローラ │ ├─application │ │ Bootstrap.php* リソースを作成するスクリプト │ │ │ ├─configs │ │ application.ini* アプリケーションの設定 │ │ │ ├─controllers │ │ IndexController.php* indexのアクションコントローラ │ │ ErrorController.php エラー処理のアクションコントローラ │ │ │ ├─models │ └─views │ ├─helpers │ └─scripts │ ├─index │ │ index.phtml* indexアクションindexサービスのビュースクリプト │ └─error │ error.phtml エラー処理のためのビュースクリプト │ ├─library │ └─tests
最初はindex.phpとapplication.iniから見ていきます。index.phpにはZend_Application全体の処理の流れが、application.iniにはZend_Applicationの設定が記述されています。
リスト1にあるファイルは、Zend_Applicationに必要なものになっています。ただ、本当の意味で「とりあえず動作させる」ことを考えると、さらにいくつかのファイルを減らすことができます。
まず「ErrorController.php」と「error.phtml」は、エラー処理の際だけに必要なので、エラーさえなければ呼び出されることはありません。また「Bootstrap.php」もなくてもブートストラップクラスによるブートストラップが省略されるだけで、アプリケーションの実行自体はできます。
Zend_Applicationの処理の流れ
コマンドラインツールを利用して作成されたウェブアプリケーションで、最初に呼び出されるファイルは「index.php」です。このindex.phpの中で、アプリケーションの設定や実行に関する処理が行われています。この処理の流れをindex.phpから抜き出したものはリスト2のようになります。
<?php ... // Create application, bootstrap, and run $application = new Zend_Application( APPLICATION_ENV, APPLICATION_PATH . '/configs/application.ini' ); $application->bootstrap() ->run();
これを 4段階に分けたのがリスト3となります。
/* (1)Zend_Applicationのインスタンスを作成 */ //APPLICATION_ENV は環境の名前 $application = new Zend_Application(APPLICATION_ENV); /* (2)設定を与える */ //設定ファイルの名前 $options = array('config' => APPLICATION_PATH . '/configs/application.ini'); $application->setOptions($options); /* (3)ブートストラップ */ $application->bootstrap(); /* (4)実行 */ $application->run();
まず(1)でZend_Applicationのインスタンスを作成しています。その際にこのアプリケーションが実行されるべき「環境」を指定しています。この環境は、設定ファイルのどの部分を読み込むかを指定しています。
次に(2)でZend_Applicationの設定の読み込みを行っています。ここではconfig.xmlというファイルに書かれている設定を読み込むようにしています。
(3)ではブートストラップを実行しています。ここではBootstrap.phpに格納されているブートストラップファイルと設定ファイルに記述されてるリソースプラグインを呼び出しています。そして(4)ではアプリケーションを実行しています。具体的には(3)の段階で作成したフロントコントローラーへ、処理をディスパッチしています。
なお、(4)の段階では、必ずリソースプラグインを利用して作成されたフロントコントローラーにディスパッチされます。そのため、Zend_Applicationを利用する場合には、リソースプラグインを使ってフロントコントローラーを作成する必要があります。
次に、Zend_Applicationの設定から見ていきましょう。