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物理設計入門

電源の設計について考える

物理設計入門(1)


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 システムの導入・展開、移行、運用、監視に関する資料は、さまざまなものが存在しますが、それらを検討する前に重要な「物理設計」については触れられることが少なく、おろそかにされがちです。そこで本連載では、あらためて物理設計を見直してみたいと思います。今回は、物理設計の中で一番身近である「電源」についてまずは考えてみたいと思います。

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はじめに

 システムの導入・展開、移行、運用、監視に関する資料は、さまざまなものが存在しますが、それらを検討する前に重要な「物理設計」については触れられることが少なく、おろそかにされがちです。そこで本連載では、あらためて物理設計を見直してみたいと思います。

 今回は、物理設計の中で一番身近である「電源」についてまずは考えてみたいと思います。

システムの導入を行うにあたって

 物理構成について検討する前に、システム導入時にあらかじめ検討しておいた方がよい項目について考えてみましょう。

 今後のビジネス計画として、「どの程度認証する必要があるユーザー、クライアント、サーバなどのリソースがあるのか」「システムの停止に対して、どの程度復旧までの時間を容認(RTO;Recovery Time Objective)できるのか」といった拡張性、信頼性、可用性についての検討や、数年後に訪れるハードウェアのリプレイス時期の移行を含めた構成を検討する必要があります。

 ハードウェアのリプレイスを見据えるならば、最近主流にもなりつつある仮想化を検討対象となる場合もあります。

 また、併せてUPS(無停電電源装置)やネットワークスイッチなどの導入、ウイルス対策や更新プログラムの適用、ログの取り扱いなどのセキュリティ対策、バッチ処理やバックアップの検討も必要に応じて実施する必要があります。

物理設計にあたって

 物理設計というと、データベースのファイルの配置や、ネットワーク機器のポートの割り当てを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、電源や空調、床やラックの耐荷重といった設備に関する考慮も重要になってきます。

 例えば、サーバ機器などのハードウェアは、電源の投入時や電源の停止時は通常運用時よりも多くの負荷が電源に対してかかります。そのため、電源の設計を行うにあたっては可能な限りは各機器の電源容量の最大値を基本として、さらに拡張性や安全率を見込んだ方が良いと考えられます。

電源

 UPSは瞬断時や突入電流等でハードウェアが壊れないように保護したり、停電時に安全にOSをシャットダウンしたりするために存在します。

 UPSを導入する場合は、UPS自身も電源を必要とすることは比較的忘れがちなので注意が必要です。例えば、主要なUPSベンダーであるAPC社のUPSであれば、「機種ごとにどの程度の電源を必要としているか」といった点についてWebサイトに記述があります。

 また、通常時のUPSに対する負荷は比較的低めにしておくことをお勧めします。通常時に利用される電力容量が多い場合、起動した後に何かしらの原因で瞬断や停電などが起こり、バッテリーに切り替わった際に蓄電されていた電力に余裕がなく、OSをシャットダウンしている間に電源が落ちてしまうといった状況になる可能性もあるからです。

 次にサーバルームまで電源を引きこむ場合についてですが、電源にはさまざまな規格がありラックに引く電源の形状もさまざまなものがあります。どのような電源や規格を用意する必要があるかは、設置する機器や機器のオプションによって変わってくる場合がありますので、事前に確認しておく必要があります。

 一般の電源コンセントに近い形状のNEMA 5-15(図1 NEMA 5-15)や、 差し込み式のプラグのNEMA L5-30(図2 NEMA L5-30)といったものもあります。

 UPSを利用するために、30Aの電源が必要でありNEMA L5-30(図2 NEMA L5-30)という形にして分電盤より電源を引きました。この電源の形状は、通常の家庭用コンセントとは異なるため、接続できる機器なのかを確認するようにしてください。

図1 NEMA 5-15(左)/図2 NEMA L5-30(右)
図1 NEMA 5-15(左)/図2 NEMA L5-30(右)

 その他にサーバやネットワーク機器によっては、100Vではなく200V(注1)を採用している機器もあります。その際にも対応した形での引き入れが必要になりますので、工事会社やデータセンターの管理者とも相談が必要になります。それと同時に電源盤での電源増設については、電源端子を1つ増やす際に場合によっては全機器を停止する必要も出てきますので、必要な配線の数にさらに余裕をみて電源を引きこんでおくと良いでしょう。

注1

 サーバやUPSなどの電源でよく使われる200Vタイプの電源コンセントとしては、MEMA L6-20やNEMA L6-30(図3 NEMA L6-20、図4 NEMA L6-30)などがあります。

図3 NEMA L6-20(左)/図4 NEMA L6-30(右)
図3 NEMA L6-20(左)/図4 NEMA L6-30(右)

 なお、サーバやストレージの電源は冗長化された機器が多いですが、この場合どちらかの電源が故障した場合は、残った電源だけで機器を動作させるための容量が必要となることに注意が必要です。つまり電源を冗長化する場合、供給可能な電源容量としては必要な電源容量の2倍必要となります。この場合、供給可能な電源容量が2倍となりますが、消費電力が2倍となるわけでありません。また、電源を冗長化する場合、それぞれの電源は別々の分電盤から引き込むなどし、分電盤が故障したような場合にも動作できるように配慮して設計しておく必要があります。

まとめ

 電源を設計する上で検討しておくことは、基本的な内容だけでもたくさんあります。電源設計がきちんとなされていないと、意図しないタイミングでシステムがダウンしてしまうこともありえるため、きちんとした設計を行う必要があります。

 次回の連載では、空調や耐加重をはじめとする物理設計における重要な項目について見て行きたいと思います。

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この記事の著者

櫻井 敬子(たーきょん)(サクライ タカコ)

コンピュータ関係の総合商社、アミューズメント系企業の情報システムを経て、NTTデータ先端技術(株)へ入社。2008年9月より(株)NTTデータ 基盤システム事業本部へ出向し、Microsoft製品、VMwareなどを中心とする部門にて勤務。2011年4月よりシステム基盤全般にかかわる部署へ異動し、各種トラブル対応や標準化にかかわる業務を担当。2011年6月中旬よりNTTデータ先端技術(株)へ出向復帰。Windowsを含...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

黒田 剛(クロダ ゴウ)

(株)NTTデータ 基盤システム事業本部にて、システム基盤全体の技術支援を行う。 

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https://codezine.jp/article/detail/4681 2011/06/13 13:21

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